4話
4話です。
読んでくださりありがとうございます!!!
次話から主人公視点に戻ります。
(とんだ失態だったわ)
レヴィは冷静さを装い、ウィグを見つめながら全て計画通りという顔をつくる。
「突然攻撃?少しは躊躇ってほしいものなのよ」
表面上では怒っているが、頬を膨らませている様子からは、まだまだ余裕であることが見て取れる。
ウィグはそう言うと、レヴィが頭につけている彼岸花の髪飾りを見て、
――爆弾発言を落とす。
「そう、レリルの新しい熾天使なのね。確かに戦闘能力は高そうやけど、ちょっとまだ若すぎるんやない?」
「――は?」
(偉大なるレリル様を呼び捨てにして―――‼言うに事足らず、わたくしが若すぎる、ですって?)
2秒でプッツン。
即キレた。
天使に寿命は無い。
天使の年齢は見た目で判断出来ないので、重ねた年齢=戦いなれているか のこの世界では、「若すぎる」という言葉は煽りにしかならない。
ウィグの言葉が挑発であるのは勿論気が付いており、わざわざその言葉に乗る必要はない。
しかし、レヴィは千年以上生きた熾天使であり、格下相手に罵られるなど、そのプライドが許さなかった。
(運よくわたくしの攻撃を防御できたみたいだけれど、たったそれだけで勝った気になっているあなたの方が、若すぎるというものよね)
「舐めた口を‼その言葉、後悔させてあげましょう」
そう言うと、レヴィは惜しげもなく自身の権能の一つを発動させた。
””断罪のアリア””――――‼
その瞬間、レヴィから半径50kmほどの範囲一帯が切り取られる。
””ダンザイノアリア””の効果は、指定する範囲内から、
指定した相手と自分以外の生物すべてを、その場でつくりあげた並列世界に閉じ込めるというもの。
戦闘において、他者の介入を許さないようにするほか、今回の場合は一般市民が巻き込まれないようにするという効果もある。
そして、一番大きな効果は、「ダンザイノアリアに指定した相手(今回でいうウィグのこと)の位置情報を、今後一生把握することができる」というものだ。
相手を確実に逃さないようにしながら、並列世界に閉じ込めた一般市民を、人質にとることができるというのが、権能の全貌である。
そして、レヴィは何もミスをしていない。
だから、絶対にありえないのだ。この場に―――レヴィとウィグ以外の人物がいる、なんていうことは。
「へぇ、それが貴女の権能?本当に綺麗な術式ね!」
「おだてたら見逃してくれるとでも勘違いしたのかしら?この状況で、貴方には逃げることしかできないでしょうに」
「ウチかて、そないなことくらいわかっとるんよ?レヴィが解除しない限り、どれだけ格上の相手だろうと逃げ出すことは不可能、なんでしょ?」
(わたくしの事を当たり前の様に呼び捨てして…人を苛つかせる天才なのかしら?それにしても、こうも簡単に権能の効果を理解するだなんて、馬鹿にできないわね。覚えておく価値はある)
「えぇ、そうよ。驚いたわ。貴方なんかでも理解できたのね、褒めてあげる。貴方、名前は?」
ウィグは、顔をパッと明るくして、
「話を聞いてくれる気になったのね!ウチの名前はウィグ。ウィグ・セヴロー二モよ。宜しくね、レヴィ!」
(ウィグ・セヴローニモ、ですって?まるで聞いたことが無いわね。偽名?それか、ずっと引きこもっていたのかしら?)
「ふうん。まぁ、貴女が死ぬまでくらいなら覚えておいてあげましょう」
そして、その言葉が開戦の合図となる。
レヴィはサイズを、ウィグはナイフを取り出し、両者が動いた。
常人には、とても目で追うことのかなわない速さ。
二人の動きから遅れるように、風が勢いよく吹き付け、キィィィン―――と金属音が鳴り響く。
二人ともまるで隙が無く、戦いは拮抗しているようにも見えるが、一応レヴィがおしていた。
しかし、まだウィグに傷をつけられずにいるのは、上手くナイフをさばいてサイズの刃先をウィグにあてても、まるで効果がないからだ。
(さっきと同じ。発動条件の一つでもあればいいのだけれど、熾天使なら無くても不思議ではないわね。)
(攻撃の仕方を変えてみましょうか。)
先程まではサイズの刃を相手の後に潜り込ませるといった、相手の急所を狙う攻撃だけだったのを、
押し潰す、つまりはノックバックを狙った攻撃や、フェイントを主とした攻撃に変えてみる。
すると。
(防御の形が変わった)
先程まではナイフでサイズを抑え込んでいたのを、わざと自分の体に攻撃を当てさせる様な、無茶な防御の取り方に変わったのだ。
(なぜこんな動きを―――? いや、そもそもわたくしの攻撃が当たっても無傷ならば、防御する必要はない。まるで、勝負が拮抗しているようにみせかけているような――)
「……貴方、何か隠しているの?」
ウィグが顔をしかめる。
そして、攻撃の速度が上がった。
(どうやら当たりみたいね。問題は何を隠しているのか、だけれど――――)
その瞬間。
「あの、誰かいませんか―――?」
(――――!?!?!?!?)
突然聞こえる、部外者の声。
今この範囲は、”ダンザイノアリア”の効果がある。レヴィとウィグ以外に人が存在するなど、絶対にありえないのだ。
(標的!!!!!!一体なぜ⁉どうやって⁉)
レヴィは混乱し、そしてすぐ、身体の奥から、歓喜する。
(わたくしの権能の影響を受けないようにするだなんて芸当が、ただの天使に出来るわけがない。そんなことが許されるのは、レイル様か―■■■■■■■だけ――――!!!!!!)
レヴィは標的に向かって全速力で走る。
レイル様から与えられた、『標的の姿を確認してくること』という仕事を果たすため。
彼女の姿を、一刻でも早くその目に焼き付けるため。
「あぁ、ウィグ!!!!教えてくれてありがとう。貴方のおかげよ」
再戦と行きましょう?――――
そして二人は、”彼女”の真ん前で。第二ラウンドの戦いを、開始する。
読んでくださり!!!!ありがとうございます!!!!
ブクマ‼感想!!お待ちしております!!




