3話
ちょっと遡ってレヴィちゃん視点です。
*ちょっと遡ります。後一話もすれば本編合流です。
(ちっ…厄介ね。こんな化け物がいるだなんて、聞かされていた情報にはなかった。情報局は何をしていたのかしら?職務怠慢も甚だしい)
レヴィは苛立っていた。
思わぬ邪魔が入ったからだ。
思わぬ邪魔、というのは勿論ウィグのことである。
レヴィは、中位三隊までの天使ならば、簡単に殺せてしまうような偉大なる熾天使、セラフィムであり、絶対神・レイルに仕える忠実なシモベだった。
熾天使は、九つある天使階級の中で最上位に位置する。
ちなみに、天使階級―――天使を九つの位に分けたヒエラルキーのこと――は、上から
熾天使 セラフィム
智天使 ケルビム
座天使 ソロネ
主天使 ドミニオン
力天使 ヴァーチャー
能天使 パワー
権天使 プリンシパリティ
大天使 アークエンジェル
天使 エンジェル
となっていて、階級が高いほど強く、権力も、相応の権限もある。基本的に人間界に顕現するとされるのは、天使階級でいえば下から一つ目の天使と、二つ目の大天使の二つだけなので、レヴィのような熾天使がここにいるのは大大大大大問題だったりするのだが、本人からすればどこ吹く風だった。
話は戻って。
レヴィはウィグに話しかける。
「ごきげんよう、わたくしはレヴィ。ねぇ、貴方?わたくしはこの先に用があるの。そこをどいてくださらない?」
口角は上がり、ニコッと笑っているように見えなくはないが、その目は笑っていない。
断ったら殺す。だからさっさとどけ―――というメッセージを込めた目だ。
(この娘からは嫌な気配がする。だからといってわたくしと張り合えるとは思えないけれど、権天使―?いや、もっと。下手をすれば力天使にも届きそうね。)
(もし逆らうようなら、殺してしまいましょうか)
勿論レヴィの手にかかれば、力天使など敵では無い。しかし、戦った際の周囲への影響は不明であり、単純に面倒なので、交渉にでたのだった。
対してウィグはというと。
「あら、親切にありがとう。でもね、そのお願いは聞けそうにないの、ごめんなさい」
声色は高く明るく、レヴィを見ても物怖じしてはいなかった。
(わたくしの強さに気づけていないようね。力天使ならわたくしの気配に気づけたでしょうし、とんだ勘違いだったみたい。警戒して損した気分だわ)
自分の強さに気づけないような小物なら、警戒するまでもない――そう考え、レヴィは動いた。
即座に自分の手に愛用の鎌を創造し、相手がまばたきする合間も与えずウィグの背後に回る。
レヴィが創造する大鎌――サイズは、人知を超えた芸術品。
レヴィの意のままに美しく弧を描き、相手を一瞬で死に至らせる。
熾天使の称号に相応しい、美しくも恐ろしい武器だ。
(あなたに罪はないけれど、今はレイル様よりいただいた仕事がある。ごめんなさいね)
ウィグの首に、サイズの刃先がかけられる。レヴィが動いたことも分からず、その意識が刈り取られるはずだった。
(なっ――――⁉)
レヴィ自慢のサイズが、その細い首に止められる。
恐ろしい切れ味をもつはずのサイズは、ウィグに傷一つ付けることが叶わなかった。
そして、約一秒遅れて「きゃあぁぁっ⁉」とウィグが悲鳴を上げる。
レヴィは仕留め損ねた事実に憤慨しつつ、その場からとびのいた。
(冗談じゃない!冗談じゃないわ!このわたくしの攻撃が、こんなのに止められた、ですって?)
ウィグの悲鳴からも分かる通り、0.1秒もかからないような恐ろしい速さの攻撃を、
ウィグはちっとも反応出来ていなかった。
それでもウィグが今生きているということは、防御系の権能を常時展開していた、と考えるのが普通だが、熾天使たる自分の攻撃から身を守れるほどの権能を所持していただなんていうのは、簡単には認められないことなのである。
(いったい何をした?こんな権能は、力天使ごときに使える権能ではない。まさか熾天使?熾天使特有の強大な気配から、わたくしの目を欺いた、というの?)
もしも相手が熾天使ならば、苦戦は免れない。
一旦撤退するかとも考えたが、まだ目的を達成できていない。
一度でいいから、”あの娘”をみておかなければと、レヴィは必死に考える。
読んでくださりありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです。




