閑話 人形遊び
「今度こそ終わった……」
エターナル・ヴェインの方針を決める会議を無事に終えることができ安心するハル。
円卓に体を預け深呼吸する。
会議中には気付くことができなかった心地の良い木特有の自然の香りやシャンデリアから照らされる暖かな光の玉が疲れた体を癒す。
徐々にリラックスしてきたハルであったが、ドア付近に待機していたメイドが近づいてくることに気が付く。
重くなった体を上げメイドに目をやるとその両手には、暖かそうな無地の毛布があった。
メイドがハルを労わるように静かに呟く。
「お疲れ様でございますマスター。こちらでおやすみになられますか?」
「うん、そうするよ。毛布ありがとう」
「ふふっ。いつものことですのでお気になさらずに」
ハルがそう呟くと部屋中に充満するリラックス効果があるものを包み込むように、メイドは優しく毛布をかける。
(いつものことってどういう……あぁ、放置プレイしてたことかな?)
ゆっくりと意識が遠のいていく中、メイドの言葉にEoC時代に新たな施設や資源発掘の待機時間の間、放置していたことを思い出す。
「外にメイドが待機しておりますのでいつでもお申し付けください。おやすみなさいませ、マスター」
メイドの言葉と共に照明が消え部屋が暗くなった。
★★★
「マグナスの部屋まで案内してくれる?」
「かしこまりました」
目が覚めたハルは、部屋を出て廊下で待機していたメイドにマグナスの部屋へ案内するように伝えた。
廊下で待機していたメイドは、ハルに毛布を渡した者とは打って変わって童話の世界から飛び出してきたような容姿をしている。
「マッチ売ってそうだなぁ……」
「いかがなさいましたか?」
「いや、何でもないよ!」
メイドの容姿を見て思わず呟いたことを拾われアタフタしたハルは、適当にはぐらかし別のこと厳密には今向かっている場所について考えていく。
これから向かうのはマグナスの部屋だ。ハルが知ったのは会議終了後、アルファが説明した時だった。
勿論、この世界に渡る直前に配合したマグナスの専用部屋は存在しない。そのことに疑問を感じたハルがアルファに尋ねた所、魔石収集をしている際にマグナスが頼んで用意させたとのことだ。
ハルにしてみれば何故大人しくアルファが従ったのか不思議に思ったが、創造神としてのマグナスを感じ取ったのだろうと無理やり納得した。初対面の時に誰も遜った様子を見せていなかったことには疑問を感じているが。
そうこうしている内にマグナスの部屋へと辿り着く。
ハルはノックすることなくそのまま扉を開けた。
「やぁ、マグナス!何してる―――」
「『かしこまりました!必ずやマグナス様を解放してみせます!』おぉ、ありがとうなのじゃ。ハルよ。気を付けるのじゃぞ?」
(え?ナニコレ?)
扉を開けるとそこには、絨毯が敷かれた床に座り自分で創造したのか、数体の縫いぐるみがあった。どの縫いぐるみもデフォルメされており、幼子が気に入りそうな見た目をしている。
その中でハルを模しているのか、マグナスは唯一の人型の縫いぐるみを匠に扱い一人で人形劇をしていた。
「『追い詰めたぞ、エルミス!』『人だった者よ。其方は何故、邪神を解放したいのですか?邪神は―――』『うるさい!マグナス様は、俺を救ってくれた御方だ!貴様に指図されない!』」
マグナスは扉を開けたハルに気付くことなく、そのまま人形劇を続ける。誰にでも見られたくないプライベートは有るものだ。それはハル然りアルファ然り。
(うん、楽しんでね)
ハルはそう心の中で呟くとそっと扉を閉めた。




