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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魂を纏うは暗黒の聖騎士〜仲間の犠牲により、不浄の地の災厄を倒したが、王女から穢れていると一蹴され国から追放された結果。国は脆弱になりヤバいが、俺はギルドを作って人助けする日々を満喫している〜

作者: サイトウ


「…ッたく……こんな大地に災厄なんているのか…?」

「……生物すら見えねぇってのに…」


臓物のようなヘドロのある黒い沼地を、神々しい鎧に身を包んだ騎士達と、聖職者は進んでいく。


「この先から…穢れが強くなっています…」

「……本当ですか?…聖職者様?」

「はい……魔法の天秤が反応を……うっ…!?」


その時、天秤が腐り地面にボトッと落ちた。それを見て、騎士と聖職者は立ち止まる。


「…近いですね」

「……良い兆候じゃあないな…聖騎士長」


聖騎士の1人が、一際神々しい鎧を見にまとう騎士の方へ、振り返りながら言った。


「ああ、気を引き締めていくぞ」

「…了解……」


剣を抜いて、聖騎士達は聖職者を守るように、先へと進んでいく。


「うッ……」

「これは……」


聖騎士達の目の前には、巨大なヘドロのような物体があった。それを見て、聖職者が叫ぶ。


「それが災厄です!」

「…よし……封印の作業に取り掛かるぞ…」


聖職者がヘドロを囲み、聖騎士はその聖職者を守るように前に出る。それを確認し、聖職者達は呪文を唱え始めた。


「……」


唱え始めてから、数分経った時。突如、ヘドロが動き始めた。


「なんだ!?」

「聖職者達を非難させろ!」

「聖騎士長!」

「ランスロット様!」


聖騎士長ランスロットは単身、ヘドロの前に立った。


「俺が時間を稼ぐ!」

「……ランスロット様」


聖騎士達は、ランスロットの周りに立った。


「…聖職者様!……私達が戦ってる間……封印を!」

「……分かりました…!」

「お前ら……よし…生きて帰るぞ!!」

「「おお!!」」


一同は団結し、ヘドロに向かっていった。その刹那、ヘドロから触手のようなものが飛び出し、ランスロット達を薙ぎ払った。


「ぐはッ…!?」

「ランスロット様!!」

「…ぐ…ぅ…」


ランスロットは近くの瓦礫に激突し、意識を失った。そこから少しして、目を覚ますと目の前にはヘドロが広がっていた。


「……ッ…皆は…」


フラフラと立ち上がり、ランスロットは辺りを探索した。すると、目の前で倒れている聖騎士を発見する。


「おい!」


ランスロットが身体を揺らすと、鎧の隙間からヘドロがドロリと流れ出した。ヘルムを外すと、中はヘドロだけだった。


「……クソ…ッ!」

「…ラ…ランスロット様…」

「!!」


声のする方を見ると、聖職者が倒れていた。ランスロットは、急いで駆け寄る。


「大丈夫か!?」

「みんな……飲まれてしまった……災厄に…ッ…」

「なに…?」


目の前の光景に、ランスロットは絶句した。目の前には、聖騎士や聖職者の亡骸が広がっていた。


「……ランスロット様…あなただけでも……生きて…」

「…クソ……クソ!!」


聖職者はそのまま、息絶えた。ランスロットは、怒りと絶望に飲まれながら、亡骸の上を歩いていく。


「…ヤツはこっちか……」


ヘドロの通った跡を追い、ランスロットは歩き続けた。すると、途中でヘドロの山があった。


「この山を超えなければ……」


ヘドロまみれの山を、ランスロットはよじ登る。神々しい純白の鎧が、ヘドロの汚れで汚れていく。


「……ッく…」


登っていくと、洞窟があった。中へ入ると、そこには呻き声を上げる、聖職者と聖騎士達の姿があった。


「お前ら…!」

「ランスロット様……ッ…」

「おい!…しっかりしろ!」


壁や地面のヘドロに、身体の半分が埋まっているみんなへランスロットは言った。


「ランスロット様…早く逃げてください……ヤツは…人間の手に負えない…ッ…」

「ランスロット様!」


そこら中のヘドロに飲まれている聖騎士達が、ランスロットへ掴みかかる。


「助けて…何も見えない…」

「家に帰りだい…ッ」

「誰かここから出してくれ!!」

「頼む…もう殺して……」

「あぁああああ!!」


聖騎士や聖職者達を振り解き、ランスロットは先へ進む。


「お前達の仇は取るぞ……ッ」


そして洞窟を抜けると、目の前にはヘドロの沼が広がっていた。沼の近くにあるヘドロの滝から、飛沫が飛んでいる。


「……毒や病原性を含んだ汚れの滝…あまり触れない方がいいな…」


ランスロットは、飛沫が当たらないよう、近くにある汚れ、ボロボロになった聖職者のローブを被り、沼に足を入れる。


「あれが地面の汚れと融合し…このヘドロになるというわけか……」


ヘドロの沼を、ランスロットはゆっくりと進んでいく。ローブには、黒いシミができていた。


「…ヘドロに毒性が無くて助かった……だが…急がないとな」


ランスロットはぬかるみにハマりながらも、沼を超えていった。


「……災厄め…この先か…?」


沼を超えた先の開けた場所で、ランスロットは災厄を発見した。


「いやがった……よし」


音を立てず、ランスロットは瓦礫に隠れ、様子を伺う。


「…向こうを向け……ッ」


ランスロットの祈りが通じたのか、災厄は背を向けた。ランスロットは、走り出して剣を突き刺す。


「ピギャアァァァァア!!」

「貴様は封印すら生ぬるい…ッ!」


災厄は、ランスロットを弾き飛ばす。ランスロットは負けじとすぐさま体勢を戻した。


「……今ここでブッ殺してやる…害獣が…ッ!!」


そして災厄の触手を、近くの瓦礫でガードした。


「これはいい…」


瓦礫を捨て、棒を見つけるとランスロットは災厄の触手を避けて、思い切り投擲した。棒が、災厄の目玉に突き刺さる。


「ギャアアアア!!」


怯んだスキに、ランスロットは災厄の目の前まで走ると、顔面を力一杯、何度もブン殴った。災厄の顔は、崩れていく。


「死ね!死ね!!」


仮面のような災厄の顔は、もはや原型を留めていなかった。


「……フゥ…ッ…フッ…」


ピクピクと動く災厄から離れ、ランスロットは近くの木の棒に、黒い液体をかけて魔法で火をつけた。


「燃えろ、獣が」


火のついた木の棒を、災厄に投げる。災厄の身体に火が燃え移り、災厄は炎に包まれた。それを見て、ランスロットは跪いた。


「ァァァァァァァァァァ!!」

「……………やったぞ…みんな…」


“騎士様ァ!…災厄を封印してきてくれよ!”

“ランスロット様!生きて帰ってきてくださいね!”

“安心しろ、悪い奴は俺達が倒してやる”


“ランスロット様……”

“王女様…”

“……もし…災厄を封印した暁には…私と…”


“ランスロット様、災厄を封印したら一杯飲みましょう”

“ああ、お前の奢りでな”

“フッ、分かりましたよ”


「……ッ!!」


その時、最期の力を振り絞り、災厄がランスロットに絡み付いた。


「…俺を道連れにするつもりか…!」


そして、災厄の中に引きずり込まれる。その中で、ランスロットは目撃した。


“なんだよアレ!?”

“警察は!?自衛隊は!?”

“おい!爺ちゃんはどうなってんだよ!?”

“お母さん……たすけて…”

“スカイツリーが…黒いのに飲まれてる…”

“東京閉鎖だと!?おい!開けてくれ!!”


『これは………ッ…!?』


“ランスロット様!助けてください!”

“お…おぉ…神よ…”

“クソ…民の希望のランスロット様だけでも…”

“…最期に一杯…飲みたかったな……”


『みんな…ッ!』


災厄に飲まれた人々の記憶が、ランスロットの脳内に流れる。そして、ランスロットの視界は、真っ黒になった。


「……ここにいたのか…」





「…ハァ!!…ハァ…ハァ……ッ」


目を覚ますと、ランスロットはヘドロの上に立っていた。


「う…ッ…く……」


頭痛に襲われたランスロットは、思わず膝をつく。その時、自身の腕を、黒い物質が侵食している事に気付いた。


「……これは…ッ」


身体中の痛みに耐え、ランスロットは走った。そして、沼に自身の姿を写すと、神々しいヘルムは、黒いヘドロや触手などで汚染されていた。


「…剥がれろ……ッ」


ヘルムに付いた黒いヘドロのようなものを、必死に剥がそうとするが、剥がれない。ヘルムを取ろうとするが、ヘルムもランスロットの顔にくっつき取れない。


「……ヘルムも取れない…ッ…クソ…!」


しばらく鎧を脱ごうとしたり、黒い肉片のような物質を取ろうとするが、ランスロットは諦めた。


「俺は……あの災厄と…融合したのか…?」


身体に付いている汚染物質を見て、ランスロットは呟く。


「この触手や…肉片……ヤツと酷似している………」


そしてその時、ランスロットはついさっき見たものを、鮮明に思い出した。


「……いや…コレは災厄に飲まれた…みんな…なのか?」


汚染物質を見ながら、ランスロットは囁いた。


「……………そうか…そうだよな……お前らも…故郷に帰りたいもんな……」


フラフラと、ランスロットは立ち上がる。その時、一部のヘドロがボトッと落ちる。


「………」


そのヘドロは、ランスロットへ触手で攻撃しようとするが、ランスロットに踏みつけられ、ヘドロに戻った。


「…災厄……今度こそ終わりだな………」


そして、ランスロットは身体のヘドロを落とした。ランスロットの鎧には、固まった黒い物質や触手だけが残った。


「……お前らの分も…俺は生きるぞ……!」





帰りの道は、来た時よりも短く感じた。ランスロットが門の前に立つと、門番は槍を構える。


「…モ…モンスター!」

「俺だ……」

「そ…その声は……ランスロット様…!?」

「……開けてくれ…」


それを聞いて、兵士は門の中へ叫んだ。


「ラ…ランスロット様が戻ってきたぞォォ!!」


すると門が開き、兵士や国民達が歓迎する。


「ランスロット様!!」

「待ってたぜーッ!!」


だが、ランスロットの姿を見た途端、歓声は静まり返った。


「……………」

「お…おい……」

「なにあれ……」


国民の冷たい目線の中、ランスロットは中へ入る。その瞬間、ランスロットに小石が飛んできた。


「なんだよそのバケモノは!?」

「ランスロット様は何処だ!?」

「消えろ!!…バケモノ!」


罵詈雑言を浴びせ、国民はゴミや瓶、石を投げつけた。


「な…何をしている!?…このお方は……」

「いい…何も言うな…」

「…は……はい…」


ランスロットは、罵詈雑言と石をぶつけられながら、兵士と共に城へ向かった。


「……ラ…ランスロットか…?」

「…国王陛下……ただいま戻りました…」


国王の前で、ランスロットは跪き、そして、災厄の事について報告した。


「う…うむ……それはご苦労だったな…」


すると王女が、嬉しそうに走ってきた。


「ランスロット様!…戻って……」

「王女様……」

「……え…っ?」


ランスロットの姿を見て、王女は立ち止まった。


「…き……気持ち悪い…」

「王女様…私は…」

「近寄らないで……汚い…」


その言葉を聞いて、ランスロットは立ち上がり、王女の元へ早足で向かった。


「俺と融合してるコレは…俺の仲間みたいなものだ……それのどこが汚いんだ?…言ってみろ」


静かに、だが怒りのこもった声で、ランスロットは尋ねる。


「お前!…王女様に何をする気だ!」


するとその時、汚れた鎧のランスロットとは対称に、純白の鎧を着た2人の青年の1人が、ランスロットを突き飛ばした。


「パーシヴァル…シルバ…」

「……王女様が怖がっているだろう…離れろ!」

「そうだぜ、さっさと戻れ」


ランスロットは、周りを見た。周囲の人々は、ランスロットをモンスターでも見るかのような目線で、ジッと見ていた。


「…ランスロットよ……お前が災厄を倒してくれたのは感謝している……とりあえず…今夜はゆっくり休め…」

「……………」


国王、王女、パーシヴァル、シルバ、近衛兵が、自身を歓迎していないのを、ランスロットは分かっていた。


「……分かりました」


近衛兵に案内され、ランスロットは客室に入った。


「…命を賭けて災厄を倒した結果が……このザマか…」


ランスロットは、拳を握った。


「……これじゃあ…死んでいった仲間が報われない…」


すると、廊下から話し声が聞こえた。


「王の間と…この部屋の家具は…あとで捨てろと…兵士に伝えとけ」

「ああ、分かった」

「おい」


ランスロットは、部屋の外に出る。そこには、パーシヴァルとシルバが立っていた。


「俺の身体は、魔法で殺菌済みだ。毒や病原菌などは無い」

「……フン…どうだかな」


そう吐き捨て、パーシヴァルとシルバは去っていった。


「…………」





「ランスロットよ……お前は追放する事となった…」

「そうですか」

「ワシは反対したんだがなぁ〜…」


その言葉が嘘である事を、ランスロットは分かっていた。


「……まぁ…国の守護者が……そんな禍々しい姿をしていれば……なぁ…?……お前の身体…死者の魂がまとわりついているようだ……」

「分かりました、では、私は国から去ります」

「うむ…すまないな……これを受け取れ…何か使える時が来るだろう」


近衛兵が、1000Gを手渡した。宿に泊まるには、2000Gは必要だ。


「……ありがとうございます」


ランスロットは、王達に背を向けて、城から出て行った。外に出ると、国民達がヒソヒソと話している。


「……ランスロット様…」


門の前で、兵士がランスロットに声をかけた。


「これ……」

「…7000G?……いいのか?」

「はい…僕はあなたのファンですから……姿が変わっても…」


そして、兵士は定位置に戻った。


「……憧れの人が…追放されて残念です……」

「……………すまない」

「謝らないでください…あなたは悪くない……それでは…お元気で…」


するとランスロットは、兵士に尋ねた。


「…名は?」

「……コリンです」

「コリン……この借りは必ず返す」


そして、ランスロットは平原に消えていった。


『…とりあえず……隣国のエレノアに行くか』





隣国エレノアに到着したランスロットは、門の前で一度立ち止まると、エレノアはゆっくりと中へ入った。


「…………」


中へ入ると、人間に近いが別の種族である亜人と、人間の姿があった。


「……亜人と共存か…俺の国とは大違いだな……」


そして、ランスロットは歩いていく。ランスロットの事を、人々は気にも留めない。


『ふむ…この風貌でも…亜人と暮らす人々は…俺を怪しまんか…』


ランスロットは、酒場に向かって歩いていった。そして酒場に着くと、ランスロットは入っていった。


「おい…」

「なんだよあの騎士…」

「…なんつー姿だよ……」


酒場に入り、ランスロットは客達を見る。そして、店主の前に座ると酒を頼んだ。


「ギルロードを頼む、ロックだ」

「…あいよ」


店主は手慣れたように酒を注いで、ランスロットの前に置く。ランスロットは、鎧の顔の部分を可能な限り開けて、酒を飲んだ。


『……ふむ…飲み食いはできる…』

「おいそこのアンタ」


ランスロットに、使い古された鎧を着た男が話しかける。


「なんだ…?」

「見た事のない格好だな……名前は?」

「……ランスロットだ」

「ランスロット?…確か……隣国ナルガーンの聖騎士長…だったか?」

「ああ」


すると男は、興味津々でランスロットを見ながら、隣に座る。


「聖騎士っていやぁ……穢れなき純白の騎士だろ?…そんな騎士の長である…アンタがそんな姿とはな……何があったんだ?」

「…………面白い話ではない」


ランスロットは、自身に巻き起こった出来事を、簡潔に話した。男は、それを静かに聞いていた。


「そうか……」


そして手のひらを差し出して、ランスロットに言った。


「ライトバーンだ…よろしく」

「ライトバーン……アレクサトラ大陸の剣聖か…」


アレクサトラ大陸。ランスロットのいる巨大な大陸であるソクロノス大陸に、囲まれるようにしてある大陸。


二つの大陸は、大きな海に挟まれ、船でもかなりの時間がかかり、モンスターという危険な存在もいる為、渡航する船は年に6回程度しか来ない。


「よろしく」


ランスロットは、ライトバーンと握手を交わした。


「所で、何故お前のような男がこの地に?」

「……遠征だ…このエレノアの騎士達と…練習試合をしてくれと頼まれた……だがまぁ…ついやりすぎてしまって……」


恥ずかしそうに、ライトバーンは言った。


「……1週間で500人と試合する筈が…1日で500人を倒してしまってな……」

「フン……実力差がありすぎたということか」

「…手を抜いては失礼だから…全力で相手したのだが……こうなるのなら…少し手心を加えた方が良かったか…」


それを聞いていたランスロットに、今度はライトバーンが尋ねた。


「俺は残りの6日間…自由に旅行するが……お前さんはどうするんだ?…追放された身だと……騎士には戻れないだろう…?」

「ああ…だから……傭兵団を作ろうと思ってな」

「傭兵団?」


ランスロットは、ライトバーンに説明し始める。


「傭兵は群れずに個人で依頼を引き受ける……それ故に名前が有名なだけの奴が…依頼を独占してしまう……それに一度依頼されると…自分には不得意な依頼でも傭兵は断りづらい……断れば評判が悪くなるからだ」


「…ふむ」


「だから……傭兵達を集めて…一つの組織を作る……そして各地から依頼を募集し…集まった依頼を…組織の運営が傭兵達に伝える…傭兵達は…自分達の得意分野の依頼を引き受ける……」


「なるほど…」


「そうすれば…無名の傭兵でも依頼を引き受ける事ができ…不得意な依頼をする必要はなくなる……俺はそんな組織を作ろうと思っているんだ」


それを聞いて、ライトバーンは目を輝かせて言った。


「良いな…それ!」

「……だが…組織を作れば…依頼料の一部は組織の運営が貰う事になる……それを今まで全て貰っていた傭兵が…納得するかどうか…」

「納得すると思うぞ」


ライトバーンは、ランスロットに即答した。


「多少…依頼料が減るだけで……引き受けたく無い依頼を引き受けずに済み…名前を売る必要も…自分達で依頼を募集する必要も無くなるのだからな」

「……ふむ」

「俺も少しの間だが…面白そうだし…協力するからやってみようぜ!」


ランスロットの肩を叩きながら、ライトバーンは言った。


「…そうか…助かる……では…まずは組織の名前からだな」

「名前かぁ……うーん…」


ライトバーンは、ランスロットの飲んでいる酒を見て言った。


「そのギルロードって酒から取って…ギルドってのはどうだ!?」

「ギルド……ふむ…良い名だ」

「だろ!?…そんじゃあ次は仲間集めだな!」


するとライトバーンは(おもむろ)に立ち上がり、酒場の騎士達に言った。


「おーい!今の話聞いてただろーッ!?」

「おい……」

「お前らギルドに入らねぇかぁ!?」


ライトバーンがそう叫ぶと、騎士達は少しの沈黙の後に立ち上がった。


「……俺は入るぜ」

「俺も」

「面白そうですね、私も」

「見た目にそぐわず、スゲー事考えるじゃねぇか!俺も!」

「僕も!」


酒場の騎士達は、次々にそう言った。


「おい…!」

「……もう仲間は集まったな!…次は拠点をどこに作るかだ!」

「………お前まさか…本当に作る気か…?」

「え?…どういう事だ?」

「……作ってみようかと思っただけで…まだ作ろうとは……」

「…………まぁ…良いじゃねぇか!…作ろうぜ!」


そしてそんな騎士達に、酒場の主人が言った。


「拠点なら…ここを使うか?」

「え!?…マジか親父さん!!」

「おう!…お前ら見てると応援したくなったわ!」

「うぉぉ!!…サンキューな親父さん!!」


それを聞いて、ランスロットは思わず立ちくらみを起こす。


「馬鹿な…ッ……そんな上手く…事が…」

「お…おい?…ランスロット…!?」


そして、ランスロットはその場に倒れた。





「………おーーーーーい」

「……ッ…」


倒れていたランスロットが目覚めると、そこはベッドの上だった。


「悪いな、鎧を着させたまま寝かせて」

「…ああ……脱げないからそれは構わない…」

「……ちょっと外来いよ」


ライトバーンに促され、ランスロットは外へと出た。すると酒場の看板の隣に、ギルドと書かれた看板があった。


「酒場の隣の空き家を、所有者の親父さんが無償でくれたんだよ!……出世払いしてくれだとよ!」

「……夢ではなかったのか…」


ランスロットは、その看板を見て呟いた。


「まぁ、始めちまったもんは仕方ねぇ!…やったろうぜ!」

「……お前が始めたのだろう…」


そこから、ランスロットとライトバーン、加入した騎士達はギルドの宣伝を行った。


「ソクロノス大陸の、全国にポスターを貼り終えたって!」

「…それじゃあ……あとは加入者と依頼を待つのみか…」

「お?…乗り気になってるじゃねぇか!」

「……始まってしまった事は仕方ないからな」


そして2人は、ギルドのベッドに横たわった。ポスター貼りで疲れが溜まっていたからか、すぐに眠りについた。


「なんじゃこりゃあああッ!?」

「なんだ…ッ!?」


ライトバーンの叫び声でランスロットは目覚め、声のする方へ走った。


「……見ろよこれ…」

「これは……」


ポストは、依頼書で溢れ返っていた、依頼書の山が出来上がっている。


「ランスロット!ライトバーン!」

「今度はなんだ!?」


声のする方を向くと、騎士達が大勢の傭兵を引き連れて歩いてきた。


「……みんな…ギルドに入るってさ!」

「…嘘だろ……」

「なんでも…あの災厄を殺したのが…アンタだって噂が流れててな……そんなアンタと一緒に戦いたいって奴が集まったんだ」


それを聞いて、ランスロットはハッとして、騎士に尋ねた。


「誰がそんな噂を!?」

「…確か……ナルガーンの門番のガキだったような……」


それを聞いて、ランスロットは思わず呟いた。


「……また…借りを作ってしまったな……」

「まぁ…とりあえず……ギルド誕生だな!」


ライトバーンは、ランスロットに言った。


「…………ああ」





5年後。


「この依頼受けるよ」

「スライム系モンスター六匹の討伐ですね!」


ギルドは、活気に溢れていた。そこそこの大きさだった空き家は、辺り一体の土地を買って巨大な施設となった。酒場は、ギルドの施設内で新たに開業した。


「……たったの5年で…ここまでになるとはな」

「5年もかかった…だぜ?」


ギルド内を見ていたランスロットに、ライトバーンが言った。


「…2年でここまでに成長してもおかしくなかった」

「それは言い過ぎだ……というか…また来たのか?」

「ああ!……俺も創設者の1人だろ?」

「………まぁな」


その時、部屋の中に受付嬢が入ってきた。


「ランスロット様!」

「様を付けるなと言ってるだろ……」

「あっ…すみません……」

「で…なんだ?」


受付嬢は、息切れしながら話し始めた。


「……ランスロットさんに…依頼をしたいのですが…」

「なんだと?」

「受付嬢の君が?…一体なんだよ」


ライトバーンとランスロットは、思わず前のめりになった、受付嬢は続ける。


「……レントを…再起不能にしてほしいのです…」

「レント…だと?」

「レントっていえば……ギルド冒険者の中でも…優秀な成績を持つ期待の新人じゃねぇか…」


冒険者。ギルドに所属している傭兵や騎士、戦士や魔法使いはそう呼ばれる。


「…実は……レントさんはナローンだったのです…」

「なんと……」

「レントが……まぁ…ナローンだとしても頷けるが…」


ナローン。この世界とは違う、異世界から来た者の事。ナローン達は基本、人智を超えた力を持ち、その多くが人間や生態に危害を及ぼす為、問題視されている。


「だが…ナローンだということは罪ではない…」

「ナローンでも、人の為にその力を使ってる奴も、いるからな」

「……再起不能にしろと言うからには…何か理由があるのだろう?」

「……………レーナちゃん…おいで…」


受付嬢が、同じ受付嬢の名を呼んだ。すると、暗い顔をしたレーナという受付嬢が歩いてきた。


「…………」

「……何があった」


ランスロットが尋ねると、レーナは震える声で話し始めた。


「……………お食事に誘われて……ギルドとは別の酒場に行ったのですが……そこでお酒を飲んで…少し酔った私を…レントさんは送っていくって言ったんです…」

「…………………」 

「ですが…彼は私を路地に連れて……突然…殴ってきました…」

「…なに?」


レーナは、服を(めく)り上げた。身体には、アザが沢山あった。


「そして彼は…私を散々殴ったあと……お金を奪って…」


“これだけかよ、受付嬢ならもっと貰ってる筈だろ”


「…マジかよ……アイツが…」

「…………あの野郎…」

「友達を傷つけられて…許せないのです……ですが…私ではどうする事もできない……」


ランスロットは立ち上がると、ライトバーンに言った。


「いいだろう…俺が何とかしてやる……」

「俺も行くぜ!」

「…… レーナ…金は俺達が取り戻してやる」

「……う…ッ…うぅ…」


そして、ランスロットとライトバーンは部屋から、足早に出て行った。





「……ギルドマスター…!」

「よぉ…レント…」


酒場で飲んでいたレントの前に、ランスロットとライトバーンが座った。


「ライトさんまで……一体どうしたんですか…?」

「分かってんだろ」


ランスロットがそう言うと、レントは何かを察して逃げ出した。


「チッ…!……アイツ!」

「追うぞ…!」


逃げ出したレントを、ランスロットとライトバーンは追いかける。


「鎧装備してんのに…何でそんな早いんだよ!」

「元聖騎士長と剣聖を舐めんなよ!」


そして街にある廃屋の中に、2人はレントを追い込んだ。


「……逃げられねぇぜ」

「…逃げたということは……分かってるよな…?」

「………ッ…!」


その時、ランスロットは何かに気が付き、レントの首を掴んで、持ち上げた。


「お前……パーシヴァルの仲間の…シルバか」

「…く…ッ」

「姿が変わっていて…気が付かなかったぞ……勇者の証のそのピアスを見るまではな……何故お前がギルドにいる…?」


するとシルバは、呻き声を上げて話し始めた。


「…お前が消えてから……国の戦力は激減したのさ…だから……毎日のように国を、乗っ取ろうとする魔物が押し寄せてくる…」

「ほう?」

「それだけならまだ良かった…ナローンのパーシヴァルと俺がいるからな……だが…アレが現れて状況が変わった…」

「パーシヴァル……アイツ…ナローンだったんだな」

「……アレってなんだ?」


シルバは、ゆっくりと話し始める。


“…ッたく……毎日毎日めんどくせぇな……まぁ…雑魚ばかりだからいいけどよ…”

“……パーシヴァル!”

“何だ!”


「俺は、アレの事をパーシヴァルへ伝えに言った」


“…………少し離れた場所から…モンスターが向かってきてる……ゆっくりだが…近いうちに国へ来るぞ”

“俺達ナローンなら、モンスターなんて余裕だろ”

“…『亡霊騎士団』なんだよ!!”

“なんだって…?”


「亡霊騎士団……モンスターと化した騎士団か…」

「……確か…かなり危険なモンスターだよな……一体一体が強い上に…常に100体以上で行動するから…」

「俺とパーシヴァルは慌てたよ……ナローンの俺達でも…さすがに手が余る」


ランスロットは、シルバを地面に落として見下ろす。


「…それで?」

「……俺は逃げたが…パーシヴァルは国の顔だ……逃げ出せねぇ……」


シルバは、全てを諦めている目をしながら、ランスロットに言った。


「昔はこのナローンの力で無双して……金は腐る程あって…女も自分から来てたってのに……どこで間違っちまったんだ…」

「……フン…これがあの……勇者の1人であるシルバの末路か……」





「戻ったぜ!」

「ランスロットさん!…ライトさん!」

「……奪われた金は取り戻したぞ」

「う…うぅ…ありがとうございます…ッ…」


レーナに金を手渡し、ランスロットは受付嬢に言った。受付嬢が、報酬を渡そうとするが、ランスロットは拒んだ。


「いらん」

「ですが…」

「…大事な用事が出来たんだ……少しの間…留守にする……」

「え…?」


ランスロットは、受付嬢に言った。


「留守の間…お前がギルドマスターとして……依頼の管理をしてほしい……それを報酬の代わりにな…」

「え!?…私がですか?」

「……ああ…どうだ?」


そう言うと、受付嬢は少しの沈黙の後に頷いた。


「………分かりました!……報酬の分…しっかりやらせてもらいます!」

「よし……では今日から…大体1週間くらいで戻る」

「き…今日からですか…!…分かりました!」


そう言い残して、ランスロットはギルドを後にした。ライトバーンが、ついてくる。


「……ナルガーンに行くのか?」

「…ああ」


“亡霊騎士団は、どのくらいで来るんだ”

“俺が逃げたのが…3ヶ月前……距離的に…今月には来るぜ…”


「亡霊騎士団……倒しに行くんだろ?」

「………見に行くだけだ」


そして、ランスロットはナルガーンへ向けて、馬を走らせた。





「……おい!…早く運べ!」

「はい!」


ナルガーンへ到着すると、兵士達が慌ただしく準備している。


「お…おい!……あれって…」

「……ランスロット…!?」


馬に乗ったまま、門の前に立つ。兵士達は、ランスロットに槍を向ける。


「な…何をしに来た!?…この国を滅ぼしに来たのか!?」

「…ンなわけねぇだろ……さっさと道開けろ」

「……剣聖…ライトバーン…殿ッ!?」


ライトバーンの姿を見た兵士達は、門を開けた。2人は城の前まで向かい、馬を降りる。民衆は、2人をただジッと見ていた。


「……お…王様!」

「どうした!?」

「よぉ…」


王の前に、ランスロットとライトバーンが現れる。


「………ランスロット…ッ!」

「もう戻るつもりは無かったんだがな……」

「……何の用だ…」

「亡霊騎士団の件だ……ヤバいんだって?」


そう言うと、王は悔しそうに王座から立ち上がり、ランスロットの前で膝をついた。


「……ランスロット…力を貸してくれ!」

「…いや……無理だろ…あんな追放とかしといて」

「では…ライトバーン殿!」

「俺もヤだな、ランスロットがいいって言うなら考えるけど」


ランスロットは、王を見下ろしながら言った。


「俺達はこの国の末路を見に来ただけだ……」

「そんな……」

「ランスロット様!」


すると、王女が奥から現れる。その後ろを、パーシヴァルが追ってきた。


「おい!」

「ランスロット様…どうかこの国を救ってください……」

「……ラ…ランスロット!」


ランスロットは、懇願(こんがん)する王女に尋ねた。


「…あの時は動揺して…あんな事を言ってしまいましたが……あなたを愛しているのです!」

「おい!…あんな穢れた奴よりも…俺の方が好きだって言ってただろ!」

「あなたなんか知りません!」


するとランスロットが、王女に手を差し伸べる。


「よし…チャンスを与えてやろう」

「…え…?」

「俺の手を握れ……そうすれば手を貸してやる」


ランスロットのガントレットは、酷く汚染されている。それを見て、王女は眉をひそめる


「……ッ…」

「どうした?…愛しているのならば……握れる筈だぞ?」

「…まぁ……無理だよな…散々甘やかされて育てられたお嬢様にはな…」


そして、ランスロットは背を向けた。


「じゃあな……遠くから…この国が滅びる所を見てるぜ」

「…ラ…ランスロット!」

「あと…他の国も手を貸してくれねぇよ?…俺がこの国の本性を…他の国々へリークしたからな!」


ライトバーンが、煽るように言った。


「……クッ…クソォォォォ!!」

「おい…ランスロット!待てよ!おい!!」

「ランスロット様!」


そして城から出ようとしたその時、ランスロットは走ってきた兵士を見て立ち止まった。


「…王様!…準備が」

「コリンか…?」

「……ランスロット様…?」


兵士の元へ、ランスロットは歩いていく。


「戦うつもりか?……死ぬぞ」

「早く逃げた方がいいぜ小僧」

「……こんな国でも…ここは…僕の故郷なので…」


それを聞いてランスロットは、王へと言った。


「俺達はギルドだ、依頼なら受けてやるぞ」

「……依頼?…わ…分かった!依頼!依頼する!…助けてくれ!」

「よし……少し待ってろ」


ランスロットとライトバーンは、城の外に出た。コリンも、追いかけてくる。


「あ…あの!……僕も戦います!」

「コリン…外にいる奴等をこの城壁の中へ避難させろ」

「えっ…しかし…」

「俺とライトで十分だ」

「…………分かりました」


避難は凄まじいスピードで終わった、外にはランスロットとライトバーンしか立っていなかった。


「避難が早いところを見ると……兵士達の士気が低い事が丸わかりだな」

「……フン」


すると、奥から骸骨の騎士達が歩いてきた。


「おっ!…(やっこ)さんが来たぜ」

「……やるぞ」


ランスロットとライトバーンは、骸骨の騎士の軍団へ、走っていった。





城壁の中にて、外では激しい戦いの音が聞こえていた。民衆や兵士は、怯えた様子でその音を聞く。そして、しばらくして音が聞こえなくなった。


「……終わった…のか…?」


すると門が、ゆっくりと開いた。そこには、ランスロットとライトバーンの姿があった。


「終わったぞ」

「う…うぉぉぉぉ!!」


民衆と兵士達は、歓喜した。ランスロットとライトバーンは、民衆と兵士を無視して、城へ行く。


「…ランスロット……」

「騎士は全て片付けた」


それを聞いて、王は胸を撫で下ろす。そして、ランスロット達に尋ねた。


「……報酬は何を望む…金か?」

「…報酬は……すでにコリンが支払っている」

「え…?」


ランスロットは、困惑するコリンに言った。


「7000G…既に支払い済みだ」

「あっ…!」

「……あの時の借りは…忘れていない」


そして、ランスロットの元へ王女と、パーシヴァルが歩いてくる。


「ランスロット様!…流石です!」

「ああ」

「……再び…この国の為に剣を振るっては…」

「無理だ、俺はギルドマスターだからな」


そう言って、ランスロットは背を向けた。


「今度こそ、本当にサヨナラだ」

「……運が良かったな…お前ら…!」


するとランスロットは、立ち止まってコリンに言った。


「…お前が王ならば……俺がこうなる事もなかったのだろうな」

「え…?」

「……じゃあな、コリン…」

「待ってください!ランスロット様!」

「ランスロット!」


そして、ランスロットとライトバーンは、ナルガーンを後にした。





「……よぉ!」

「…ライト……」


ギルドマスターの仕事をしているランスロットの元へ、ライトバーンがやってきた。


「おいランスロット…スゲェ知らせがあんぜ!」

「……わざわざその知らせを伝えに来たのか?」

「ああ!…わざわざ伝えに来る価値がある程の知らせをな!」


そう言って、ライトバーンはランスロットの前に座った。


「この国に、騎士養成学園を建設するって話あったろ?」

「ああ……小耳には挟んでいる」

「…その学園の……理事長を担当する事になった…!」

「お前が?…3日で廃校になるぞ」

「失礼な奴だな〜」


ライトバーンはコーヒーを飲みながら、ランスロットに言った。


「……ワシももう歳だからな…引退してこっちに引っ越してきちゃったよ〜!」

「…『ワシ』…か……70でもう老人気分か?」

「十分老人じゃろうがい!」


ツッコミながら、ライトバーンはランスロットに言う。


「……孫はどうしたんだ?」

「…吸血鬼の傭兵姉弟の姉を雇ってな……そいつに育ててもらってる」

「聞いた事がある……サリーとグリムだっけか?」

「そう!そいつら!」


そして続けて、ライトバーンは言った。


「あと…ナルガーンの王は……他の国々が話し合って…遠方に旅をしていた王子にしたそうだ……王子なら立て直してくれる程の力を持つらしいからな」

「ふむ…」

「パーシヴァルは、悪行がバレて投獄された……ナローンの力は封じられてるから…もう暴れる事もできないだろ……牢屋で他の囚人と、よろしくやってんじゃねぇかな」

「……そうか…」


しばらく近況などの話をしていると、ライトバーンが時計を見て、ハッとして言った。


「あっ!…もうこんな時間か!」

「どうした?」

「用事があったんだ!…良かった!思い出して!…じゃあな!」


そして慌ただしく、部屋から出ていく。


「……相変わらずめちゃくちゃな奴だな…ライト……」

「まぁ、それが彼の良い所でもありますけどね」


ランスロットの部屋で、書類を整理している冒険者が言った。


「……まぁな…………そういえば…お前が冒険者になって丁度…40年か……コリン」

「たしかにそうですね」


コリンは、書類を片付けると、ランスロットの方を見て言った。


「…最近どうだ?」

「いきなりですね……まぁ…いつもと変わらず…いい感じです……あっ!そういえば!」


何かを思い出したコリンが、ランスロットに言った。


「レインとブラッドの2人が、いたじゃないですか」

「ああ……あの優秀な2人か」

「はい…あの2人が冒険者辞めるみたいです」

「ほう?」

「……何でも…アレクサトラ大陸の故郷レッドインで…公認騎士団を作って国で働くって…」

「そうか…寂しくなるな」


公認騎士団、国に所属している騎士達が集まった組織で、国王の出した任務を引き受け、遂行する。民間の依頼を受け、それを遂行する通常の騎士団とは違い、民間からの依頼は引き受けられないが、十分な衣食住が補償される。


「……ライトは確かアレクサトラから…こっちに来たんだよな?」

「そうですね」

「…じゃあ入れ違いになるのか……よし…レインとブラッドの空きは…ライトに補ってもらおう」

「はは……ライトさんか…大丈夫ですかね…」

「…ライトは普段はふざけてるが……仕事は真面目にこなすからな……問題無いだろう」


ランスロットは、コリンの方を向いた。


「それか、お前だな」

「勘弁してくださいよ……あの2人の穴埋めるのは…そう簡単じゃないですよ…」

「…冗談だ……あの2人の穴はグリムという少年に埋めてもらう」

「グリム……確かライトさんの言ってた…吸血鬼の傭兵姉弟の弟ですよね?」

「ああ…最近……破竹の勢いで結果を残してる……アイツなら大丈夫だろう」


そして、仕事を終えると、ランスロットはコリンに言った。


「…終わりだ……飲みに行くか?」

「そうですね!」


2人はギルドの酒場に向かって歩いていく。冒険者達が、ランスロットを見て、挨拶する。


「お疲れ様です!」


そして、2人はギルドの酒場に歩いていった。


「……相変わらず人気者だな…ランスロット」

「フン……」

「いつものだろ?」

「ああ」


テーブルの上に、ギルロードが置かれる。


「やはり美味いな」

「プハァ〜!…ですね!……少し度数高いけど…」


そんな2人を見て、マスターが言った。


「……今から45年前か……その一杯の酒から…このギルドの歴史は始まったんだな…」

「マスターも…今年で90か……そろそろ引退じゃないか?」

「馬鹿言え!…まだまだ現役よ!」

「フッ…元気なことで…」


マスターは、奥でグラスを片付ける青年を見ながら言った。


「……けどまぁ…いつかは世代交代が来るんだろうな…俺も……お前も…」

「…かもな……」

「さっきは、ああ言ったが……最近衰えを感じてるんだ…」

「……マスター…」


その時、冒険者がランスロットへ叫んだ。


「ランスロットさん!!」

「…どうした?」

「ドラゴンの群れが出ました!…国がランスロットさんに撃退してほしいと…!」

「休む暇ねぇな……分かった…すぐ行くと伝えろ!」

「はい!」


冒険者は走りながら、ギルドを出て行った。


「……お前の場合は当分…世代交代の必要はなさそうだな…ランスロット!…行ってこい!」

「…だな……ついてこい…コリン!」

「はい!」


ランスロットは、黒く汚染された剣を持ち、コリンと現場へ向かって行った。冒険者達は、どよめいている。


「ドラゴンの群れだって…」

「さすがにそれは……」


そのどよめく冒険者達を見て、マスターが呟いた。


「………ドラゴンの群れなんかに負けるかよ………アイツは仲間とギルドの魂を…あの身体に(まと)ってんだからな…」

















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[気になる点] 読者ざまぁしてるところ [一言] ざまぁ詐欺だよね、、、読んで損した、、、って思われるのが嬉しいんだろうなぁ、、、
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