美麗四方位
誤字報告、評価、ブックマーク、そして感想ありがとうございます。今日もまた失踪せずに済みました。
なんだかんだ騒がしい一日が終わり放課後になった。
流石に放課後になると俺の珍しさも薄れたのか朝のように取り囲まれるようなことはなかったのだが…
「東君この後暇なら私たちとお茶しにいかない」
そんな風に女子三人組が話しかけてきた。俺の容姿が少し変わってすぐであるこのお誘いだ。嫌悪感を抱かないはずがない。
しかし基本的に俺は女性不信であるため、この場をうまく切り抜ける言葉をもっていなかった。西大路のように最初から誠意を感じられれば、こちらもそれ相応に返答できるのだがどうもこの手の女性は苦手だ。というか多分心底話もしたくないのだと思う。
「ざんねーん今日の放課後は俺とのデートが既に予約されてまーす」
そんな風に対応に困っていると前の席から春川が俺と女子生徒の会話に割り込んできた。
春川のことだからこれは助け舟なんだろうな。まぁどんな船でも今は渡りに船であることは間違いない。後でコーヒーでも奢ってやろう。
「えー春川君となんかよりも私たちとお茶した方が楽しいよ」
「ねー」などと女生徒たちは馬鹿にしたようにそう言った。
俺はその女生徒達の態度にさすがにカチンときた。俺のことはいいが俺の数少ない友人をバカにされたと感じたからだ。
そして俺が女子生徒に抗議するために口を開こうとした瞬間、春川に突然手をつかまれて教室の外に連れ出された。
「なにするんだ春川。俺はまだあの女子生徒達に話がある」
「どうせ俺があのガールズ達にバカにされたとか思って、抗議するつもりだろ?」
「それが分かっているならなんで教室の外に連れ出した」
「あんなの真剣に相手にすんなって、偏差値違い過ぎてまともな会話にならないから、昼ドラ並の泥沼にハメられるぞ」
言い方はアレだが春川の言い分もわからないこともないので、とりあえず今日はこのまま春川と帰ることにした。
そして帰り道、春川にコーヒーを奢るためにいつもの喫茶店に行くこととなった。
「やぁいらっしゃい。あれ今日はべっぴんさん連れじゃないんだな」
「べっぴんさん?ヒガシーのその髪の整え様はそういうことだったの?」
春川はやれやれっと言った感じの目をして俺を見た。マスターめ余計な事を…
「違う。お前が考えているような理由じゃない」
「だとしたらべっぴんさんってのは誰なんだよ」
「それはあれだ。ただの友達だ」
「ほーうヒガシーに女子の友達がいるなんてねぇヒガシーの親友として是非とも紹介してもらいたいもんだ」
こいつ完全に信じてないな。こうなると春川に西大路の事は隠し通すことは難しいだろうな。西大路には悪いが俺の信用する人間にだけは俺たちの関係をばらすしかない。
ずるいことを言うが俺達の間で取り交わされた条件もこの仮の恋人関係はなるべく秘密にしておくことだったからな。
「わかったもう観念する。その辺の話もちゃんとするからとりあえず座ろうぜ」
俺と春川はいつもの席に着いた。
店内もいつも通りゆったりとしたクラッシックが流れ、マスターがコーヒーを入れてくれているからか、より深みのあるコーヒーの良い香りが店内に充満している。しかしこの間来た時より自分達以外の客がおり、そのぶん先日よりは静けさがなくなっていた。
しかしそれでも雰囲気が良い店であることは変わりなく、なんなら実家より安心するまであった。
「じゃあお前が手篭めにした謎のべっぴんさんの話を聞こうじゃないの」
春川はニヤニヤしながらそう言った。
「手篭めにしたなんて人聞きの悪い事をいうな」
俺は現在、西大路の仮の恋人であることや西大路のおかげで再度兄貴に挑戦する事になった事などを話した。
西大路の事はともかく、兄への挑戦の件は俺の数少ない理解者の一人である春川には知っていて欲しかった。
春川圭とは高校で知り合った仲である。
見た目や言動はちゃらんぽらんではあるが本質を見る目を持っており、俺の事も割と正しく評価してくれているので、学校の中ではかなり信用を置いている。あとなぜかこの学校のことに色々と詳しいのでその面でも助けて貰っている。
ほんと普段あれだけ寝ているというのにどうして普通に過ごしている俺より詳しいんだよ、謎だ。
ちなみに春川の他にもう一人学内で俺の理解者である秋葉優志もいるが、こちらは進級と同時にクラスが離れてしまったので、なかなか話す機会はないし、理由はどうあれあいつは放課後忙しいからな。
この二人以外学内で友人はいない。
「べっぴんさんて言うのは西大路彩乃の事だったのか、それにあの諦めきっていたヒガシーをまたやる気にさせたのも西大路だったなんてこれは驚きだなぁ」
春川は感心しながらそう言った。まぁ去年一年間の俺を知っていればそういう反応にもなるわな。
「しかしまさかあの西大路が仮とはいえ恋人を作るとはそっちも驚きだな」
「どういう意味だ?」
「どういう意味も何も西大路は誰に対しても敬語でとりあえず一定の距離感を置いてる感じがするじゃん」
「それはただ西大路が礼儀正しいだけだろ」
「まぁそれもそうだね。そもそも俺みたいな一般人が名家のご息女に話しかけるなんてすっごいハードル高いしね」
春川は冗談めかしてそう言った。
「お前の目の前に日本屈指の家柄の男がいるんだが」
「ははは、アッキーはまだしもヒガシーはなんかぬぼっとしてるから威厳もへったくれもないから関係ないない~」
こいつ言わせておけば好き勝手いいやがって、こいつにコーヒーを奢ったことを軽く後悔した。
まぁ確かに俺もあんなことが無ければ気安く西大路には話しかけられないだろうな。お世辞にも初対面から取っ付きやすい性格とは言えないしな。
「後はあれ、美麗四方位の一角で男どもは牽制し合っているみたいだからまさか恋人ができるとはってのもあるね」
「なんだ美麗四方位って」
「俺達の学校で飛び抜けて容姿が整っている4人の頭文字がたまたま東西南北と揃ってたから誰かがそうつけて、それがうちの学校で浸透してった感じだね。去年卒業した先輩に北の人がいてそれも崩れるかってなったけど、なんでも今年入学した一年の中で一番人気の女子が苗字に北が入っていたから存続したらしいよ」
まぁその美麗四方位ていうのは要するに四天王みたいな感じか、可愛いというか名前だけ聞くとなんかかっこいいな。
それにしても女子の情報伝達速度も恐れ入るが、男子も大概だな。この新学期始まって間もないのに既に一年の女子の情報まで出回っているとは
西が西大路てことは残りの東南北であと3人も西大路クラスの美少女がうちの学校にいるのか、まぁじゃない方系男子の俺が西大路とお近づきになれただけでも奇跡みたいなもんだし、俺には関係ないな。
その後、春川とテキトーに喋ってその日は解散した。
別れる前に春川は「お兄さんの件は頑張れよ。もう無気力でぬぼっとしたヒガシーが見れなくなるのはちょっと残念だけどねっ」とあいつなりのエール?を送ってくれた。
なんにせよ応援はしてくれていると思うので感謝はしておこう。
なんだか憎めない友人キャラが好きな方は下の☆ボタンをポチってください。ヒロイン出せやと思ったかたはブックマークをお願いします。もちろん感想もお待ちしております。
活動報告方で【お礼とご報告】の方を書かせていただきました。設定の変更の件なども書いてありますのでよろしければお読みください。