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見蕩れてしまった

ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。あなたたちのおかげで失踪せずに済みます。

 仮の恋人関係になったその日俺は西大路と連絡先だけ交換して、家路についた。


 家に着きドアを開けるが家には誰もいない。なぜなら俺は一人暮らししているからだ。


 高校入学と同時に多少自立するためという尤もらしい理由を引っさげて、親に一人暮らしをしたいという旨を伝えにいったら思ったよりもあっさりと承諾された。


 まぁ後々考えてみると俺は東家の跡取りでもないし、跡取りにはあの優秀な兄がいるのだから俺がなにをしようがそれほど興味も縛る理由もない。


しかも一人暮らしといっても東家の管理する物件の一室に住むだけだからだろうと気がついた。


 そういうわけで俺は現在学校から徒歩15分程の場所にある東家の所有するマンションの一室に住んでいる。


 まぁいくら勝手にしろという感じでもなんの負担もなく一人暮らしをするというのは自分の精神衛生上あまりよろしくなかった。

最低限、食費と自分の趣味に費やす金だけは自分でアルバイトをして稼ぐことにしている。


 帰宅後、夕飯を食べ、入浴を終えた後スマホを確認すると西大路からメッセージアプリに連絡が来ていた。


『西大路です。今日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。改めてこれからお願いします』


『こちらこそ、よろしく頼む』


 簡単にだが返信を済ませたので、今日はもう寝ることにしよう。なんだかんだ疲れたしな。主に精神的に


 眠りにつく直前にメッセージアプリの着信音がした。差出人は西大路だろうと思い眠い目を擦りながら文面を確認した。


『仮の恋人関係になったということで、急ではあるのですが今週末家に来て父に東君を紹介させてもらってもよろしいでしょうか』


 まぁこういうこともこれからあるだろうと思ったが今週末とは中々急だな。それほど次の見合いまで日数がないのかもしれない。


 そう思い俺はメッセージアプリで了解したとだけ返信し、三秒もしないうちに眠りについた。


 それから数日が経ち、西大路家に行く日となった。


 西大路に教えてもらった住所まで行くとそこには、日本史の教科書で見るようなまさに武家屋敷といった大きく、威圧感のある日本家屋があった。


 広さは庭まで含めるとかなりのもので、その辺の学校の校庭よりは広いといった感じだ。


入口と思われる場所には、これまたドデカく、立派な装飾が施されている門が構えていた。


 門に近づくと橋の方にインターホンがあった。


ここは現代技術なんかいっ


と心の中でツッコミを入れつつインターホンを押し、少し待つと門は開き、門の先には西大路が立っていた。


 出迎えてくれた西大路を見て俺は物凄く驚いた。なぜなら西大路の装いが着物だったからだ。


  着物は赤い布に春を強く連想させる桜柄が縫われており、着物だけでもとても綺麗であった。

しかもそれを黒髪美人の西大路が纏っていて、更にロケーションが本格的な武家屋敷ということで雰囲気もばっちりと合っている。

まさに大和撫子ここにありというような感じで、俺は息を吞むほど見とれてしまった。


「東君、今時着物を着ているのが珍しいのは分かりますが、そんなに見つめられると少し恥ずかしいです」


「すまない珍しいのもあるが、西大路の着物姿が余りに美しくて、見とれてしまっていた」


 俺がそう言うと西大路は顔を真っ赤にしてプイっと踵を返して父のところに行きますよとだけ口にして屋敷の方に歩いていってしまった。


 いかんいかん俺としたことが着物のインパクトのせいでとんでもないことを口にしてしまった。

こういうセリフを言うのは「じゃない方系男子」の役目じゃないのにな。


 屋敷は外から見る大きさにも驚いたが、屋敷の中も広く複雑に入り組んでおり、西大路がいなけば一瞬で迷ってしまうだろうと思った。


 それにしても立派な造りだな、西大路の着物姿には驚いたがここまでそういう世界観が作り込まているともはやちょんまげの人とすれ違ってもさほど驚かないかもしれないな。


 そんな事を考えていると西大路がある部屋の襖の前で立ち止まった。


「この部屋に父がいます。大丈夫だとは思いますがくれぐれも粗相のないようにお願いします。礼儀に関してはかなり厳しい人なので」


「あぁわかっている。まかせろ」


 西大路は緊張しているのか少し震えていた。そしてその緊張をほぐすように一度深呼吸して静かに襖を開いた。


 部屋の奥にはおそらく50代半ばといった男性が座って茶を飲んでいた。


 男性が俺達に向ける眼光は鋭く、殺意はこもっていないとは思うがそれでも好意的に見られていないことだけははっきりと分かった。


 それと同時に西大路の身体が強張り、彼女が一気に緊張している、もしくは恐れていることもわかった。


「彩乃、その小僧が俺にどうしても合わせたいという人物か?」


「はい、そうです」


 初対面でいきなり小僧呼ばわりとは、ずいぶんなご挨拶だな。などと考えつつも俺は反対に誠意を持って西大路父に挨拶した。


「申し遅れました。私は東済人と申します。彩乃さんとは男女のお付き合いをさせていただいています。」


 俺はそう言って深々と頭を下げた。


「お付き合いだと?彩乃どういうことだ。明日何があるのかお前は知っているだろう」


「はい、存じ上げております。」


「知った上でこの小僧を俺の前に差し向けるということはそういうことなんだな?」


 そういうと西大路父は突然立ち上がり、俺の方にまっすぐと歩み寄ってきた。


 そして伸ばせば手と手が触れ合うような距離まで詰められた。


 そこで初めて気が付いたがこの人でかい。


身長が俺より高いということはもちろんだが、それよりもこの人が身にまとっているオーラのようなものがこの人の存在感のある大きさを跳ね上げている。


 もちろんそんなオーラ目には見えないはずなのだが俺の第六感かなにかが確実にこの人のオーラを感じ取っている。


確かにこれを向けられたら容易に逆らおうなどとは思わないだろうな。


「東といったか、この子は明日大事な用件があり、君の存在ははっきり言って邪魔だ。即刻うちの娘と別れてもらおう」


 事前情報からかなり横暴な人だとは思っていたが、娘の連れてきた彼氏をはっきりと邪魔者扱いして、更に別れることを頼むのではなくほぼ命令近い形で提案してくる。


まさかここまでとはな。


「待ってくださいお父様そんな突然なにを」


「彩乃は黙っていろ」


 まぁそりゃ西大路も焦るわな。しかしこのままじゃそもそも西大路と父親がまともに話し合うのもままならんだろうから、少し動くか。


 西園寺の気持ちを知っているし、1度協力を了承した手前こよままおめおめ引き下がるわけにはいかん。


それに目の前で誰かがなにも出来ずに敗北する姿なんて、見たくないし、せめてやるだけやって負けてもらいたいしな。


敗北に禍根を残すとろくなことがないことを俺は知っている。


 納得いくまでやって完全におられる形での敗北が一番いい。


「失礼を承知で申し上げますが、私は今の所彩乃さんと別れるつもりは全くありません」


「ほう、なぜこの子にこだわる?どうせ金目当てかうちの家柄目当てなのであろう」


 一瞬この人高校生に向かってめちゃくちゃなこと言うなと思ったけど、俺も過去にそういう目的で女子に言い寄られた経験があるから一概にめちゃくちゃってわけでもないんだよな。


 俺は西大路父に自分の素性について説明し、俺が金や家柄目当てで西大路と付き合っているわけではないと主張した。


 いくら西大路家が名家とはいえ、今の日本において東家よりも格上ってことはないからここは信じてもらえるだろう。


「君の素性については理解した。しかしそれでも娘と別れてくれないか」


「すいませんが俺だけで決められることではないと思います。彩乃さんとお話してみてはどうでしょうか。彩乃さんが別れることを了承するのならば私も従います」


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