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プロローグ

 東済人(ひがし さいと)は「じゃない方系男子」である。


 国内有数の財閥であるイーストカンパニーの社長を代々勤めている東家に産まれたが、俺には双子の兄がいる。


 この兄の存在が俺を「じゃない方系男子」たらしめている。


 兄である東学人(ひがし がくと)は所謂完璧超人なのである。文武両道容姿端麗品行方正であり、人望も厚く何をやっても必ずトップの成績を修める。


 俺は同じ東家の男として兄と同様に教育されてきたが、俺は何に関しても兄を上回った事はなかった。


 一卵性の双子であるから才能の差はほぼないはずなので、俺が兄に敵わないのは単純に努力の差であると思っていた。


俺は何事も限界まで己を追い込み、兄に挑戦し続けたがただの一度として俺は兄に勝てなかった。


 そして数多ある兄への敗北の中でも俺が決して忘れることが出来ないであろう敗北がある。それは俺達兄弟の幼馴染である東条(とうじょう) 純子(じゅんこ)をめぐる恋の敗北だ。


 純子は兄に何度も挑戦し続け、その度に敗北する俺を励まし続けてくれた。


 敗北し傷つく俺はそんな純子の優しさ、そしてこんなに負け続ける俺をきちんと評価し見てくれる姿勢に惚れた。


 しかしそんな恋心も虚しく、純子は中学校の卒業式に兄に告白した。そして兄もその純子の気持ちに答える形で二人は恋人同士になった。


 俺は当初身勝手にも純子に裏切られた様な気持ちになっていた。ずっと兄に挑み続ける自分をみてくれていたじゃないかと、なのになぜ純子まで兄を選ぶのかと。


 しかし俺は純子がなぜ兄を選んだのか、その理由に薄々気づいていた。


 それは俺が中学生になってから兄に敗北し続ける事に耐えられなくなり、いつしか兄と自分は完全に別次元の存在なのだと結論付け無理に兄に挑む事をやめたからだろう。


 純子がいつも見てくれていたのは「兄に挑み続ける俺」だ。それが戦いを放棄し挑まなくなったのであれば、離れていくのも当然だろう。


 愛していた純子すら兄に敗北し失ってしまった俺には、そこから純子を取り戻す為にもう一度兄に挑戦するような気力は残ってはいなかった。それどころかもう人生などどうでもいいとまで思っていた。


 だが死ぬような勇気もないので、俺はエスカレーター式で入学した高校で1年を過ごした。もちろん無気力に、だ。


 なにをするにしてもどんな結果を残そうがこれまでのようにどうせ兄には勝てず、挙句出来のいい兄と比べられ「さすが学人君の弟なだけあるね」などと言われる始末なのが目に見えていたからだ。


 兄は高校入学後すぐにその持ち前の完璧超人っぷりを発揮し、学校中にその名が知れ渡り、誰からも好かれ、気づけば1年生にして生徒会長になり各行事において挨拶などをこなしていた。


 兄が有名になればなるほど俺の肩身は狭く、予想通りあの東学人の弟という色眼鏡で生徒や教師から見られるようになった。


 俺の周りには兄との繋がりを持とうと俺に近づいてくる人間が増えたが、俺があまりにも素っ気なく対応するので俺に声をかけてくるものも次第に減っていった。


 そうして俺の周りには数少ない信頼のおける友人を残して、誰もいなくなった。


 これでいい、どうせ俺は兄には何も敵わない敗北者なのだからこうして静かに3年間無難に過ごしていこう。


 もう無駄な挑戦をしてしんどい思いをするのも懲り懲りだしな。そしてこの1年を通して俺は東学人「じゃない方」となった。


 そんな風に1年を過ごし、高校2年のある日俺に転機が訪れた。













「東済人さん。私の恋人になってくれませんか」












 目の前の名前も知らない美少女は懇願するように俺に交際を申し込んできた。


 いやいや「じゃない方系男子」の俺が告白されるわけないだろ。


良かったら次も見ていってください。

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