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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

科学の力で未来とかに送られて希望をまき散らした結果、壊れた被検体となったごく一般的な勇者のお話

作者: 猫の恣意

〖確認しました:“記憶媒体”をプログラムします〗


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 暗転した視界に光がまた灯る。


 記憶に新しい“死”の記憶。


 暗い、暗い、雨に打たれたあの日。

 酷く寒くて、苦しくて。希望が□□□で、正義が不条理で。

 討たれたあの日、紅い、紅い、血がヌメリと滴った。


 そうだ、あの最後の命日を…… 最後の記録を。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ああ、思い返される。


 ふるい、ふるい、大昔の記憶。

 若かった。あの日。

 絶望してなお、□□□に向かい直ったこと。


 俺が殺された。僕が裏切られた。余が反逆された。我が謀反を企てられ、最後に孤独のまま死んだ。

 怨嗟、欺瞞、堕落、害悪、欲望、そして“復讐”

 負の感情が、憎しみと共に向けられた。



 快挙、そう呼ばれた過去の出来事。

 異界の大勇者、孤独の大盗賊、慈愛の大賢者、挑戦の大法皇、最後に呼ばれた悪徳の大魔王。


 今まで尽くした、知るもの全てに尽くした。

 世界を捨て、自身を捨て、心情を捨て、自由を捨て、全てを捨て去り全てに尽くした。



 そうなんだ、だから、だからそうした。今までの思いと共に―――


 ―――今まで積み上げてきたものを狂気と共に壊した―――


 今までの記憶をここに送ろう、記録として、記憶として、今までの技術と共に、希望と共に……



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



〖確認しました:“記憶媒体”をプログラムします〗


 告げられる。呪詛のこもった声が、記録が記憶になっては入り込んでくる。


〖“記録媒体”を基礎として、脳となる臓器へ記録のコピーを行います…… 成功〗

〖以後“記録媒体”は予備記録保存領域として機能します〗


 今まで覚えてきたのは、かつて殺した最愛の人。

 血が滴る己の手を見ながら確信した。自分が求めていた世界は見つかって、たった今崩壊したんだな…… と。


 それからは早かった。一年、五年、一〇年、五〇年、気づけば何の記憶もない。ただの無能な年老いた男がそこに立っていた。


 鼓動が失われるのが肌に感じる。


 思い返してみれば、それが最初の□□□で。俺が“勇者”として異世界に呼ばれたんだっけ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



〖基礎体となる魂魄をスキャン…… 魂魄に関する異常は皆無〗

〖記憶媒体から記憶コピーの欠損スキャン…… 欠損に関する異常は皆無〗

 

 だめだ。また、あの悪意と希望は止まらない。


〖魂魄との相性スキャン…… 適合率100パーセント〗


 □□□は、いつになったら終わるんだろうか。


〖全行程オールクリア、これにより転生を行います Yes/No〗


 もう希望はないのに□□□は、いつまでも……


〖コーション!、コーション! 魂魄より出所不明なソフトが検出、□□□のソフトが強制実行されます。再起動をす・・・〗

〖再起動を推奨、再起動をす、すす、いしょう、、、推しょぉおう〗


 本当に…… 一体なんで。


〖□□□のソフトが起動しました…… 認証〗


〖□□□のソフトにより強制的に記憶が植え付けられます…… 成功しました〗


 頭の中にまた知らない記憶が入り込んでくる。


〖□□□は希望を探します、あなたは希望です、あなたが□□□の希望なのです〗


 そんな声を聞いて、また視界が暗転する。

 新たな□□□の記憶を共に……


 そう、□□□。いま新たに絶望した者の魂と替わって。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 目に光りが宿る。

 空は茶色く、地面は赤黒く染まっている。


 ふと下を見ると、なじみ深い母国語で□□□の名前が彫ってあるプレートを見かけた。


「ああ、今度は戦場か、今度も□□□の名前……」


 今まで、一度たりと思わなかった事はない。

 □□□の名前を知るということは、それは……


「そうか、やはりか…… やはりこの□□□の名前は……」


 知ることは、その意味を知ることは……


「なぁ□□□、君の名は 一体なんだ」


 全てが終わった後なんだな。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

この作品は2018年2月に執筆したものです。2、いや3年前の作品ですね。

ずーっと埋もれてくれていたのに未投稿は申し訳ないので、供養しました。


正直いって中二病が爆発した側面は否めません。そういえば世界観をメモった台本もあったのですが、なくしてしまいました。

あのときの妄想は今思い返しても痛いなあ、と感じます。


そんな中二病作品の供養です。

最後にもう一度、読んでくれてありがとうございます。

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