99 女王蜂様 新しい方はしっかり者
カチカチッ カチカチッ
うわっ、「オオスズメバチ」の威嚇音が大きくなった。
「そりゃあ、こっちの女王蜂様が彼氏とイチャついてるんだから、『オオスズメバチ』も怒るわよん」
蜂野先生~。イチャついてるって、僕が紗季未から蜂の針で殴られただけで……わあっ!
カチカチッ カチカチッ
ツッコミを入れている場合じゃなかった。でも、どうすれば?
◇◇◇
「真理ちゃん。『オオスズメバチ』の目的は?」
紗季未が淡々と三俣に問う。
「私はマリ・キウリと言ってる場合じゃないね。『オオスズメバチ』は偵察だよ。潰さないと本隊を連れて来られちゃうね」
「潰すには?」
「『ニホンミツバチ』は熱殺蜂球って言って、『オオスズメバチ』囲んで球作って、蒸し殺すけど、この方法だと真ん中辺にいる仲間も死んじゃうよ」
「駄目だね。仲間を犠牲にする方法は使わない。私が女王蜂様と言うのならね」
紗季未。いきなりかっこよくなってない? 僕が置いて行かれている感凄いんですけど……
◇◇◇
「新しい女王蜂様。僕が行きますっ!」
そう言うが早いか筋斗雲に飛び乗った猿渡君が「オオスズメバチ」に向かって、突撃する。
「頑張ってっ! 猿渡君。でも、絶対に無理はしないでっ!」
紗季未が声をかける。うーん。しっかりしてるな。これはいいタイミングで蜂野先生と代替わりしたのかも。蜂野先生だと全部ギャグにしちゃいそうだし。
ガツンッ! ガツンッ!
猿渡君は如意棒を振るって、「オオスズメバチ」の頭部に打撃を加える。
でも、駄目だ。押されている。首を振る「オオスズメバチ」の勢いの方が強い。
「女王蜂様」
「女王蜂様」
「女王蜂様」
大暴れ大将軍のお三方、相変わらず息が合ってますね。
「何でしょう?」
「このままでは猿渡君が危険です」
「このままでは猿渡君が危険です」
「このままでは猿渡君が危険です」
「そうね。押されてる」
「退却させてください」
「退却させてください」
「退却させてください」
「うん。退却させましょう」
「そこでっ!」
「そこでっ!」
「そこでっ!」
三人の大暴れ大将軍はいきなり左肩をもろだしにする。
僕は思わず目をそらす。この人たち変身前は女性だし……
でも、やっぱ欠侘苛鰻さんだよね。上半身左側もろだしにしたところで、男の「おっぷぁい」。慌てて大損した。
そんな僕の葛藤を尻目に三人の大暴れ大将軍はどこからともなく弓矢を取り出した。
「このわしがあの『オオスズメバチ』を撃ち落として見せましょう」
「このわしがあの『オオスズメバチ』を撃ち落として見せましょう」
「このわしがあの『オオスズメバチ』を撃ち落として見せましょう」
「うん。私が猿渡君に引き上げるように言うから、そこで狙ってください」
紗季未の言葉に三人の大暴れ大将軍は弓矢を引き絞る。
♪ちゃらら~ ちゃらら らっちゃら
うわ、どこからともなく「大暴れ大将軍」のアイキャッチのBGMが……
見れば蜂野先生が音源を流してるし。「自然の掟」で自分には「オオスズメバチ」退治はどうにもならないとか言ってて、そういうことは出来るの?




