98 女王蜂様✕女王蜂様
「やあねえ。恒未ちゃんは将来の女王蜂様だけど、あたしの『次』じゃないって、言ったでしょ。『次』は他にいるのよん」
恒未じゃない? すると誰だ?
考え込む僕を尻目に眩いばかりの白い強い光が蜂野先生に向かって突進した。
「先生っ!」
わあっ、紗季未だっ! 強い光を発したまま蜂野先生の胸倉をつかんでいるっ!
「先生っ! 私も弟たちに帰って来てほしいって気持ちもありますっ! でもっ、それよりも周りのみんな見て何とも思わないんですかっ! あんなに楽しそうにしてんのにっ! 『スズメバチ』なんかにぶち壊しにされちゃっていいんですかっ?」
「だから、あたしにゃどーにもならんのよん。新しい『女王蜂様』のおつとめなのよん」
「だったら、新しい『女王蜂様』って、どこにいるんですかっ?」
蜂野先生は紗季未に胸倉をつかまれたまま、またも顎が外れるんじゃないかと思えるくらいの大欠伸をすると続けた。
「ふあああ~、もううすうす気づいてんじゃないのおっ、誰が次の『女王蜂様』か~」
「へっ?」
思わずつかんだ蜂野先生の胸倉を外す紗季未。
「ああっ、もう。メンドくさいっ! 恒未ちゃんっ! 今のここの『女王蜂様』のとこに行ってやんなっ!」
「ああっ」
蜂野先生の呼びかけに答えた恒未はゆっくりと羽ばたき始め、そして、紗季未の左肩にとまった。
「ええっ!」
驚きのあまり次の言葉が出ない紗季未に、恒未は笑顔を向けると、右腕を振って見せた。
「ああっ」
「え? 恒未ちゃん、もしかして同じことしてみてってこと?」
「ああっ」
紗季未は半信半疑のまま、右腕を振ってみる。
すると体全体がより一層強い光に包まれた。変身か? 変身するのかっ?
◇◇◇
すっかり光が消えた後の紗季未の姿は黄色のワンピースに黒いストッキング、右手には「蜂の針」。要するに蜂野先生と同じ格好だ。
なんてこった。紗季未が「次の女王蜂様」だったとは。やたら「大器」と呼んで、紗季未にだけ栄養食品を食べさせていたのはこういう訳だったのか。
しかし、よく見ると蜂野先生と紗季未は微妙に違う。ワンピースの色が同じ黄色でも紗季未の方が地味な感じがする。キャラクターとか関係するのかな。いや、何と言ってもだな……
一番嬉しかったのは紗季未の「貧乳」が変わってなかったところだ。僕は蜂野先生のようなボンッキュッボンッ(死語)は苦手なんだっ! いいっ! 「貧乳」はいいっ! 「貧乳」こそが男のロマ……
ゴンッ!
紗季未の振るう蜂の針の一撃が僕の脳天を襲った。
「こうちゃん……」
「はっ、はひっ」
「今、物凄く失礼なこと考えてたでしょっ?」
何で分かるんだ? これは新しい「女王蜂様」にも振り回されるのかっ? 僕はっ?