96 女王蜂様 日本昔ばなし
かくて、 僕と紗季未、それに 三俣と飛得先輩の四人は「農場物語」ゲームキャラに変身したメンバーの女の子たちがせっせせっせと焼いてくれた肉を仕分けすることになった。
仕分けと言うのは、「蜂野先生に一枚」「他の人に一枚」「蜂野先生に一枚」「他の人に一枚」と皿に分けていくのである。
最終的に蜂野先生用の皿は、地球のエベレストか火星のオリンポスかと言わんばかりの肉の塔が高々と組み上がった。
それを僕たち四人は崩さないよう細心の注意を払いながら、蜂野先生のいる丸テーブルに運び込んだ。
蜂野先生は黙って頷くと、左手に持った瓶ビールをあおりながら、右手に持った箸で凄まじい勢いで食べ始めたのである。
あ、何で高校に瓶ビールがあるの? というツッコミは空し過ぎるので勘弁ね。まあ、学校前の「拉麺美食倶楽部」の疲労子さんが配達してくれたらしいけど。
そして、四皿の肉の山を食べ尽くし、十二本目の瓶ビールを見事に空け、「げふう」と大きなゲップをした蜂野先生は「グオオー」と凄まじいいびきをかくと眠り始めたのである。
「ミッションコンプリート」…… だよね。
僕たちは校庭に集まったメンバーたちと歓談しながらバーベキューを食べ始めた。それは楽しい時間だったんだ。
◇◇◇
校庭に集まったメンバーたちがもう食べられないってほど食べた頃、上空から音が聞こえた。
カチカチ カチカチ と
最初は上空に筋斗雲に乗った猿渡君がいて、音をたてているのかと思った。
でも、猿渡君は地上に降りて、ジュース飲みながら肉食べてるし、何なんだ? あの音は?
「あー、それはここが『かちかち山』だからよん」
蜂野先生、起きてたんですか。いやそれはいくら何でも。
「あ、せーのっ! どんっ!」
わっ、蜂野先生が久しぶりに蜂の針を振った。
白い光が消えてみると、僕は柴をしょってるし、え? 今の僕は、「かちかち山」のタヌキ?
そして、オオーッという大歓声。何事かと見てみれば、バニーガールに変身した蜂野先生。え? ウサギってこと?
「そいうこと、待っててねん。今から新川君の背中の柴に火を着けるから。かちかち」
「いやっ、いやいや、そういうことではなくて、上空から聞こえるカチカチ カチカチって音は何でしょうと聞いてるんです」
「カチカチ? あたしのバニーガール姿見た男子生徒の体の一部分?」
「いえ、もうこの作品もいい加減終盤なんだから、シモネタは控えましょうよ。上空から聞こえるカチカチ カチカチって音は何なんですか?」
「ふん」
蜂野先生は小さく鼻を鳴らした。
「今回はこっちの発展のスピードも記録破りに早かったから、奴らに気付かれるのも早かったってことね。でもまあ……」




