95 女王蜂様 校庭リゾート
「農場物語」のゲームキャラに変身したメンバーたちがバーベキューの準備をしている校庭は人でごった返して、大騒ぎになっていた。
ちなみに「農場物語」のゲームキャラに変身したメンバーたちは全員女の子になっている。
何故かと言うとだね、「農場物語」は他のゲームではあまり例を見ない特殊性があるのだ。
つまり、「女の子同士で結婚できる」のである。
かくて、変身前に「男」だった奴は「女の子」に、「女の子」は「女の子」に変身する。
結果は「百合の花」で満開なんである。
そして、みんな楽しそう。
◇◇◇
もちろん、校庭にいるのは「農場物語」のゲームキャラに変身したメンバーたちばかりじゃない。
「のぼり坂くだり坂ま坂46」に「辛」のメンバーに動画撮影チーム。
「大暴れ大将軍」のお三方は、白馬に乗って駆けまわっているし、既に駐車しているハチロクに二台のRX-7。その脇には片葉兄弟に節藁野君。
中空には筋斗雲に乗った猿渡君。キュラキュラキュラという音と共に入って来たアメリカ陸軍戦車M1エイブラムスにはミリ研の5人が乗っている。
何とダラえもんまで来ている。レジャーシート敷いて、その上でダラダラしているだけだけどね。
僕と紗季未、それに 三俣と飛得先輩は準備で手伝えることがないかと歩いていったんだけど……
◇◇◇
「ぶっ!!」
僕は思わず吹いた。でんと置かれたビーチパラソルの下でサングラスをした蜂野先生が細長いチェアに横たわる。脇の丸いガーデンテーブルの上にはトロピカルドリンク。色は鮮やかな青。ブルーハワイかっ!
いや、僕が驚いたのはそこじゃないんだ。こんなことくらい蜂野先生にしてはおとなしい方なのだ。さすがに学習した。
驚いたのはその隣で恒未がそっくりな恰好で細長いチェアに横たわっていたことだ。ご丁寧に小さなサングラスまでかけて、脇の丸いガーデンテーブルの上には白いドリンク。例の栄養食品の飲み物版かな?
血は争えないと言うけど、こういうところはあんまり母親に似てほしくないなあ。僕の子でもあるんだからさ。
◇◇◇
「あーっ!」
後ろからおもむろに声がした。
「新川ーっ! とうとう変身したのかーっ! おっ?」
勇者の伊藤と武闘家の鈴木、魔法使いの田中さんと僧侶の中村さんのパーティーだ。真っ先に僕に気付いたのは勇者の伊藤だ。
「何だよー。新川ーっ、『美少女』じゃないじゃないかーっ!」
「ホーント、新川君が『美少女』じゃないなんて」
「信じられないっ! あの『美少女マンガ』『美少女アニメ』『美少女ラノベ』『美少女ゲーム』の化身新川君がーっ!」
「大丈夫か? 新川? 変なものでも食べたのか?」
僕ってそう思われていたのか。うすうす感じてたとは言え、結構ショックでもある。まあ確かに男が食うと妊娠するという変なものを食べたが……
隣で紗季未はドヤ顔だ。
「ふふん。私の言ったとおりでしょ。こうちゃんは『美少女』にならなかったよ」
「確かにそうだよなー。北原。伊達に幼馴染やってないな」
「そうなると例の賭けは紗季未ちゃんの一人勝ちだよね」
ドヤ顔のまま、紗季未は蜂野先生に声をかける。
「蜂野先生ーっ! みんなこう言ってますよー」
蜂野先生、おもむろにサングラスを外すと
「北原さん、いけないわ。それは『賭博罪』よ。『非行』よ。『不良』よ。『補導』よ。『網走極等少年院』よ。いえ、そんなことより、あたしはお腹が空いたのよー。肉よ。肉肉。肉持ってきなさーい」
わあ、いつもながら力技で開き直った。




