94 女王蜂様 全校放送で復活!
素材の採取作業を終えた僕と紗季未は生物化学室に戻ることにした。
でも、まずは外から様子を覗って、三俣がまだ落ち着いていないようなら、女王蜂様室に戻ろうと紗季未に話した。紗季未も頷いた。
恐る恐る生物化学室を覗うと中から三俣の明るい声がした。どうやら飛得先輩と化学実験のことで盛り上がっているらしい。
これは大丈夫かなと思い、ゆっくりと生物化学室の扉を開けた。
一瞬、三俣と目が合い、三俣は下を向いた。でもすぐに上を向いて笑顔を見せてくれた。
「おかえり。いい素材は取れた?」
「そりゃもう、レア素材が三種類も取れたよ。そっちはどう?」
「こっちも順調。見てこれ」
三俣はビーカーに入った液体を見せてくれた。
「傷薬。疲労回復薬。そして、爆薬」
「おおっ、凄いじゃないか。もう三つも。さすがは『化学者』」
「ふふん」
三俣はちょっと得意そう。
「さあて、『錬金術師』の方はどうかしら?」
「うーん。ようし、こっちもやってやろうじゃないの」
<調合1>「薬草」+「清水」+「木の実」=「傷薬」
<調合2>「薬草」+「清水」+「木の実」+「きのこ」=「疲労回復薬」
<調合3>「火薬石」+「温泉水」+「樹液」=「爆薬」
「ぷっ、何それ」
三俣は吹き出した。
「まるでこっちの真似したみたいじゃない」
「いや、そういうつもりでもないんだ。この『錬金術』の教本の最初の項目から調合していったらこうなったんだよ」
「ふーん。え? その本、新川君には『錬金術の教本』に見えるの?」
「え? 他の何に見えるって言うのさ?」
「私には『化学のテキスト』に見えるよ。やっぱり最初の項目から製造していったんだ」
! これが蜂野先生の魔法か! 蜂野先生のすぐ近くにいるとおバカばっかやってるから分からなかったけど、今更ながら凄い。
なりたいものに変身させるだけでなくて、周囲の道具までそれに合わせて変化する?
僕の周りの人たちが蜂野先生をリスペクトする訳だ。まあ、おバカ趣味を知らないってのもあるけど……
少し蜂野先生を見直したと思ったその時……
グオオオオオオオオオオオーッ
分かるっ! 僕には分かるぞっ!
これは正午のサイレンなどではないっ! 蜂野先生の……お腹の音だ…… それが全校放送されてるっ!
「ぴんぽんぱんぽーん」
うわっ、チャイムを自分の口で言ってるよ。蜂野先生。
「お昼よん。いやっ、そんなことはどーでもいーのよん。あたしのお腹が空いたのよん。とっとと準備するのよん。『農場物語』の子たちがやってるバーベキューの準備を手伝って、早く、あたしに食べさせるのよん。北原さんとイチャついてる場合じゃないのよん」
ドッと学校中が笑い出す。前言撤回。やっぱり、蜂野先生は蜂野先生だわ。