86 女王蜂様 さわりたくなるからさわり放題
「ほっほっほっ、見たかしら。新川君。マイフィンガーテクニックを」
見ましたよ。うーん。今回は相手が喜んでるとなるとどうしたもんかな。
「さっ」「ささっ」「さささっ」「なでなで」
「きゃあ」
「わあ」
「うっほほ~い」
「うっほほ~い」
だけど、これじゃまた1日がこれで終わっちゃうし、何とかせにゃ。あっ、そうだ!
「先生。先生。あそこにまた『公衆トイレ』があります。ここはまた『賢者』に転職しませんか?」
「うーん。そうねえ。権蔵さんたち結構自由にさわらせてくれるんで堪能できてるわん。ほんじゃま、一発行ってくるかあ」
毎度のこととは言え、ホンット昭和のオヤジみたいですねえ。
◇◇◇
30分後、蜂野先生はまたも妙にさっぱりした表情で、『公衆トイレ』から出て来た。何があったかは絶対聞いてはならない。
「よしっ、みんな、先生が『賢者タイム』でいるうちに学校に行ってしまうぞ。前回は15分もたなかったからな。急ぐぞっ!」
「おいおい。待てよ。新川。何でそんなに急ぐ必要があるんだ」
伊藤の問いに僕は両手を合わせて頼んだ。
「すまん。伊藤。今は急ぎたい。理由は学校に着いてからだ」
そして、僕は勝った。蜂野先生の「賢者タイム」が続いているうちに学校に着いたのだ。
農業高校でもないのに、牛が「ブモー」と鳴き、鶏が「コーコッコ」と鳴く学校に。
「それで新川。急いだ理由は何だ?」
改めて問う伊藤に僕は答える。
「あのままでは蜂野先生のおさわりだけで1日が終わっていた」
「それだと何かまずいのか?」
「まずい。僕のメンタルに来る」
「何を言っているのか俺にはさっぱり分からん」
「お前も蜂野先生に自宅に住まれると分かる」
◇◇◇
学校に着いたので、恒未は猿渡君の操縦する筋斗雲から羽ばたいて蜂野先生の右肩に移った。
そして、笑顔で上空の猿渡君に手を振った。わが娘ながら可愛い。あの邪心の塊蜂野先生の娘とは思えない。
猿渡君も手を振り返し、去って行った。これから妖怪退治でもするのかなあ。
「なーによ。まだ『変身』してないのおっ! 新川君。せっこいわねー」
先生。また「賢者」から「遊び人」に戻りましたね。いやー、危なかった。
「先生」「先生」
元学校、今農場からわらわら女の子たちが集まって来る。全員女の子だ。
「あら、みんな可愛いわねえ。おしりさわろうかしらん」
「先生。ほどほどにって、ひゃうっ! 何で僕のおしりを触るんですか?」
「なーんか、さわりたくなるようなおしりなのよねん」
「先生……」
気が付くと紗季未が真後ろに立っていた。
「人の彼氏に子どもを産ませた挙句、さわりたくなるからさわり放題というのはいかがなものでしょう?」
「まっまあまあ、北原さん。落ち着いて。もうさわらないから。多分……」
「多分?」
「いっ、いーえ。さわりません。さわりません。もーお、断じてさわりませんってば」