85 女王蜂様 テクニックを見せる
このパターンもう何回目か分からないけど、とにかく学校行こうということになった。
そして、護衛対象であるはずの蜂野先生は堂々と胸を張って、先頭を歩く。
まあ、そのおかげで僕たちはリラックスして歩いて行けるんだけどね。
◇◇◇
「よおっ、伊藤君」
前から歩いて来た別の戦士たちが勇者の伊藤に声をかける。
「ああ、権蔵さん、ヨネさん、幸吉さんにサトさん。こんちわー」
ええっ? その人たち、よく公園にいたご年配の方たちじゃないか。若くなっちゃって、まあ。
「どうすか? 調子は?」
「そりゃもう絶好調って、おっと。ちょっと待ってな」
権蔵さん、おもむろに懐から小さなボールを取り出して、道路脇の茂みに投げ込む。
「バケモンッ! 捕ったぞーっ!」
茂み一帯が白く光り、投げられた「バケモンボール」に目的のモンスターが吸い込まれて行く。
見るとヨネさん、幸吉さんにサトさんもボールをそれぞれ投げている。おい、伊藤、あれは?
「新川。おまえもさんざんやったじゃないか。『バケモンゴーゴゴー』だよ。あの人たちもともと趣味でやってたのが『プロバケモンプレーヤー』になったんだ」
「へ? プロ?」
「ああ、プレーヤー同士でも対戦できるし、チーム戦も出来る。それを動画配信している。まあ、それは俺たちの冒険も動画配信してるんだけどな」
「ふっ、ふーん。リアルなゲームやってお金を稼げるんだ。あれ?」
「こうちゃん。また、体が白い光帯びて来てるよ」
紗季未に言われるまでもなく、僕自身で気付いた。今度こそ「変身」する?
◇◇◇
「ほっほっほっ、ほおれほれほれ、『変身』するわよん。言ったでしょう。器小っちゃいんだから、すぐ『変身』するって」
勝ち誇る蜂野先生。む~、何か悔しいぞ。
「あっほれっ! 『変身』『変身』『変身』するぞ~。『変身』『変身』『変身』するぞ~」
蜂の針を振り振りみょ~な踊りを踊る蜂野先生。更に……
「さっ」「ささっ」「さささっ」「なでなで」
わーっ! また、おさわりを始めた。今回、さわられたのは権蔵さん、ヨネさん、幸吉さんにサトさんの「プロバケモンプレーヤーズ」。
「ひゃん」「きゃあ」「おおう」「うおおお」
次々声を上げる「プロバケモンプレーヤーズ」。先生、おさわりはもうやめなさいって、相手は元お年寄りですよー。
「いやあ、気持ち良かった。更に若返ったわい」
「すごいテクニック。気持ち良かった~」
「そうそう。フィンガーテクニックがすごいのよ」
「まさに『ゴールドフィンガー』じゃ」
あれ? 何か喜んでます?