82 女王蜂様 また転職する
何はともあれ学校に向かうことになった。
先頭を歩くのは「賢者」の蜂野先生。職業が僧侶と魔法使いの両方の魔法を使う援護+間接攻撃タイプだとか、いや、そもそも護衛対象じゃなかったっけとかいうことは一切関係なし。
堂々と先頭をのして歩いています。
それでも先生が「賢者タイム」なので(いつまでもつか分からないけど)、僕と紗季未はパーティーの4人と話が出来た。もともとゲーム好き同士だから仲も良かったしね。
まずは勇者の伊藤は開口一番。
「何だ、新川。まだ変身してないのか?」
「そうだよね。絶対真っ先に変身してるかと思った」
魔法使いの田中さんもかぶせてくる。
「そうそう。まだゲームキャラになってないなんてびっくりだわ」
これは僧侶の中村さん。
「こうなった以上、新川の変身はゲームキャラ一択だよな」
最後は武闘家の鈴木。
「え? 蜂幡高校の中でも筋金入りのゲーマーの4人から見て、僕ってそうなの?」
「「「「そりゃ、そうだよ」」」」
何も4人でそうきれいにハモらなくても、後ろじゃ紗季未が大爆笑しているし、君だって結構なゲーマーでしょ。
◇◇◇
「ところでさ……」
僕は話題を変える。
「RPGのキャラになったのはいいとして、こんな町中でモンスターとかいるの?」
「あ、そうか。変身してないから見えないのか」
「そこに元公園があるでしょ。そこにモンスターがいるから退治してみせるね」
パーティーの4人はそれぞれ公園に向き合う。
「って、僕には普通の公園にしか見えないんだけど……」
「まあ、見てなって」
伊藤の言葉に僕も公園を注視する。
◇◇◇
「じゃあ、田中さん。魔法使いの魔法から行ってみようか」
「じゃあ、メラ行くねって、はうあっ」
「遊び人は魔法使いのおしりをさわった」
「ちょっ、蜂野先生はもう「賢者」に転職したんでしょ?」
「もう『賢者タイム』終わった」
「『賢者タイム』終わったって、まだ15分も経っていない…… って、どこの世界に『賢者タイム』が終わると『遊び人』に戻るキャラがいるんですか? また話が進まなくなるから止めてくださいって、おおうっ」
「しょーがないわねー。魔法使いを触ると話が進まないって言うんじゃ、新川君で我慢してやるわ」
「我慢してやるって、何なんですか、それ? はっ、あわわっ、おおおっ」
◇◇◇
ドカッ ドカツ
紗季未のカバンが蜂野先生と僕の脳天を撃った。
「いい加減にしてくださいっ! どこの世界に白昼堂々痴漢ごっこする人たちがいるんですかっ!」
そうなんだよ。そのとおりなんだよ。でもさー、何で毎回毎回僕まで殴られるのー。




