81 女王蜂様 賢者になる
「遊び人」
うわあああ。やっぱり、そう来ると思いましたよ。
「遊び人……ですか?」
真剣な顔をして聞き入るパーティーの4人。止めといた方がいいと思うけど……
「そう。このパーティーに『遊び人』が加わることで、その強さは完璧になるのよん」
「強さが完璧……」
すっかり蜂野先生の口八丁に嵌るパーティーの4人。うーむ。
「でも、『遊び人』は一体どこに?」
「ここにいるわよん」
蜂野先生、自らの右手の拳で自分の胸をどんと叩く。
「おおっ」
感動の表情のパーティーの4人。
「女王蜂様。僕らのパーティーに入っていただけるので」
「もちろんよん」
「おおっ、これで僕たちのパーティーも『完璧』です」
待てっ! みんな冷静になれっ! どこの世界に「遊び人」が入ると「完璧」になるパーティーがあると言うのだっ?
それにみんな蜂野先生の護衛に来たんじゃないのかっ! 護衛対象が「遊び人」になってパーティーに加わるRPGって何だっ?
まあ、そういう僕のツッコミは見事に空回り。蜂野先生、満面の妖しい笑み。これはまたろくなことが起こらないぞ。
◇◇◇
僕の予感はすぐに的中した。
「遊び人は僧侶のおしりをさわった」
「へっ?」
そうら出た。やっぱりこれがやりたかったんでしょう。もう。
「遊び人は魔法使いのおっぷぁいをさわった」
「きゃっ!」
まっ、待って待って! 元ネタでもそこまではやっていないっ!
「遊び人は武闘家のおっぷぁいをさわった」
「ふおっ!」
男女見境なしかよーっ!
「遊び人は勇者の〇〇〇をさわった」
わーっ! やめっ! やめっ!
その後も蜂野先生=遊び人はパーティーの4人のおしりやらおっぷぁいやら○○○やら△△△やらをさわりにさわりまくり、4人全員その場にへたり込む始末。
逆に蜂野先生=遊び人は顔つきがツヤツヤ。これのどこが「完璧」なんですか?
◇◇◇
「『完璧』よん。少なくともあたしは大満足!」
いや、先生は大満足でもですね。パーティーの4人がこれじゃ「護衛」にならないじゃあないですか?
「え? 『護衛』のために呼んだんだっけ? 忘れてたわん」
どこまでその場の欲望に忠実なんですか? このままじゃ先に行けませんよ。
「うーん。まあ、あたしも結構満足…… じゃなくて、経験値を積んだし、ちょっとそこの『神殿』で転職してくるわ」
って先生、そこ「神殿」でなくて、「公衆トイレ」。ああ、もう行っちゃった。
◇◇◇
30分後、蜂野先生は妙にサッパリした顔で出て来た。何があったかは考えないようにしよう。
で? 転職したんですか?
「転職したわん。『賢者』に」
賢者ーっ? 本当ですかあ?
「失礼ねと思うけど、ここは冷静に対処。何故なら今のあたしは『賢者タイム』」
やめて下さいよう。本当に。本気の本気で苦情が来ますって。