80 女王蜂様 いろいろもったいをつける
♪ちゃちゃちゃんちゃんちゃんちゃん ちゃんちゃ~ん ちゃちゃちゃちゃ~ ちゃちゃちゃちゃ ちゃ~ら~
例の序曲に乗って、やってきたのは勇者に武闘家、魔法使いに僧侶。コアなゲーマー同士、すぐに分かりましたよ。誰が変身したのか。
向こうもこっちにすぐ気付き、笑顔で僕と紗季未に手を振った。
紗季未も笑顔で手を振り返す。このメンバーがいかにこのRPGが好きだったか、よく知ってるんだよね。
勇者は伊藤、武闘家は鈴木、魔法使いは田中さん、僧侶は中村さん。男女2対2。この4人仲良かったからやっぱりって感じ。
パーティーは蜂野先生の前に跪いた。
「女王蜂様。大好きなRPGのキャラに変身させていただき、ありがとうございます。ご依頼を受けて、護衛に参りました」
「え? 護衛? 先生、それってどういうことですか?」
「うーん。ちょっとねえ。気になることがあるのよん」
「何ですかそれ? こっちも気になるなあ。危険なこととかじゃないですよね?」
「まあ、危険ちゃ危険だけど、どうってことないっていやどうってことない。起きる時は何したって起きるからねえ」
「うわーっ、ますます気になる。はっきり教えてくださいよ」
「多分、そのうち嫌でも分かるわよん」
気になるーっ!
◇◇◇
蜂野先生はそれ以上、僕の質問に答えず、パーティーの前でふんぞり返った。
「大儀である」
そして、例によってどこから取り出したか分からない黒縁の眼鏡をかけるとジロジロとパーティーの4人を観察した。
パーティーの4人は緊張気味。まあ、僕らと違って蜂野先生慣れしてないからね。
ここで蜂野先生が一言。
「うーむ。イマイチだわねえ」
この言葉にパーティーの4人はショックの表情。大丈夫だよ。きっとしょうもないオチだから。
だけど、勇者の伊藤は真剣な表情で蜂野先生に問いかける。
「女王蜂様。僕らに何か足りないものがあるのですか?」
「あるわん」
「そっ、それは一体? 教えて下さい。最大限努力します」
ああ、ああ、もう真剣になっちゃって、これはまた後で全身の力が抜けるぞー。
「足りないもの…… それは……」
「それは?」
「パーティーバランス」
「!」
え? パーティーバランス? これは「ドラゴンコンクエストシリーズ」の3作目を基にしてるんでしょ? だったら、勇者、武闘家、魔法使い、僧侶は一番バランスが取れた編成じゃないかな?
「そうね。確かに概ねバランスは取れている。でも、80点ってとこね。100点ではない……」
「なっ、なら、どうすれば100点に……」
「もう一つ別の職業の者を加えれば、100点になる……」
「そっ、その職業とは?」
「その職業は……」
うわあ。いつものことながら、物凄く嫌な予感がするぞ。