78 女王蜂様 忽然と姿消す
何と返していいものやら分からず、呆然としている猿渡君の前で、蜂野先生、堂々と歌いだすし。
「♪さわろうぜっ! ゴールデンボールッ!」
ちょ、ちょっと待って、何か卑猥ですよ。
「♪舐めようぜっ! ゴールデンボー「わーっ、わーっ、やめっ、やめっ、本気で苦情が来ますーっ」
「何よお」
蜂野先生、おかんむり。いえ、『何よお』と言われても、これは……
「もうちょっとでR18になったのにい~」
いや、これはR18というよりは、ただの下品な下ネタでは……
◇◇◇
それで、猿渡君を呼んだのはいいとして、どうやって学校行くんですか。
「やあねえ、筋斗雲乗って行くに決まっているでしょー」
見ると既に恒未はもう筋斗雲に乗って、キャッキャッキャッキャッと大騒ぎ。
「ほらあ、さっさと行くわよー」
筋斗雲に乗ろうとする蜂野先生。あっ、でもっ。
◇◇◇
ズボッ
蜂野先生。筋斗雲を突き抜けました。
ぷっ、そうなると思ったよ。筋斗雲は邪心があっちゃ乗れないんだよね。「食欲」「性欲」「睡眠欲」全開の蜂野先生に乗れる訳ないじゃない。
◇◇◇
「何よお。そんなこと言うなら、新川君乗ってみなさいよー」
わっ、やめっ、やめっ、引っ張らないでっ
ズボッ
はい。僕も筋斗雲を突き抜けました。
「ぎゃあっはっはっ、言ってる自分だって邪心あるんじゃない。新川君ー」
「そりゃあ、仕方がないじゃないですかあ。人間だもの。それよりどうするんですか? 恒未以外は筋斗雲乗れませんよ」
「なあに言ってのよおっ! 若者は歩く歩くっ! お迎えなんか呼んでんじゃないわよお」
「お迎え呼んだのは、蜂野先生でしょ。まあ、蜂野先生が来るまでは普通に歩いて登校してたから全然問題ないですけど」
「ええい、とっとと行くわよっ! うっかり蜂兵衛っ! ♪蜂生楽だらけ~ この印籠が目に入らぬか~ こんなでかいもん目に入ったら怖いわ~」
「朝から飲んでると思われますよ。何でいきなり黄門様になるんですか? それに普通は助さん格さんでしょう? 何でいきなりうっかり八兵衛ならぬうっかり蜂兵衛?」
「ふっ、ふ~ん。これでもあたしは『地理歴史』の教員免許持ってるのよん」
「『地理歴史』の教員免許持ってる人が時代劇でもの語っちゃダメでしょ。と言うか以前、経済の話もしてましたよね?」
「あー、それはこっち『公民』の方の免許状ね。他にも『英語』『数学』『理科』『音楽』『美術』『書道』『保健体育』『情報』『家庭科』『水産』『商船』に『柔道』と。えーと、他に何が見たい?」
一気に信ぴょう性というものが消えうせました。本当に何でもありですね。あ、あれ?
「excuse me」
わ、外人さんだ。しかも、4人連れ。先生、蜂野先生。出番ですよー。「英語」の教員免許状持ってるんでしょう?
いない! 忽然と姿を消した。周りを見回すと、紗季未と中空に浮かんだ筋斗雲に乗った猿渡君と恒未のみ。
普段、あれだけ存在感ばらまいているのにどこに消えた。
しかし、そんなこちらの事情には全く関係なく、外人さんたちは英語でバシバシ話しかけてきた。




