77 女王蜂様 気遣いをぶち壊しにする
明らかに常軌を逸した朝食を「食え食え食え食え」食べさせられたけど、さすがに全部は食べられなかった。まあ、蜂野先生が残らず食べてくれたんだけどね。
◇◇◇
「うぃ~、御主人様のお帰りだよ~」
昭和むき出しで、千鳥足で寿司の折詰ぶら下げて帰ってきたのは蛍川かかしに変身したばあちゃん。
「あー、ばあちゃん、朝ご飯どうする?」
母さんの問いかけに蛍川かかしは、
「あー、今さっきまで飲み食いしてきたからいい。お昼まで寝る」
うーむ。変身後の人生満喫してるなあ。
◇◇◇
「あー、疲れた」
続いて、現れたのはレール娘に変身した京太朗兄ちゃん。夜勤明け、お疲れ様である。
「あら、きょうちゃん。お帰りー。朝ご飯どうする?」
母さんの問いかけにレール娘は、
「あー、食べるー。食べてから、風呂入って寝るー」
「あ、そう。ご飯に味噌汁。納豆に卵に海苔でいい?」
「んー。ありがとー」
ん? ちょっと待って。何で兄ちゃんには普通の朝食なんだ? 僕たちのあの精力増強のメニューは何だったんだ?
◇◇◇
疲れからか、フラフラしたレール娘は僕によりかかりそうになった。わっ。
サッ
すかさずレール娘を支えに入ったのは紗季未。あ、ありがとう。
そして、紗季未は笑顔で、でも、眼光鋭く、
「女の子は女の子が支えないとね」
えっ、えーと。ひょっとして、他の女の子が僕に触れようとするのを妬いてくれている……のかな?
◇◇◇
「さあーって、あたしたちは学校行きましょう」
トレードマークの黄色のレディーススーツをバッチリ決めた蜂野先生。
この期に及んで、朝は学校行くというのが凄いけど、紗季未は当たり前のようにブレザーの制服着てるし、僕も慌てて制服を着こんだ。
で、先生。今朝は歩いて学校行くんですか?
僕の問いかけに、蜂野先生満面の笑顔で答える。
「お迎えを呼んであるのよん」
むう。しょうもないオチが必ずつくという「お迎えシリーズ」。また、やるのですね。
「来るかなー。ほうら来たあ」
蜂野先生の指差した方向からは何と「雲」が飛んできた。
そして、「雲」の上には例によって……
「押忍。オイラ、『西遊記』の悟空」
はいはい。変身元は近所の小学生の猿渡君だよね。例のアニメとマンガ好きで評判だったもんね。
「押忍。オイラ、『西遊記』の悟空」
はいはい。分かるよ。分かるよ。「西遊記」本編は著作権保護期間満了してるからね。ただ、その翻案作品のアニメとマンガになると、そうではないのだよね。お気遣いありがとう。
「お迎えありがとねん。『ゴールデンボール』の悟空ちゃん」
…… まあいいんですけど。先生。それでは猿渡君の気遣いがぶち壊しですよね。




