75 女王蜂様 若い肢体に馬乗りになる
出たっ! 出ましたっ!
何が出たって、それは……
「鼻血」が……
出たっ! 出ましたっ! たらーりと、右の鼻の穴から……
何だよお、笑うなよお、男子高校生は鼻血を出すもんなんだよお。
紗季未はびっくり。
「あああ、こうちゃん。ティッシュ、ティッシュ」
ふっ、どうせならそのティッシュ、別の用途で使いたかったぜ。
◇◇◇
かくて僕は紗季未に膝枕してもらった上、鼻の穴にティッシュを詰めてもらい、更には小鼻をつまんでもらうという栄誉に浴したのである。
そうこうしているうちに睡魔が襲ってきて、まぶたが重くなってきた。
そんな僕に紗季未は笑顔で一言。
「そのまま寝ちゃっていいよ」
うーん。これって「リア充」なのか?
◇◇◇ 舞台裏 ◇◇◇
さっちゃんこと新川沙知子は大きな溜息を吐いた。
「わが息子ながら、これはもう見事なヘタレっぷりだわ。ここまでヘタレだと逆にすがすがしいわ」
そんな沙知子を女王蜂様こと蜂野めきみはなだめる。
「まあまあ。本格的に付き合うことになったのは昨日からだしね。それでも距離は縮まったんじゃないの」
沙知子のプンスカは止まらない。
「そりゃあ、正式に告白したのは昨晩だけどね。それまでいい加減長い間ぬるま湯みたいな関係続けてきた訳なんだから、母親としてはここらでビシッと決めてもらいたい訳よ」
ふんふんと頷くめきみ。
「ほうほう。お母さんとしてはそうですか」
「そりゃそうよ。めきみちゃん。紗季未ちゃんが嫁に来てくれたら、そりゃあ安心よ。ただでさえ、お兄ちゃんのきょうちゃんが鉄オタで女っ気なくて困ってたら、自分が『レールむすめ』になっちゃうし」
「はっはっはっ、お兄ちゃんはある意味自給自足だわ」
「まあなりたいものになるのが一番だけどね。ところでめきみちゃんの方はどうなのよ?」
「それがね、もう」
「もう?」
「びっくりするくらい順調。北原さんは結構な大器だから、機が熟するまで時間かかるかなと思っていたけど、これは思ったより早く進みそうだわ」
「凄いじゃない。めきみちゃん」
「まあ、あたしも今回のことはそれなりに計算してるのよん、エヘン」
「キャー素敵。めきみちゃん。惚れ直したわ」
「ふっふっふ、さっちゃん、今夜は昨日より念入りに可愛がってあげちゃうよん。邪魔者もいないしね」
「うふふ。早く来てー」
18歳になっている新川沙知子の若き肢体に22歳の蜂野めきみは馬乗りになった。
そして、思った。
(こうまで順調だと、そろそろあいつらにも嗅ぎつけられそうね。しかし、それが…… ふふふ)