61 女王蜂様 アップ用の動画を撮る
「わあ~っ、大変大変。さあさ、このソファーに横になって」
蜂野先生は僕を校長室のソファーに誘導した。そして、何を始めたかというと……
「あ、男が出るか? 女が出るか? あ、男が出るか? 女が出るか?」
蜂の針を振り振り、ソファーの周りを踊りだした。
先生~。それは1970年代に、料理研究家の〇野レミさんがラジオでかまし、〇リフターズの〇藤茶さんがコントでやったギャグ~。古すぎます~。じゃなくてえ。
「…… 先生、真面目にやって下さい」
ここは紗季未が静かに一喝。
「はっ、はひっ」
◇◇◇
「ところで、先生……」
また大きくなったお腹を前に僕は質問。
「な~に? 妊夫さ~ん?」
「ここまで引っ張っといて、実は僕のお腹が『空気入れ破裂ゲーム』の風船だったというオチはないですよね。それやったら、今度という今度はほんっきで、ほんっとに苦情が来ますからね」
「ぎっくう~」
ちょっと待って、ぎっくう~って何? ぎっくう~って
◇◇◇
「先生。今のこうちゃんの質問にちゃんと答えて下さい」
紗季未。いや、紗季未さん。どんどん迫力が増してきています。
「いやいやいや。や~ねえ。本当に『妊娠』してるわよお」
「だったら、ちゃんと対応して下さい。男である以上、自然分娩は出来ないでしょう」
「それはそうね。あっ、せ~のっ、どんっ!」
蜂野先生が蜂の針を一振りすると……
◇◇◇
とんがった髪の毛に、顔に縫い傷、真っ黒い服に変身! こっ、これは……
「ピーッノコッ! メスッ!」
「何です? 『ピーッノコ』って、私、『紗季未』です」
「ピーッノコッ! おまえは私の助手じゃないかっ! 最高の奥さんじゃないかっ!」
「何言ってるんだか、さっぱり分かりません」
蜂野先生、大きな溜息。
「やれやれ。今の若い衆は『〇ラックジャック』も知らないの~。なってないわね~。深夜アニメで『ヤング〇ラックジャック』もやってたじゃん」
「そういう小ネタはいいので、こうちゃんを何とかしてやって下さい」
て、言うか、また、僕のお腹が大きく…… わあっ!
◇◇◇
僕の体の周りが白い光に包まれ出した。お腹の周りは見えなくなるほど強く白い光に覆われている。
「来た、来た、来たあっ! いよいよ始まったわねぇ~っ! これは『聖母マリア』以来の奇跡よん。私も初めて見るわ~」
え? ちょっと待って、先生っ! 何、今の「初めて見る」って、何?
「あ、こうしちゃいられないわ。スマホ、スマホっと、動画撮ってアップしないと~、これはいくつ『いいね』がつくかしらん、楽しみ~」
先生、完全に他人事だと思ってますね。紗季未も呆然として、突っ込む気力を失っているし……
次回で決着します。多分……
空気の入った風船が破裂するオチはないです。