56 女王蜂様 お腹ペッコペコのペコちゃん
それからの僕は、とにかくメイド服姿の蜂野先生の方に視線が行かないように努力。
麺を打って、切る隆山先生と 紗季未・疲労子さん組を交互に見たりして。
そうこうしているうちに、千里万里さんから「料理勝負」の内容が「牛乳ラーメン」対「正統派醤油ラーメン」に定まったので、観客に勝負の行方の予想についてインタビューしたいから、手伝ってくれとの話。
渡りに船だ。
いろいろな人、モンスターもいるけど…… に聞いて回ると、やはり、「乳乳亭」の「正統派醤油ラーメン」の美味しさは知ってるけど、「牛乳ラーメン」に興味を惹かれるというのが多い。
やはり、珍しい「牛乳ラーメン」の方が有利なのかな……と思っていると紗季未・疲労子さん組の調理場に近づいていた。
紗季未と視線が合うと、汗まみれの彼女から一言。
「こうちゃん。私。負けないからねっ!」
応援してあげたいけど、今の僕の立場では言いづらいなと思ってると、何と千里万里さん、カメラを止めて、サムズアップ。
ここは甘えよう。
「うん。きっと紗季未たちの作ったラーメンの方が美味しいよ」
紗季未は汗まみれで天使の笑顔。うーん。動悸が激しくなるよ。
疲労子さんは苦笑い。
「全く妬けるんだから。ほら、紗季未ちゃんっ! 勝ちに行くよっ!」
「はいっ!」
紗季未、いい返事。
◇◇◇
さて、「正統派醤油ラーメン」の調理場を取材した以上、「牛乳ラーメン」の調理場も取材しない訳にはいかない。
蜂野先生の妙なツッコミは極力回避しないと…… 完全回避は難しそうだけど……
近づくと…… うわっ!
麺を作る隆山先生から凄いオーラが出ている。
やっぱり本気になると凄い…… 紗季未たちには頑張ってもらいたいけど…… うーん……
「ふっ、ふっ、ふうああああああっ」
後方から何とも大きな欠伸の声が…… これはやはり……
◇◇◇
予想通り、大欠伸の主は蜂野先生。口を閉じ終わると一言。
「飽きた」
いつものことながら、全身の力が抜けました。僕。
千里万里さんはカメラを回し続けている。さすが、プロ。
「ねえねえ。後、どのくらいで出来るの? ラーメン?」
蜂野先生の問いに、千里万里さんは冷静に答える。
「あと2時間くらいかな」
「なによそれー。もうあたし、お腹ペッコペコのペコちゃんなんだからねっ!」
いや、ここまで長引く原因の大半は、蜂野先生にあったんですが……
「そうは言ってもラーメンの仕込みは時間かかるんだよ」
蜂野先生、千里万里さんの説明を完全にスルーし、蜂の針を一振り。
「あ、せーのっ! どんっ!」
たちどころにラーメンスープと麺の出来上がりー
あまりのことに、千里万里さん、隆山先生、疲労子さんは呆然。
紗季未は「ああ、やっぱりそうなったね」との表情。よく分かってらっしゃいます。
とは言え、このままという訳にも行かず……
「千里万里さん。ラーメンスープと麺が出来た以上、進めないと……」
千里万里さん、我に返り、
「ああ、じゃあ、俺は決戦投票の準備を急いでするから、恒太朗君、観客のみなさんに説明を頼む」
僕はマイクを持って一言。
「みなさん、すみません。何だか魔法の力で、ラーメンが予定よりかなり早く出来上がりました」
そして、観客からツッコミの声。
「それで早く出来るんなら、初めからそうしろ」
ごもっとも。
次回で「料理勝負 ラーメン編」決着します。
多分、決着すると思う。
決着するんじゃないかな。
ま、ちょっと覚悟は……




