54 女王蜂様 どっちの〇理ショーをびっくりさせる
「先生。今度という今度はちゃんとラーメン作ってくださいよー」
僕のお願いに、蜂野先生、何故かドヤ顔。
「ふっ、ヘビーブターラーメンを『おいしい。おいしい』と言って、食べているような『ありがたいねえ』な新川君に本当に旨いラーメンを食べさせてあげるわ。わあっはっは」
「ヘビーブターラーメンを『おいしい。おいしい』と言って、食べてたのは、蜂野先生でしょう。でっ、どういうラーメンをつくるのですか?」
「それは……」
蜂野先生、隆山先生と並ぶと……
「♪あたしたちは~ 巨乳~ だからあ~」
もうやめて下さいよ。それ。紗季未と疲労子さんに怒られるの僕なんだから。
蜂野先生と隆山先生、胸を突き出すと、
「牛乳ラーメンっ!」
一瞬、紗季未からまた黒いオーラが噴出したような気がしたけど、僕は気付かないふりをして、千里万里さんに問いかける。
「千里万里さん。あんなこと言ってますが、『牛乳ラーメン』ってあるんですか?」
「あるさ」
千里万里さんは驚いた様子もない。
「ググってみ。普通にレシピ出てくるよ。まあ、乳乳亭では作ったことないけどな」
うーん。レシピはあるけど、作ったことはない…… いつものこととは言え、また、微妙な……
「♪牛乳ラーメンに必要なもの~ それは何~」
「♪それは~ それは~」
「♪ぎゅ~にゅ~」
蜂野先生と隆山先生は歌いながら、踊っている。
「♪それじゃあ~ 出して~ たくさんのぎゅ~にゅ~」
「♪あらあら~ 何言ってんの~ うちは普通のラーメン屋よ~そんなものある訳ないじゃ~ん~ 家族が飲む分しかないよ~」
「♪あはは~ そりゃ~ そ~だ~」
うーむ。ラーメン作りにまたも暗雲が……
◇◇◇
先生、どうするんですか? 牛乳ないのに「牛乳ラーメン」って、わっ!
「あ、せ~のっ、どんっ!」
蜂野先生は僕の問いかけを待たず、蜂の針を一振り。
ドドドンという音と共に、たくさんの牛乳缶が空から降って来た。
「どおお。文句あーる? 新川君? 北海道は根室振興局管内別海町の本場もんの牛乳よん。どっちの〇理ショーもびっくりよん」
どうしていちいちドヤ顔なんですか? いいですけど、これの代金は払ってるんでしょうね。
「しっつれいねー。何のためにアイドルや演歌歌手で稼いでると思ってんの。ちゃあんと振り込んでますう」
ふくれっ面の蜂野先生は、隆山先生と一緒に40リットルの牛乳缶から寸胴に牛乳を注ぎだす。
あんまり考えないで注いでいるような気もしなくもないけど、それは僕の気のせい……だと思いたい。
さて、こちらは紗季未と疲労子さんのペア。
一連の騒動を見ていた紗季未だが、はたと気が付く。
「あ、見てる場合じゃない。疲労子さん。こっちも作り始めないと」
「そっ、そうね。紗季未ちゃん」
「で、こっちは何を作ります?」
「こっちはあっちと違って、魔法が使える訳じゃないから、地道に、手元にある材料で作るしかないね。煮干しで出汁を取って……」
「にっ、煮干しっ! あっちは『牛乳』でこっちは『煮干し』!」
疲労子さんも一瞬、絶句し、チラリとご自分の胸を見たが、すぐに言った。
「いいのっ! 勝負はおいしい方が勝つんだからっ! ほらっ、作るよっ! 紗季未ちゃん」
「はっ、はい」
勝負の行方やいかに……