53 女王蜂様 手のひら返し(これはひどい)
そこにやって来たのは隆山先生。
ひょっとして蜂野先生を起こしてくれるのかな? と思った僕は大甘だった。
「あんらあ、めきみちゃん。寝ちゃってるの?」
「疲れたから、おねむなの」
「そう言えば疲れたねえ。一緒に寝ていい?」
「ウェルカムよん」
「わ~いっ!」
隆山先生、蜂野先生の布団に潜り込むと右手と左手、それぞれ握ると……
「一緒の布団で寝ようねぇ~っ、ねぇ~っ」
これ、母さんの時と同じパターンじゃないかあ~。
◇◇◇
続いて、現れたのはぷんすか状態の紗季未。
「こうちゃん。今度は何が起こったの?」
「怒らないでくださ~い。だって、隆山先生と蜂野先生が疲れたから寝るって」
「ふ~ん」
ちょっと考え込む紗季未。
「このまま行けば、私と疲労子さんの不戦勝になりそうだけど、それじゃ、散々巨乳自慢された気が晴れないわね~」
それもそうだけど、観客が暴動起こすよ。これじゃあ。
すると、紗季未はとことこと疲労子さんのところに向かうと、何やら耳打ち。
疲労子さんは仁王立ちのまま、ゆっくりと隆山先生と蜂野先生が寝ている布団に向かう。
◇◇◇
疲労子さんは大きく息を吸い込むと、布団に向かって一言。
「ふん。隆山の奴は、己がラーメンがあたしのそれに及ばないことを知ってやがるのさ。試合放棄だよ。あっはっは」
それを聞くや隆山先生、ガバッと起き出し、
「疲労子っ! この痴れ者がっ! 貴様にラーメンを語る資格はないっ!」
おおうっ! これは行けるか? と思った次の瞬間
「まだ、真夜中だよ。寝てましょう」
蜂野先生が隆山先生の左肩を掴んで、布団に引きずり込む。うぎゃあ。
◇◇◇
しかし、隆山先生、更にガバッと起き出し、
「起きるよっ! めきみちゃんっ! 貧乳ごときに負けてられるかっ!」
「え~っ、寝てようよー」
蜂野先生、まるっきりクズっぽいですよ。
「ええいっ!」
隆山先生、懐から何やらカードを取りだし、
「これでどうだあっ! 『拉麺美食倶楽部』ギョーザ無料券っ! しかもっ! 5枚っ!」
途端に飛び起きる蜂野先生。ええっ? ギョーザでそんなに反応するんですか?
「なによおっ! ギョーザを笑う者はギョーザに泣くのよっ! 『ギョーザの恋の物語』『東京 ギョーザ 資生堂パーラー』『地下鉄ギョーザ線浅草から渋谷まで』」
先生、それは「ギョーザ」ではなく「銀座」です。あと、ローカルネタはほどほどに……
「ええいっ! この際、新川君のツッコミはどうでもいいわっ! わっはっは、貧乳ごときにラーメンの神髄が分かってなるものかっ! わあっはっは」
蜂野先生、胸を張って高笑い。うーん。ここまでひどい手のひら返しもそうはないんじゃないかなあ。