51 女王蜂様 ミュージカルに出演する
「ラーメン屋……」
「それは高いところに作った棚にテレビ受像機を置いてあるところ……それも……見るからに古い……それは、実はデジタル化していなくて、アナログのままだけれど、気合で映ってるじゃないかと思えるくらいの古さ……それを一日中延々と流し続ける……」
先生っ! いくらなんでもラーメン屋さんディスり過ぎですと僕が言おうとした、その瞬間、千里万里さんがスポットライトの下、すっくと立ちあがる。
「そうだっ! 俺はっ!」
千里万里さんの行動に言葉が思わず引っ込んだ僕。そんなことには全く関係なく、千里万里さんは立ち上がったまま歌い始めた。
「♪毎日~毎日~毎日~毎日~っ! ラーメンを作り続けていた~っ! テレビの映像を見ながら~っ!」
続いて、隆山先生も立ち上がって、歌い始める。おおうっ!
「♪そして~、あなたは~、腰を痛めた~」
千里万里さんが歌で応える。
「♪今度は~っ! 毎日~毎日~っ! 安静の日々~っ! そんな時の心の支えは~」
千里万里さんと隆山先生、肩を組んで
「♪テ~レ~ビ~」
二人いったん離れて、千里万里さん、隆山先生に呼びかけ、
「♪おおっ! 治ったっ! 魔法で腰が……治ったっ! でも、俺は~っ、今度は~っ! ラーメン屋じゃなくて、テレビクルーになりたいっ! ぞ~っ! テレビが大好きになったんっだ~っ!」
隆山先生、千里万里さんに答えて、
「♪それは~っ! 素敵な夢ね~っ! あたしの夢は~っ、『美食倶楽部』を作りたい~。でも、それで……」
二人、また、肩を組んで……
「♪いいのかしら~?」
ここで急に音楽が急に明るいアップテンポに、そして……
スポットライトが蜂野先生に当たる。むうっ、最初からこれがやりたかったんですね。
「♪いいのよ~、いいのよ~。好きなことを~、好きなように~、やっていれば~」
最後は三人で肩を組んで、
「♪何とかなっちゃうもん~なんだからぁ~」
じゃんじゃん
そして、再び、辺り一面真っ暗に。観客たちはしばらく茫然としていたが、やがて、拍手と「ブラボー」の声。
更に拍手は盛大になり、「アンコール」「アンコール」という声が湧いてくる。
う~ん。みんな。ノリがいいなあ。
アンコールの声に応えて、隆山先生と蜂野先生が登場。また、辺り一面真っ暗に。二人だけにスポットライトが当たる。
周囲に手を振りながら、笑顔で歩いてきた二人は、横に並んで、胸を張って立つ。
「♪あたしたちは~」
「♪巨乳っ!」
胸を突き出す。
次に前方を指差すと
「♪あなたたちは~」
「♪貧乳っ!」
じゃんじゃん
辺り一面が真っ暗になると共に、またも拍手が……しかしっ!
暗闇の中で僕は左肩を砕かれんばかりの力で掴まれた。振り向くとそこには般若の形相をした紗季未が……
「こうちゃん。私、さっきもあの二人何とかしてって言ったよね……」
更に今度は右肩が砕かれんばかりの激痛が……
「おいっ! ヘタレDTっ! 料理勝負は一体どこに行ったんだっ!」
これまた激怒しておられる疲労子さん。
また、僕が怒られた。毎度のことながら理不尽な……




