44 女王蜂様 〇〇という単語にいきり立つ
相手の人たちは戸惑いながらも、普通にカードを並べて来た。
僕もそんなにカードゲームには詳しくはない。それでも、見たところ、相手の人たちは「ドラゴン」と「サーベルタイガー」を主戦力にして、それを召喚しやすいような形に持って行こうという意図が感じられた。
そして、蜂野先生はと言えば……
「新川く~ん。これ、あたしのところに『ババ』がないってことで、いいんだよね?」
「ババ抜きじゃありません」
「新川く~ん。ここに『7』って数字のあるカードを先に出すんだっけ?」
「7並べじゃありません」
「分かったっ! この5枚をさあ、『ロイヤルストレートハニーフラッシュッ』って言って出せば、勝ちなんでしょ?」
「ポーカーじゃありません。それに『ハニー』は要りません」
◇◇◇
それから、蜂野先生は長考に沈んだ。
「う~ん。なんっか、ピンと来ないのよねぇ~」
ピンと来るも来ないも分かっていないだけじゃあ……
「よーし、まあ、いいわ。出たもんから順に並べてっと、ターン終了っ!」
相手方の人たちは、いいのかなという感じで顔を見合わせる。
でも、カードゲームを続けないと、話が進まないと思い直したのか、カードをドローする。
「『サーベルタイガー』来ました。前方の『ビッグムース』を生贄に、召喚します」
「え? 生贄?」
蜂野先生の眼が光る。うわっ、すげえ嫌な予感。
「生贄って、このゲームで出来るの?」
「ええ。まあ」
相手方の人は親切に説明してくれる。
「カードにその記載があればですけど……」
「そう。生贄。生贄ね。むっふっふ~」
蜂野先生妖しい笑み。うーん。こっ怖い。
「サーベルタイガー」は流石に強力で、蜂野先生が前方に何考えずに配置した「ホブゴブリン」と「マジックユーザー」をあっさり倒した。
こんな無茶苦茶なプレイだが、何故か相手方の人のカードの引きが良く、今度は「大蛇」を生贄に「ドラゴン」を召喚した。
「ドラゴン」も強力で、蜂野先生の配置した「ファイター」2体を倒した。絶体絶命である。
にもかかわらず、蜂野先生は上機嫌である。鼻歌も歌っている。
「♪生贄。生贄。たっのしいなあ~」
うわあ。嫌な予感が加速する。
◇◇◇
相手方の人たちは、この状況でも、あくまで紳士的である。
「ターン終了です」
それを聞いた蜂野先生大張り切り。
「あたしのターンっ、ドローッ! 隣のヘタレ男子高校生を生贄っ!」
わあっ、やっぱりそんなことを考えていたのかあっ。
僕の後ろに巨大な丸太棒が出現。僕の体はそれに吸い付けられ、どこからともなく出て来た縄で縛られる。
「ギャーッ!」
「そんでもって、最強カード『女王蜂様』を召喚っ!」
そんなカードありませんっ! ないんだけど、相手方の人達も唖然として見ているだけ。
何なんですか。もう~っ!