43 女王蜂様 USSRカードを出す
「いや、カードゲームして、勝ったらどいてくれるって、先生、カード持ってるんですか?」
「しっつれいね。カードってこれでしょ?」
先生、それは学校の東門前のラーメン屋のポイントカードじゃないですか?
8回行ったら、ギョーザが一皿無料になるという……
「ちょっ、ちょっと間違えただけじゃない。見てなさいっ! カードなんか、たっくさん持ってんだからっ!」
それからの蜂野先生は、パニックになったドラ〇もんのごとく、ポケットからいろいろなカードを出したんだけど……
テ〇ーカードにポ〇タカード、ナナ〇カードに楽〇カード、UC〇カードにJR〇日本の〇イカ。
何でこっちの世界に来て2日目でそんなに持っているのか感心したが、カードゲームでは使えない。
「先生、先生。こういうのじゃなく、『トレーディングカード』ですよ」
「『トレーディングカード』ね。分かったわ」
蜂野先生。ゼイゼイ息をし、目が血走った状態だったけど、やがて、1枚のカードを出した。
「どっどお? これなら行けるでしょう?」
「おおっ!」
U・S・S・Rカードッ!
「これは凄いです。相当強力なカードですよ。先生」
「ふふん。そうでしょ」
先生、毎度お馴染みのドヤ顔。
「ただ…… すみません。カード名が『織田信長』になってるから、今、この人たちがやっている、ドラゴンが出てくるファンタジー系のゲームには使えません」
「なんなのよ。もおっ!」
◇◇◇
「あのお、僕たちの持ってるカードお貸ししましょうか?」
恐る恐る切り出すカードゲームをしていた男性二人。見たところ25歳くらいかな。ちゃんとしてそうな人たちみたい。
「ふっ、敵の情けは受けないわ」
いえ。格好つけてる場合じゃなくて、現実問題、勝負に使う『トレーディングカード』がないんですけど……
「あたしを誰だと思ってるの? 『女王蜂様』よん。あっ、せーのっ、どんっ!」
蜂野先生が蜂の針を一振りすれば、たちまちそれらしきカードデッキが一式。
「ふふふ。どうよ」
そう出来るなら、初めからそうして下さいよー。
◇◇◇
蜂野先生がこの調子なので、相手方はさっきまでゲームしてた男性二人。こちらは蜂野先生に僕の2対2の対戦という変則的な対戦となった。
相手の男性二人はまだ恐縮している。
「あのお、僕たち、カードゲームしたら、マンガやアニメのようにモンスターたちが出てくるようになって、つい嬉しくなって、真夜中から広い交差点でやっちゃったんです」
「僕たちも悪いということは分かっているので、すぐどきたいんですが……」
それに対する蜂野先生の答え。
「そう。あくまでどいてほしければ、あなたたちを倒せと言うのね。よろしい。あたしも『女王蜂』。受けて立ちましょう」
先生、会話が噛み合っていません。




