39 女王蜂様 将軍様より偉いと豪語する
「おうおうおう。可哀そうに。誰があなたたちをこんなクタクタになるまで、ダンスさせたのかしらねぇ~」
それは蜂野先生あなたです。
「まあまあまあ。汚い上に、散らかっている、古~い家だけど、遠慮せずに上がって」
だから、そこは先生の家ではなく、僕の家です。
「ごめん」
「ごめん」
「ごめん」
三人の欠侘苛鰻さんは僕の家に一斉に上がった。
◇◇◇
「ちょっと待ってねえ~。布団敷いちゃうから。ああ~っ、学校なんてもんはねえ~。サボっちゃえばいんだよ! どうせ、昨日っから『働き方改革』とかで、まともに授業なんかやっちゃいないんだからっ!」
蜂野先生は手慣れた手つきで押し入れから布団を出し、敷き始めた。とても、昨晩、この家に来たとは思えない堂々とした態度で……
ん? よくよく考えてみると、学校サボっちゃえばいいって、この人たちに学校に送ってもらうんじゃなかったっけ?
それに、学校をああした張本人が蜂野先生……これはもう今更か……
◇◇◇
三人の欠侘苛鰻さんは特に着替えることもなく、将軍様の恰好のままに床に伏した。
「まあ、学校なんざ気が向いたら来りゃいいよ。ゆっくり休んで静養してね。あ、冷蔵庫の中のもの勝手に食べていいから」
だから、ここは蜂野先生の家じゃありません。僕の家です……が、まあ、いいか。
「じゃあ、あたしら学校へ行くか」
蜂野先生がそう言うと、三人の欠侘苛鰻さんはむっくり起き上がり、蜂野先生に向かって手を振った。
ここで流れるナレーション。
「三人の大将軍宗宗は学校に向かう蜂野めきみ先生にいつまでも名残惜しそうに手を振っていたのだった」
♪じゃ~ん じゃあああん
「先生。さすがにこれは変じゃないですか。普通、ラストは町娘さんとかが名残を惜しんで、将軍様に手を振るもんでしょう。何で将軍様が名残を惜しんで娘さんに手を振るんですか?」
「しょうがないでしょう。だって、女王様の方が将軍様より偉いんだからさあ~」
「うわ。また、そんなこと言って~。どこからか苦情がきますよ、本当に」
◇◇◇
「先生。それで馬に乗せてもらって、学校に行くプランはいろいろあってパーになりましたが、結局、歩いて行くんですか?」
僕の問いに、蜂野先生。もう、これで何度目かというドヤ顔。
「ふっふ~ん。覚えときなさいっ! 真の知将たるもの、二の手三の手は用意してあるものなのよん」
「何か嫌な予感もするんですが、その『二の手』とは?」
「ほうら、もう、そこまで来てるよん」
キュラキュラキュラキュラ
キャタピラが地面を擦る音が聞こえてきた。どうやら、今回も普通の「お迎え」ではないようだ。




