37 女王蜂様 お迎えを呼ぶ
父さん母さん、それに吉田と小林を乗せた完全自動運転車輛は、プロサッカースタジアムと化した蜂幡運動公園に向けて出発した。
蛍川かかしのばあちゃんと蜂幡ハニーちゃんの京太朗兄ちゃんは大人しく寝ることにしたようだ。
さて、僕たちはどうするか。僕は紗季未と顔を見合わせた。
普通なら学校に行くことが当たり前だけど、昨日の今日で学校がどうなっているか想像もつかない。
僕たちは蜂野先生の様子を伺った。
◇◇◇
「ふっふっふっふあああああ~」
蜂野先生は顎が外れるんじゃないかってくらい大きな欠伸をした。
「さあて、じゃあ、あたしの宮殿。いやもとい、学校にいきますかねぇー」
先生。今、「宮殿」って言いましたよね。むっちゃ嫌な予感がするんですけど
「先生。僕たちと一緒に歩いて学校行きます?」
「ふっ、ふーん」
蜂野先生、思いっきりドヤ顔。うわっ、なんか腹立つ。
「実はお迎えを頼んであるのよねん」
「お迎え?」
「そろそろ来るんじゃないかなー? ほーら、来た」
「えっ?」
パカラッパカラッパカラッパカラッ
パカラッパカラッパカラッパカラッ
パカラッパカラッパカラッパカラッ
「えっ? えっ?」
そして、僕の目の前に現れたのは……
◇◇◇
「大暴れ大将軍っ!」
「大暴れ大将軍っ!」
「大暴れ大将軍っ!」
そして、流れるBGM。
♪じゃじゃじゃーん じゃんじゃんじゃんじゃーん
紗季未は絶句。
しかし、僕は突っ込まねばならない!
「先生っ!一体、何なんですかっ? これはっ?」
◇◇◇
「やあねえ。新川君も今時の高校生なら、朝4時からの『グーテンモルゲン時代劇』くらい見なさいよお。おっくれてるぅー」
ツッコミどころは満載だ。明らかに朝4時からの「グーテンモルゲン時代劇」を視聴する現役高校生はマイノリティであろう。
そして、人のことを「おっくれてるぅー」と揶揄すること自体が昭和の香りである。
しかしっ! しかしっ! そこを突っ込んでいては、また、この話進まないぞ。僕の脳内を警戒警報が鳴り響く。
次のツッコミはこれしかあるまい。
「先生っ! この人たちは一体っ?」
◇◇◇
「しっつれいねぇ。時代劇俳優の欠侘苛鰻さんじゃないのぉ。新川君、そんなこと言ってると全世界35億の時代劇ファンに張り倒されるわよ」
(いっ、いかん)僕は辛うじて踏みとどまる。小ネタに突っ込むと、また脱線しまくるぞ。
「いえ。僕も欠侘苛鰻さんは知ってますが。何故、その欠侘苛鰻さんが3人いるんですか?」
「ふっふっふっ。あなたのクラスの副担任を舐めてはいけないわね」
蜂野先生、またもドヤ顔。
そして、きれいに白馬に騎乗している3人の欠侘苛鰻さんを指差すと、
「左から順に『欠侘苛鰻1号』『ファースト欠侘苛鰻』『欠侘苛鰻ジ・オリジン』、ちゃんと別人よん」
どうしてそうやって、いちいち小ネタを挟みたがるんですか?