34 女王蜂様 バスタオルを落とす
風呂上りにバスタオル1枚で登場の蜂幡ハニーちゃんに、僕と吉田、小林の目は釘付け。思わず吉田の僕の胸倉をつかんでいた手も緩む。
ここで蜂野先生。満面の笑みで蜂の針を一振り。すると……
ア~ン❤の効果音と共に蜂幡ハニーちゃんのバスタオルがはらり。わーっ!
思わず目をそらす僕と吉田、小林。中身はヘタレ男子高校生トリオ。
一方、蜂幡ハニーちゃんはいたって冷静。静かに腰を落として、バスタオルを拾い直して……
その後に爆弾発言。
「やだなあ。恒太朗。目をそらさないでよ。先週、一緒にお風呂入ったばかりじゃない」
◇◇◇
一旦緩んでいた吉田の僕の胸倉をつかむ手により一層力が入る。
「新川あ。貴様っ! 北原に、女王蜂様に、あの女の子に、三股とは何事だーっ! この重犯罪人っ!」
ま、待て、吉田っ! あれの中の人は、お前も知ってる僕の兄ちゃん、京太朗兄ちゃんだ。先週、一緒に風呂入ったっていうのは、まだ男体だった兄ちゃんと一緒に蜂幡温泉センターに行ったってだけの話だーっ!
完全に胸倉を絞められて僕にそんなことを言える筈もなく、僕は助けを求めるべく、小林の方を見た。すると小林は……
腰を落とすとゆっくりとカバンを開け、何やら細長いものをするすると取り出した。まっ、待て、何でそんな細長いものがそのカバンに入っていた? お前のカバンはドラ◯もんの取り寄せバッグか?
やがて、小林はカバンからその物体を完全に取り出した。あれは、あれこそは……青龍偃月刀っ! 三国志の関羽の武器だっ!
そうか。やっと分かった。桃園の誓いで。僕が劉備で、小林が関羽で、吉田が張飛だったんだね。
とか言ってる間もなく、小林は青龍偃月刀の刃を僕の首に向けた。
「新川あ。打ち首にしてくれるわっ! 辞世の句を詠めっ!」
待てっ! 小林っ! 日本史と中国史がごちゃ混ぜになってるぞっ!
◇◇◇
そんなツッコミを小林は完全にスルーし、今度はカバンから砥石を取り出し、青龍偃月刀の刃を研ぎ始めた。
「三股の重犯罪人とは言え、かつては義兄弟だった男。せめて苦しまないよう殺してあげよう」
シャーコシャーコ
刃を研ぐ音が我が家の玄関に響き渡る。
◇◇◇
ちらりと伺うと、蜂野先生は大爆笑状態。うわっ、本当に趣味悪っ!
「かくなる上は、もう一人呼ぶしかないわね。さっちゃ~ん。出ておいで~」
「は~いっ!」
例の音楽の前奏が流れると共に18歳になった母さんがレオタードに、リボンを持って登場!
「♪サッチ、サッチ、びゅーてほーサッチ」
またも吉田の胸倉を掴む手が緩み、小林の刃を研ぐ手が止まる。
「あの~、あなたは新川とはどういう関係で?」
吉田の質問に母さん笑顔で回答。
「こうちゃんはねえ。(小さい頃は)ずっと同じ布団で寝てー。(小さい頃は)よくあたしのおっぱい吸ってたの」
「にっ、新川あ。四股とはっ! この人の皮をかぶった性獣があっ!」
もう、いい加減、気を失うんじゃないかと思う程、胸倉を絞める吉田。
もう、どう収拾つけるの? この状況?