33 女王蜂様 突如 女神様キャラになる
やがて、カっと目を見開いた紗季未は、吉田と小林に駆け寄って行き、二人の手を取った。
「吉田君っ! 小林君っ! 蜂幡フットボールクラブがビッグクラブになって、弟たちが帰って来るなら、私も出来るだけ協力したいっ! 私に出来そうなことは言ってっ!」
いつもの穏やかな感じと違う紗季未に当惑する吉田と小林。
そこに現れたのは!
「ほほほ。まさに青春! 麗しい光景ですわね」
先生、いつもと口調が違いますよ。また、何か企んでいるのではないですか?
◇◇◇
「えっ? こっ、この人は?」
紗季未と握っていた手を離し、蜂野先生に見惚れる吉田と小林。無理もない。黙って立っていれば、すれ違う人がみんな振り返るレベルのナイスバディ美人である。
だが、中身は……いや、今は言うまい。
「私? 私は蜂野めきみ。人は私のことを『女王蜂様』と呼ぶわ」
「『女王蜂様』!?」
「あ、あの僕たちを!蜂幡フットボールクラブの社長とGMにしてくれた……あっ、ありがとうございます」
慌てて頭を下げる吉田と小林。
「ほほほ。そうなれたのは貴方たち自身の『思い』。私はほんのちょっと後押しをしただけですわ」
何その、女神様キャラ?
◇◇◇
「吉田君。小林君。私は普段からここにいますよ。何か困ったことがあったら、いつでも相談に来なさいね」
「はい? えーと……」
あ……これは!
小林がおずおずと口を開く。
「そ、それで、『女王蜂様』は新川とどういう関係で?」
勇気を振り絞って、聞きやがったな。この思春期ど真ん中男子高校生っ!
「ほほほ。そのような恥ずかしいことは『をとめ』である私の口からは申し上げられませんわ」
「!」
ギャーッ、また、始めやがったな。誰が「をとめ」だーっ?
◇◇◇
次の瞬間、電光石火の早さで吉田が僕の胸倉を掴んでいた。
「新川あっ! 貴様とは生まれる日は別でも死する日は一緒と誓いあった義兄弟の仲だよなっ! このリア充っ! 裏切り者っ!」
いつお前と「桃園の誓い」をしたよ? くっ、苦しいっ、離せっ!
「ほほほ。吉田君。慌ててはいけません。新川君はね。ゆうべ、そこにいる北原さんとも『した』のですよ。『した』のです」
紗季未は真っ赤になって、下を向き、固まってしまった。
それを見た吉田と小林の眼の色は赤に変わっていく。
はい、「した」のは事実です。キスを。でも、君たち、絶対、それ以上のことを想像してるよね。
更にこの修羅場に参戦してきたのはっ!
◇◇◇
「何の騒ぎー? 騒々しいね」
朝風呂に入り終え、バスタオルを体に巻いただけの恰好で玄関に出て来た蜂幡ハニーちゃん。中の人は僕の兄ちゃん。
何でこのタイミングで出てくるんだよーっ!