27 女王蜂様 母親に息子の◯◯◯◯◯◯◯を鑑賞させる
「よく聞こえなかった。もう1回言って」
「ぼっ、僕は体型とかそういうものには関係なくっ! 紗季未が好きなんですっ!」
紗季未は、僕を上目遣いに見つめ直すと言った。
「証拠を見せて……」
ギクリとした。15年一緒に生きてきて、こんな目は見たことがない。
思い知らされた。幼馴染と言ったって、女なんだと……
◇◇◇
ええいっ、ままよっ!
僕は思い切り自分の顔を紗季未に近づけると、僅かに自分の唇を紗季未の唇に触れさせた。
時間にして1秒もたっていない。一瞬だけの接触。
◇◇◇
紗季未はしばらく茫然としていたが、やがて……
「うふ。うふ。うふふふふ」
笑い出した。
そして、目を伏せると言った。
「ありがとう。こうちゃん。私もこうちゃんが好きだよ」
言い終わると紗季未の顔は真っ赤になった。
僕の顔も真っ赤だったと思う。
「もう、私、家に帰るね。明日も一緒に学校行こうね」
僕は黙って頷いた。
紗季未が帰ると、僕は全身の力が抜け、その場に座り込んだ。
今日は疲れた。本当に疲れた。もう、寝よう。すぐに寝よう。もう、蜂野先生と母さんが百合だろうがもうどうでもいい。二人で何かしたところで、どっちかが妊娠することもないだろうし……
僕は重い足取りで二階の自分の部屋に向かい、ベッドに横たわると、そのまますぐ眠りに落ちた。
長かった。実に長かった一日が今度こそ本当に終わった……
◇◇◇ 舞台裏 ◇◇◇
「ほっほっほっ、めきみちゃん。世に息子を溺愛する母親は、星の数ほどいるでしょうが、息子のファーストキスをリアルタイムで鑑賞した母親はこのあたしくらいだわ」
「よかったわねん。さっちゃん。あたしの『ズマプラXディスプレイ』は高性能だからねん。唇の皺までバッチリ見えたでしょ?」
「見えた見えた。でも、めきみちゃん、ありがとう。あたしの息子ときた日にゃ、生意気にも口ばっか達者になりやがった癖に、てんでヘタレなんだから。これで、紗季未ちゃんがお嫁に来てくれれば、あたしの方が大歓迎だよ」
「さっちゃん。あたしも目的があって、この世界に来た訳で。その最終目的のために北原さんはキーパーソンになるのよ」
「え? めきみちゃんがこっちへ来た最終目的って、オタク趣味を満喫することでしょう?」
「そのとーりっ! って、違-うっ! いや、それもあるんだけど、他にもあるのよ最終目的が」
「笑いを取ること?」
「そのとーりっ! って、違-うっ! この辺にしとこうね、話が全然進まないじゃないっ!」
「第28部分は真面目に『最終目的』について語る……かもしれません」




