25 女王蜂様 妖しいラノベを出版する
右手で蜂の針を一振りした蜂野先生が左手に持っているのは……
本?
しかも、これはラノベ?
うっ……
「さあ、新川君のだ~い好きなラノベだよ~。題名からよ~く見なさい~」
催眠術のような蜂野先生の声に誘われ、思わずラノベの表紙を見入る僕。そこには……
「18歳になった僕の母親と22歳のナイスバディ美人クラス副担任が百合になった件」
ぐっ、ぐわあああ。なっ何てことしやがるっ!。
しかも、しかもだっ! よりによって絵師は「銀河最強の神絵師」といわれるグラーヴェル先生。僕の好みの「青春ど真ん中ストライク」っ!
「さあっ、新川君。このラノベを読みなさい。読むのです」
追い打ちをかけるかのような蜂野先生の声に、僕はフラフラと前に歩き出した……
◇◇◇
「いだいっ、いだいっ、いった~いっ!」
僕を正気に戻したのは、後ろから僕の左の耳たぶを思い切り引っ張った紗季未。
正気に戻してくれるのは有り難いけど、もっと優しく……いえ、何でもありません。
「やるわね。隣の家の幼馴染」
「ふふん。めきみちゃん。紗季未ちゃんは大人しそうに見えて結構やるのよ。だけど、我が家の嫁になるには、もうちょっと試練を与えないとね。ふふふ」
え? 母さん。何で紗季未がうちに嫁にくるための試練になってるの?
◇◇◇
「次はあたしのターンッ! おとーさーん。今日はあたし、めきみちゃんと二人で寝るから、東側の空いている部屋で一人で寝てーっ」
「私は了解した」
母さんの言葉に、一言だけ発し、リビングを退出して行く父さん。
「ふっふっふっ、これで邪魔者はいなくなったわ」
ちょっと母さん、父さんの扱い酷過ぎない。
◇◇◇
「そういう訳で、今晩、母さんはめきみちゃんと二人で寝ま~す。こうちゃんも混ざる?」
しれっととんでもないことを言う母さん。だが……
「僕は遠慮しときます」
紗季未の鋭い視線のおかげで危機(?)を何とか回避(?)。
「それは残念。ねぇ、めきみちゃん、二人で一緒に一つのお布団で寝ようか?」
「さぁ~すがは、さっちゃん。あたしはいつでもウェルカムよん」
二人で両手を繋いで、こっちを向くと
「一緒の布団で寝ようねぇ~っ、ねぇ~っ」
すると、いつの間にかちゃぶ台の上に置かれていたラノベ本「18歳になった僕の母親と22歳のナイスバディ美人クラス副担任が百合になった件」が妖しいピンクの光を帯びて、輝きだした。
「ふっふっふっ、こうちゃん。そのラノベを読んで、あたしたちに混ざるなら今のうちだよ」
母さん、紗季未がうちに嫁にくるための試練が、何でいつの間にか僕の試練になっているのっ?
だっ、だけど、何て厳しい攻撃だ。思わずラノベを手に取り、足が前にフラフラと……




