22 女王蜂様 新体操に拍手する
ひとしきり母さんが新体操を演じると、蜂野先生と紗季未は万雷の拍手。
「さっちゃ~ん。カッワイイッ!」
「うふん。ありがとう。めきみちゃん」
「おばさん。凄いです。わたしっ、感動しましたっ!」
「やあねぇ。紗季未ちゃ~ん。あたしねえ、18歳になったんだからあ、『お・ね・え・さ・ん』と呼んでっ!」
「はいっ、おねえさん」
「う~ん。いい娘ねぇ~」
うむむむ。くやしいが確かに可愛い。
49歳のまま、レオタード来た日には、いとう〇さこの芸の丸パクリになってしまうけど、18歳に若返っているので、確かに可愛い。
そして、何だか心惹かれる。僕はまごうことなき父さんの子らしい。
だが、ここでぐぐっと食い止める。そう、簡単に若い可愛いお母さんトレンドに乗ってはいけないっ!
◇◇◇
「だけど、何で母さんがレオタード着て、新体操やってる訳?」
「そ・れ・は・ね。こうちゃん。お母さん。マネージャーになったの」
はあ?ええと、何やら、感覚が宇宙空間。ここは少しずつ交通整理して……
「マネージャーって、何の?」
「それはもちろんお父さんのよ~」
わっ、よく見たら部屋の隅に背広を着た外国人になった父さんがいるし……
相変わらず母さんと比べると、存在感薄!
「目指しているのはトータルフットボールだ」
「わっ、父さんがいきなりしゃべった。何なのこれ?」
「お父さんねぇ、コンブチャ・オヒムになって、蜂幡フットボールクラブの監督になったの」
「アイデアのない人間もサッカーはできるが、サッカー選手にはなれない」
「わっ、またしゃべった」
「めきみちゃんが蜂幡市全体に魔法をかけたら、小中学校でプロサッカー選手になる子がたくさん出たの。それで、お父さんがプロフットボールクラブの監督になったの」
いえ、良いんですけど、父さん、確か蜂幡高校サッカー部の補欠じゃなかったっけ。いや、むしろ、母さんの方が蜂幡高校の女子サッカー部のキャプテンで、蜂幡高校の一人クラッシュギャルズと言われて恐れられてたって……
それで、最後のインターハイの前に男子サッカー部と女子サッカー部で壮行試合やって、女子サッカー部が6-0で勝ったという話じゃなかったっけ。母さんは5得点1アシストで、父さんは最後まで出番がなかったって……
まあ、いいんですけど……
「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に、肉離れをしますか?」
「それで、お母さんがそのフットボールクラブのマネージャー」
「で、そのマネージャーさんが何で新体操のカッコな訳?」