20 女王蜂様 八十歳を完全変態させる
「わしが、このわしが、ハートブレイクなこのわしが『メガ猫ね~さん』になる?」
徳造さん。大コーフン。顔は真っ赤。大丈夫かな? 血管切れないかな?
「そう。そのためには仕事を一つやってもらう」
淡々と続ける蜂野先生。
「どおりやああああ~」
いきなり、丹前を脱ぎ、深紅のふんどし一丁になる徳造さん。
はえー、筋肉質のいい体してるわ。若い頃は野球以外のスポーツなんでもこなしたって噂は本当らしい。いよっ、蜂幡の若大将っ!
「わしも今年で蜂十歳っ! (誤字報告不要です)。『メガ猫ね~さん』になれるなら、なんでもやってやるわい。蜂よぉ~」
ここでBGM。「♬日本男児の生きざまは~ 蜂十過ぎて~ 深紅のふんどし~」
「惜しい。実に惜しい。見事な筋肉ね。しかし、残念ながら、BLやるには、Lはともかく、Bの方が大幅に年齢オーバーね。では、仕事の内容はっ!」
蜂野先生はここでいったん溜めて、
「『ジ・エンカーズ』のマネージャーをやってもらうっ!」
一瞬、ポカンとする徳造さん。だが、すぐに真剣な顔に戻り、
「『アイドルの道は修羅の道。マネージャーの道はけもの道。だけど、あたしはこの芸能界で雄々しく生きるっ! 変身っ! メガ猫チェンジッ!』」
「徳造さん。先走り過ぎ。それにノリが良すぎ」
◇◇◇
「かくて、徳造さんは『ジ・エンカーズ』のマネージャーになったのです」
「ジ・エンカーズ」の前でペコリと頭を下げる蜂野先生。
「よかったわ~」
「全蜂幡が泣いたわ」
「徳造さんがマネージャーやってくれるなんて、夢みたい~」
「こりゃあ、張り切り甲斐があるわ」
口々に喜ぶ「ジ・エンカーズ」の面々。
「そしてっ、マネージャー『メガ猫ね~さん』に変身した徳造さんはこうなりましたっ!」
ジャンという効果音と共にディスプレイに表示された徳造さんはっ!
上から順にですね。セミロングのブラウンの髪、当然、その上には白い猫耳。面長の白い顔に赤く太い縁のメガネ。スレンダーボディに緑色のスーツ。下には足首まである同色のスカート。足にはダークブラウンのヒール。チャームポイントは白くて細長いしっぽ。これを引っ張られると激怒するという設定。
これが「完全変態」もとい「完全変身」の「メガ猫ね~さん」だっ!
「え~っ、これが徳造さんっ?」
「随分とまあ、可愛くなっちゃって」
「いいじゃん。いいじゃん」
「こりゃあ、可愛がり甲斐があるわ」
両手を前に突き出し、わきわきさせるうちのばあちゃんこと蛍川かかし。
ばあちゃん、それ。セクハラ。いや、逆セクハラ? あれ? どっちだろう?




