表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から来た女王蜂様は働き方改革を断行します  作者: 水渕成分


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/129

127 女王蜂様 ご先代様 「ドナドナ」

 三俣(みつまた)はおもむろにかけている眼鏡の位置を直すと、次の言葉を絞り出した。

「行き先は中鳥島(なかのとりしま)です。先生が『分封(ぶんぽう)』すると言ったところです」


 蜂野先生、三十秒くらい鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたけど、やがて、右手の拳で左手のひらをポンと打った。

「ああ、ああ、そんな話もあったわねん」


 三俣(みつまた)はまたも大きく前方につんのめった。でも、さっきよりはつんのめり方が小さいぞ。頑張れっ! 三俣(みつまた)っ!


「分かっていただけましたか。先生。さあ、一緒に中鳥島(なかのとりしま)に行きましょう」


「あんよいたーい。歩きたくなーい」


 三俣(みつまた)はは一瞬下を向いたが、やがて、不敵な笑みと共に顔を上げた。

「ふっふっふ、そう来ると思って、用意してあります」


 三俣(みつまた)が指差した先には座布団が敷かれたリヤカーがあった。


 ◇◇◇


 かくて蜂野先生はリヤカーに乗り、それを三俣(みつまた)が引っ張るという状況になった。


 何だこれは? 「ドナドナ」か? 乗っているのは「売られる子牛」ではなく「女王蜂様」だが。


「ねー、眼鏡っ()ちゃーん。何か飲みたーい」


「はいどうぞ。水です」


「気が利かないわねん。こういう時は酒よ。酒! 偉い人も言ったでしょ。『飲みたくなったらお酒』って」


「知りません。お酒ならですね。先に行ってる『ドラゴン酒造中鳥島(なかのとりしま)営業所』の獣人さんたちがヤシの実使って果実酒作るって言ってましたよ」


「ふーん。しょうがないわねん。それで我慢してやるか」


 そんな会話をしながらも、蜂野先生を乗せたリヤカーは中鳥島(なかのとりしま)につながっている大穴に近づいて行く。


 それと共にトラックが余裕で通れるほど大きかった穴がだんだんと小さくなっていく。


 僕と紗季未(さきみ)は顔を見合わせる。今度こそっ、今度こそっ、「分封(ぶんぽう)」が終わろうとしているんだ。


 ◇◇◇


 蜂野先生を乗せたリヤカーが穴の前まで着いた時、もう穴の大きさは人一人が通れるくらいになった。


 蜂野先生は最後に僕たちの方を振り向くと一言。

「じゃあねえん。バッハハーイ」


 軽! 最後の言葉がそれですかっ?


 リアカーを引っ張っていた三俣(みつまた)は最後に蜂幡市(この町)に残る僕たちに向かって手を振った。


 だけど僕と目が合ったとたん、あっかんべーをした。


 うーん。これはされても仕方がないか。やむを得ないとは言え、いろいろ傷つけちゃったからなあ。


 そしてとうとう蜂野先生を乗せたリヤカーが中鳥島(なかのとりしま)につながった穴はきれいさっぱりなくなった。


 残った僕たちはしばらく呆然としていたが、やがて、何人かかつて穴があったところに行き、行ったり来たりした。


 やっぱり中鳥島(なかのとりしま)に繋がった穴はもうないようだ。


 つまり残った僕たちはもう中鳥島(あっち)には行けない。


「本当に『分封(ぶんぽう)』しちゃったんだね」

 紗季未(さきみ)がポツリと言った。

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リアカーに載せられる先代女王様……なんてシュール!!(゜Д゜;) でも蜂野センセっぽい!!(ぇ
[一言] リヤカー 昔を思い出し、ものすごくツボにハマってます (子供ころに田舎で乗って遊んだのです!分蜂ではありません!) もうすぐ終わりなのですねぇ。 ちょっとさみしいのです
[良い点] 完結済みかどうかをつい確認してしまった(^^; ドナドナ ―完―  ←そんなわけないか! [一言] 今年もよろしくお願いします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ