125 女王蜂様 ご先代様 助手に丸投げ
ウオオオオオーッ
たちどころに起こる大歓声。
そりゃそうだよね。一大決心して「分封」についていくと決めたのに、肝心の蜂野先生がフラフラしてるし。「分封」組は不安になってたところ。
それがどうよ。蜂野先生が空けた大穴の先の光景は緑の大森林。それにくっきりとした海と空の青。
まるで蜂野先生と一緒に巣立つメンバーを祝福しているかのよう。
またちょっと蜂幡市に残ることを少し後悔したかも。
「先生っ! もう寝ないでくださいねっ! 『分封』が終わるまで、寝ちゃ駄目ですよっ!」
「ふあああ~、分かっているわよん。北原さん」
うん。そこまで後悔するほどのこともないかも。
紗季未と蜂野先生の会話を聞いて、僕は思い直した。
◇◇◇
「うーん」
穴から中鳥島をながめた三俣が言う。
「木の生えていない広場もあるけど、そんなに広くないみたい。三台のトラックから先に入って、奥にどんどん詰めて行ってもらいましょう。いいですか? 蜂野先生」
「よきにはからえ。眼鏡っ娘ちゃん」
三俣に丸投げですね。先生。
当の三俣は特に気にする様子もなく、指示を出した。
「では、三台のトラックから中鳥島に入ってください。蜂幡高専の人たちはトラックと一緒に入ってくださいね」
グオオオオン
トラックのエンジンがかかり、ゆっくりと穴をくぐりぬけて行く。
蜂幡高専の連中は蜂幡市に残る僕たちに手を振りながら、穴を通って行く。
みんな笑顔だ。きっとワクワクしてるんだろうな。
◇◇◇
続いて「農場物語」の女の子たちが入って行く。中鳥島に行く子と蜂幡市に残る子に分かれたみたいだ。
お互いに手を振り合っている。でも、やっぱり中鳥島に行く子の方が元気そうだなあ。うーん。
そして、漁師に転職することにした蜂幡FCと蜂幡クインビーズの一部メンバー。リアカーにたくさんの釣り道具の他に投網や小さな舟まで積んでる。張り切ってるなあ。
「回転寿司」の一部メンバーが続く。調理道具、食器、調味料の他に何台か冷蔵庫まで運んでいる。電気が使えることが分かったからだろうなあ。
残る仲間に手を振りながら、「中鳥島の海、面白い魚がいそうだなあ」とか言ってる。
「『回転寿司』の方、もう全員が中鳥島に行きましたかー? 蜂幡市に残っている人はいませんかー? 大丈夫ですかー? 大丈夫ですねー? では、次は……」
仕切っているのは三俣だ。うーん。僕よりよっぽど優秀な助手だよね。悔しいくらい生き生きしてるなあ。
え? 蜂野先生? 先生は……
「先生っ! 寝ないでくださいねっ! 本当にっ、寝ないでくださいねっ! ここで寝られたら三俣の頑張りがぶち壊しですからねっ! 今、寝てませんでしたっ?」
「うーんむにゃむにゃ。寝てないわよん。眼鏡っ娘ちゃん。あと五分だけー」
「私は三俣じゃありませんっ! 北原紗季未ですっ!」