124 女王蜂様 ご先代様 全員をズッコケさせる
たんまりとビールを浴びせられた蜂野先生は舌を出して、口の周りをペロリ。
そして一言。
「旨い!」
ビールかけ隊、危うくずっこけそうになるも持ちこたえる。
いい加減蜂野先生慣れしてきたのと紗季未の魔法がかかっていたことがあるにしろ、偉い! よく持ちこたえた。
そして、ビールかけ隊はビール瓶を足元に置くと一斉に頭を下げて……
「蜂野先生っ! おはようございますっ!」
蜂野先生、ビールがかかった頭をボリボリ掻いて……
「あ~、おはよ~、ところでさ~」
「?」
「今何時~?」
ビールかけ隊、またもずっこけそうになるも持ちこたえる。うむ。偉いぞ。
そこに紗季未が颯爽と登場。
「蜂野先生」
「あ~、北原さん、今何時~?」
「現在の時刻は午後一時を少し回ったところです」
「あ~そ~、よく寝たわ~、後さ~」
「?」
「何でみんなこんなに集まってんのん?」
ずずすずずとーん
さすがにみんなこれには耐えられなかった。全員がズッコケた。もちろん、僕も紗季未も。
◇◇◇
「蜂野先生が今日の正午から『分封』やるって言ったからでしょう。もう予定時刻一時間以上過ぎてるけど……」
「ふっ、ふああああ~」
紗季未のツッコミに、蜂野先生大あくび。
「まさか先生、「分封」自体がギャグというオチでは?」
「しっつれいね。新川君。種族の繁栄は生物としての宿命よん。それをないがしろにしてはいけないわん」
ないがしろにしてるのは先生の方でしょ。
◇◇◇
「まあ、いいわん。あたしは寛大な女王蜂様だから怠惰な新川君を許してあげましょう」
「どこをどう叩いたらそういう理屈になるんですか?」
「新川君。じゃあ助手としてみんなを中鳥島に誘導して。あたしについてくるんでしょ?」
「先生、僕は紗季未の助手だから蜂幡市に残りますよ。中鳥島には行きません」
「へっ?」
蜂野先生、ドン引き。
「って、何でそこでドン引きするんですか?」
「いや、てっきり新川君はあたしの金魚のフンで、イソギンチャクかと思ってたわん」
「先生、それを言うなら腰巾着って、そういうふうに思ってたんですかー」
「しょうがないわねん。おーい、眼鏡っ娘ちゃーんっ!」
「眼鏡っ娘じゃなくて、マリ・キウリですっ!」
間髪を入れずに返す三俣。なんだかんだでいいコンビかも。
「眼鏡っ娘ちゃん。あなたが新しいあたしの助手ねん。はい。みんなを中鳥島に誘導してん」
「眼鏡っ娘じゃなくて、いえ、そもそも誘導するったって、どうすればいいんですかっ?」
「あ、そういや、扉を開くの忘れてたわん。あ、せーのっ! どんっ!」
蜂野先生が蜂の針を振ると空間に大きな穴が開いた。
そして、向こう側に見えるのは未開拓の大森林と奥に広がる青い海っ! 中鳥島だっ!