表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/129

122 女王蜂様 新しい方は不敵に笑う

 三俣(みつまた)あー。なんつーキラキラした瞳で真っ直ぐこっちの目を見つめてくれるんだー。


 そんなことされたら心が動く。いや、動かないわけがないじゃないかっ!


 だけど……



 確かに中鳥島(なかのとりしま)での生活は思ったより不自由はなさそうだし、絶対に錬金術アルケミー技能(スキル)が上がるような発見もあるだろうね。そして、何より……


 

 「ヘタレDT」を十六年以上やってきたこの僕に、女の子からの勇気あるお誘いを断るのはキツイ。しかも、二回目の勇気あるお誘い。「もったいないお化け」が出そうだ。


 だけど……



「ごめん。誘ってもらったのは凄く嬉しいけど」



「…… そう」

 それだけ言うと三俣(みつまた)はプイと横を向いた。


 何と言っていいんだろう。と言うか神様。この僕に十五年以上も「モテない」「モテてー」「モテない」「モテてー」と言わせておいて、何で来る時は二ついっぺんに寄越すんですかっ!


「そう。あと五年十年もしたら……」


「?」


三俣()は間違いなく世界一の生物化学者になる。ノーベル賞を受賞するほどの…… そうなってから後悔しても遅いんだよ」


「そうだね。きっとそうなる。そして、僕はきっと何度も後悔するんだろうな」


「バーカ。そういうところが(ずる)いんだよっ!」

 三俣(みつまた)は最後にそう言うと走り去っていった。


 ……


 呆然として立ちすくむ僕のところにゆっくりと紗季未(さきみ)が歩いてきて言った。

「こうちゃん、ありがとう」


 紗季未(さきみ)の方を振り向いた僕の耳に大きな音が響いて来た。


 ブオオオオオオオーッ オオオオオオーッ


 正午の……サイレンだ……


 ◇◇◇


 僕と紗季未(さきみ)は顔を見合わせてから、ゆっくりと蜂野先生の方を見た。


「グオオオオオオーッ ピッ」

 相も変わらず一升瓶抱いて爆睡状態。うーむ。

 

 紗季未(さきみ)はその場で蜂野先生に声をかける。

「先生ーっ、蜂野先生ーっ、起きて下さい。正午ですよ。『分封(ぶんぽう)』の時間ですよー」


「グオオオオオオーッ ピッ」

 一向に起きないぞ。


 紗季未(さきみ)は小走りに蜂野先生のところに駆け寄り、もう一度声をかける。

「先生ーっ、蜂野先生ーっ、起きて下さいー」


「グオオオオオオーッ ピッ」

 うっ、うーむ。


 紗季未(さきみ)はついに蜂野先生の耳たぶを引っ張り、耳に向かって直接言う。

「先生ーっ、起きてーっ」


「グオオオオオオーッ ピッ」

 さすがに「分封(ぶんぽう)」についていくつもりだった連中は青ざめてきた。


 仮にも十万字を大きく超えた作品のクライマックスを酔っ払って寝過ごすメインヒロインって他にいるんだろうか?


 ◇◇◇


「そうですか。それなら私にも考えがありますとも」

 不敵に笑う紗季未(さきみ)。何だか怖いぞ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 寝過ごし( ´∀` ) 蜂野センセらしいやッ
[良い点] まさかの寝過ごし!? めっちゃらしい展開ですけどw
[一言] 寝坊で、分封ががが……。 笑える事案ですけど、ついていく方は堪りませんね (;^_^A
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ