12 女王蜂様 定時になったら全員帰す
「うる星やつら」の主人公は「ラム」ではなく、「諸星あたる」です。
「ゆるゆり」の主人公は「歳納京子」ではなく、「アッカリ~ン」です。
そして、
「異世界から女王蜂様は働き方改革を断行します」の主人公は……
「蜂野めきみ」ではなく、「新川恒太朗」です。
では、よろしくお願いします。
うーん。おかしい。何かがおかしい。
そりゃあ、僕だってもてる方じゃない。
女の子から告白されたこともなければ、ラブレターも、もらったことありません。
女の子とも普通に話すけど……ゲームの話ばっかだけど……
あ、この娘、僕に好意もってくれてるな……なんてことはなくっ!
そうなんだっ! そういうことはないんだっ!
なのに……
何で湯千葉先輩と洋津辺先輩がああまで公然と女の子から好意を示されている訳?
よりによって、隠し撮りサービスとかやってたあの両先輩がっ!
僕より、もてないはずの両先輩がっ!
おかしいっ! おかしいっ! おかしいよおぉぉぉ~(心の絶叫)
ぜえぜえぜえ
深呼吸を終えた僕が顔を上げて見ると、そこにはいつの間にか5人に増えた「辛」の一人と斬汰側先輩が仲良さそうに話している。
あれ、斬汰側先輩が話している相手って、3年の結構女子から人気があった桐場先輩が「辛」のリーダー能乃君に変身したものなの?
あの痛いキャリオタぶりを全校生徒の前でカミングアウトした斬汰側先輩が?
更なる焦燥感に苛まれる僕の眼に映ったのはもっと衝撃的な光景だった。
え?
あれ?
あの巨漢というかデ◯と言われた泣元先輩が親しそうに話しているのはっ
3年生の中でも圧倒的に女子力高いと言われた他貝先輩じゃないか!
しっかり「のぼり坂くだり坂ま坂46」の衣装になってるし、くそお、泣元先輩初めから狙ってやがったな。
もう、僕の頭の中、ぐーるぐるのぐーぐるです。
ええいっ、この先どうしてくれよう。
何かこの怒りをぶつける先は……
何か何か、ないのかっ!
………………
………………
………………
「こうちゃん、こうちゃん」
◇◇◇
「ん?」
「もう、5時だよ。さっきから蜂野先生が『定時だよっ! ほらっ、とっとと帰ってっ!』と言ってまわってるよ」
「え? 5時? そう言えば、夕方になったんだっけ」
「帰ろう。せっかく蜂野先生が帰ってって言ってくれるんだし……」
「そうだね……」
紗季未に言われて、一気に頭に昇った血が落ちた僕だった。
◇◇◇
「ねえ。こうちゃんは何に変身すると思う?」
「へ? 僕が変身?」
「え? 見てなかったの?蜂野先生がみんなに帰れと言う前に、この町全体に魔法をかけると言って、蜂の針を大きく丸く振ったじゃない」
そんなことあったの?頭に血が昇って、全然、見てなかったよ。
「町全体に満遍なく魔法をかけたから、人によって早く効果が出る人とそうでない人が出るんだって」
「ふーん。僕は何になるんだろうなあ」