117 女王蜂様 ご先代様 またもナレーターになる
「♪~ 『BUNPOU』って、大事なことだから、気になる男の子に聞いたのよん」
ゴーゴー
「♪~ そしたら『〇田胃酸』とか『英語のグラマー』とか」
ギャハハハハ
そんな若き日の僕の過ちを今になって蒸し返さなくても 三日前だけど
「♪~ 眼鏡っ娘ちゃんは知ってたわん。新しい女王蜂が出来た時、前の女王蜂が新しい巣作りのため、巣立つことだって」
ゴーゴー
「♪~ もうその時が来てるのよん。『オオスズメバチ』のせいで延びてたけれど、明日、あたしは巣立つのよん」
エーッ?
たちまちざわつく観客。かけ声どころじゃなくなったよ。だけど、蜂野先生はお構いなしに歌を続ける。
「♪~ あたしについて巣立つのか、北原さんと一緒に蜂幡市に残るのか。やりたい方を選ぶのよん」
ざわざわざわざわ
「♪~ 巣立ちは明日の正午よん。集合場所はこの学校の校庭よん。みんな、それまでに決めるのよん」
じゃん!
音楽が終わっても、みんなのざわめきは止まらない。それはそうだよね。話があまりに急だよ。
「先生!」
ざわめきが止まらない中、三俣が手を挙げた。
◇◇◇
「あら、何かしらん。眼鏡っ娘ちゃん」
「眼鏡っ娘じゃなくて、化学者のマリ・キウリ……いや、それよりですね」
「ふむふむ」
「『分封』するのはいいですが、行先を教えてもらえませんか?」
「あらま、やる気満々ねえ。眼鏡っ娘ちゃん。まあ、普通、『分封』なんて出たとこ勝負なとこあるけど、あたしは『働き方改革』の女王蜂様だから、決めてあるのよん。特別サービスで教えたげるわん」
ゴクリ
みんなの唾を飲みこむ音がする。
「あ、せーのっ、どんっ!」
何だか懐かしい感じのかけ声と共に蜂野先生、蜂の針を一振り。
◇◇◇
舞台の中空に大きなディスプレイが現れ、そこに映っていったのは……
「中鳥島」
海の真ん中に浮かぶ島。見たところ原生林のままで未開拓みたいだ。
「中鳥島って、どこだ?」
「ぱっと見、周りに何もない島だけど……」
「蜂幡市と違って全然開かれてないみたい……」
みんなの声をよそに、ここでいきなり流れ出すBGM。
カミーユ・サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭」の中から「白鳥」
♪ちゃ~ら~ ら~ら~ ら~ら~ら~ らら~
って、このパターン、前にもありましたよね。
「中鳥島。中部太平洋に浮かぶ絶海の孤島」
今回もまた蜂野先生のナレーションですね。好きですね。このパターン。
「人の手が全く入っていない未開拓の無人島。気候は温暖だが、どんな生き物がいるかは分からない」
キラン
三俣の眼鏡が光った。