115 女王蜂様 ご先代様 大トリで登場
紗季未が注文出して、疲労子さんが持って来てくれた食べ物と飲み物の他に、寿司握りバトルリーグ戦を開催していた四つの回転寿司店、スシタロー、蔵之介寿司、浜ちゃん寿司、KP寿司が蜂幡市を守ってくれたお礼だと言って、食べ物と飲み物をたくさん持って来た。
それに対しては、紗季未は丁寧に頭を下げた後にこう言った。
「お気持ちは大変ありがたいのですが、そういうのはやっぱり良くないと思うんです。お代はお支払いさせてください。蜂野先生がお支払いしますので。ええ、蜂野先生がお支払いします」
蜂野先生、紗季未に向かってダッシュ。
「北原さん、あなたね~」
紗季未は至って冷静。
「あら、先生。いいんですか? 回転寿司店さんは『ビール』も持って来てくださったのですよ。ええ、『ビール』もっ!」
「うっ、うぐっ」
「蜂野先生がお支払いがお嫌とおっしゃるなら、『ビール』はお返しするしかありませんね。『ビール』はっ!」
「わわわ、分かったわよん。その代わり『ビール』はあたしが全部もらうからねん」
蜂野先生、つかつかと山と積まれたビールケースに向かい、ビール瓶二本を取り出して、歯で栓を抜き、一本ずつ双方の手に持って、交互にラッパ飲みを始めた。
「ウィ~、ヒック。飲まなきゃやってられないわよ」
それだけやりたい放題やって、飲まなきゃやってられないはないでしょう。
それにしても、厳しい戦い乗り越えて、紗季未、たくましくなったね。こりゃ尻に敷かれそう。
◇◇◇
祝勝会は大賑わい。
そのうちに興の乗った三人の大暴れ大将軍がどこからか持ち出した的に三方向から矢を放ち、ど真ん中に三本とも命中させる技を披露。
これに触発されたか片葉兄弟に節藁野君がハチロクとRX-7が見事なドリフトを見せる。
プロ野球選手はストラックアウト、プロサッカー選手はキックターゲットを開始。
反対側では 「のぼり坂くだり坂ま坂46」「辛」「ジ・エンカーズ」がいつの間にか組み立てられた舞台の上でライブ。
「蜂幡プロレス」も急遽興行を始めちゃって、蜂幡市中の人が集まって来てる。
まるで学園祭。本当にみんな楽しそうだ。
ぐいっ
僕の袖が引かれる。
あっ、紗季未。
「こうちゃん。一緒にいろいろ見て回ろ」
なんつー笑顔を見せてくれるんだよ。蕩けそうだよ。
◇◇◇
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
既に陽はとっぷりと暮れた。
ドーンドドーン
M1エイブラムスが爆弾の代わりに夜空に花火を打ち上げている。
この花火。何を隠そうこの僕が錬金術で調合したものなのだ。
やっぱ平和利用はいいよね。
◇◇◇
「ふっ、ふああああ~」
頭をボリボリ搔きながら蜂野先生がこっちにやってくる。また、寝てたんですか?
蜂野先生は僕の問いに答えず、紗季未の方に歩み寄る。
「どう? みんな、楽しんでたのん?」
「はい」
紗季未は神妙に答える。
「北原さんは楽しかったのん?」
「はい」
やはり、紗季未は神妙だ。何か緊張感が漂う。
「でもまあ、そろそろ、大トリであたしが出るとするかねん」
「そうですね。もう蜂野先生に出てもらわないとですね」
どことなく紗季未は寂しそうだ。何かが起こるのか?




