114 女王蜂様 新旧対決
個々の戦闘力は「オオスズメバチ」の方が上だが、数はこっちが圧倒している。
中でもプロ野球選手の参戦は大きかった。魔法力を付加したバットのフルスイングに「オオスズメバチ」たちはたまらず上空に逃げる。
そこを野球ボール化した爆薬をバットで打ってぶつける。
プロサッカー選手はサッカーボール化した爆薬を「オオスズメバチ」に蹴ってぶつける。
ダメージを受け、次々と撃墜される「オオスズメバチ」。
それでも果敢に立ち向かっていたが、とうとう残り三匹になった時点で退却を始めた。
「逃さぬっ!」
「逃さぬっ!」
「逃さぬっ!」
三人の大暴れ大将軍は「魔法の矢」をつがえ、三匹の「オオスズメバチ」に向かって、放つ。
ひゃおう
ひゃおう
ひゃおう
どすっ
どすっ
どすっ
ひゅううう
ひゅううう
ひゅううう
どさっ
どさっ
どさっ
確認するまでもない。全て命中! 三匹の「オオスズメバチ」は、垂直に落下。地面に落ちた。
◇◇◇
「ほうら、もうっ! 何やってんのっ! 鮮度が落ちる前に運ぶっ! 運ぶっ!」
さっきまでダラえもんに扇がせていたはずの蜂野先生がいきなり登場。
「はい。運んだ『オオスズメバチ』は焼酎のタンクにどんどん放り込む。テキパキとねん」
へっ? 僕たちはあっけに取られたが、プロ野球選手とプロサッカー選手は体育会系なのか蜂野先生を本気で尊敬してるのか、「はいっ」の声と共に作業を始めた。
「ああっ、もうっ、こんなバラバラにしちゃってえっ! この『オオスズメバチ』はもう使い物にならないわねん」
えっ、えーと。
「『オオスズメバチ』はチョロインだから、もっと綺麗に退治してほしかったわん」
いっ、いえ、かなりな苦戦だったんですが……
◇◇◇
僕に紗季未、三俣に飛得先輩はかなりの時間、呆然として、蜂野先生の行動をながめていた。
一番最初に我に返ったのは三俣だった。
「えっ、えーと。勝ったんだよね。私たち?」
僕も我に返り、紗季未を見つめた。
紗季未は腕組をして、目を閉じ、しばらく下を向いていたけど、やがて、顔を上げた。
「うん。大丈夫っ! これ以上、『オオスズメバチ』の襲撃はないっ! 私たち勝ったんだよっ!」
「やったーっ!」
飛得先輩の叫び声が上がった。
そして、僕たち四人は声を合わせて叫び声を上げた。
「勝ったーっ! 『オオスズメバチ』に勝ったんだっ! 蜂幡市は守られたんだっ!」
僕たちの声に呼応して、次々と叫び声が上がる。
「『オオスズメバチ』を倒したぞーっ!」
「蜂幡市はこれからもやりたいことが出来る町なんだっ!」
「バンザーイッ! バンザーイッ! バンザーイッ!」
◇◇◇
満面の笑みの紗季未はこう言い募った。
「これから蜂野先生のおごりで祝勝会ね。疲労子さん、食べ物と飲み物ありったけ持って来てっ! え? もうお酒はない? 蜂野先生はもう充分飲んだからお酒はいらなーい。ソフトドリンクだけありったけお願いしますっ!」
その言葉に対し、のこのこやって来た蜂野先生。
「北原さん、しばらく見ないうちに随分言ってくれるようになったじゃないのん」
にやりと笑って返す紗季未。
「いえいえ。蜂野先生に言われて来たことと比べれば、お返しにもなってないですよ」
怖いよ。この二人の女王蜂様。