111 女王蜂様 ご先代様場外乱闘(但し、オオスズメバチには関係ありません)
M1エイブラムスと三人の大暴れ大将軍が確実に「オオスズメバチ」が数を削ってくれてるけど、三十匹は多い。
地上では激しい攻防が行われているが、拮抗。もしくは押され気味かもしれない。
でも、僕も紗季未も心配はしていない。何故なら……
ゴゴゴゴゴゴ
ほら、その理由が来た!
◇◇◇
「うおおおおーっ! 待たせたぜいっ!」
「蜂幡酒造」のドラゴン社長だっ!
空飛ぶ、その背中の上には「蜂幡プロレス」の面々。これは心強い。
「うおりゃあっ! ゴオオオオオッ!」
炸裂するドラゴンブレス!
おおっ、オオスズメバチが一匹墜落したぞ。「ドラゴンコンクエスト」パーティーの魔法使いの田中さんの魔法攻撃がダメージが累積していた奴だ。
他に墜落するオオスズメバチはいない。さすがに装甲が硬いようだ。
だけど、更に「蜂幡プロレス」の面々がいるのだっ!
先陣を切ったのはタイガー。フライングクロスチョップでオオスズメバチごと地面に落ちる。そこからのムーンサルトダブルニードロップ、そして、ジャーマンスープレックスッ!
鶴も負けていない。ミサイルキックをかまして、オオスズメバチを地面に叩き落とし、パワーボムからバックドロップッ!
「ちょっとちょっと」
三俣が僕を肘でつつく。
「なっ、何かな?」
「夢中になって見てる場合じゃないでしょ。私たちは追加の『傷薬』や『疲労回復薬』とか作んないと」
「あ、そうだった。すまんすまん。つい、プロレス見ると血が騒ぐ」
「あ、見て見てっ! 新川君っ! 馬の32文ロケット砲が出たよっ! こっちではペリカンが延髄切りしてるっ!」
「えっ? どこですかっ? 飛得先輩っ! 延髄切り見たいっ!」
「もうっ、二人ともーっ!」
「すまん。三俣。プロレスは男のロマンなのだ。そうですよね。飛得先輩」
「そうなんだ。真理。プロレスは男のロマ……」
ドカッ
三俣が手に持ったお盆が飛得先輩の脳天を襲った。
「今は存亡をかけた一戦の最中です。真面目にやるように」
「分かりました」と頭を下げる僕と飛得先輩。しかし、その背後から凄まじい声が聞こえてきたっ!
「オラオラッ、仕事しろっ! 本気でやれっ! 遊びじゃないんだっ! オラーッ!」
野次の発生源はもちろんパイプ椅子に座り、焼酎をかっ喰らっている蜂野先生だっ!
「そこの客っ! うるせえぞっ!」
戦闘から抜け出し、蜂野先生のところにやって来たのは、「蜂幡プロレス」社長、シベリアの狂虎ことサーベルタイガージェットシン。
既にサーベルタイガーなのにもかかわらず、更にサーベルを咥えている念の入りよう。
「うるせーっ、客を舐めるなっ! この野郎っ! 金返せっ!」
先生、キャラが変わってますよ。
そんな先生にサーベルタイガージェットシンは咥えていたサーベルの柄を向けてくる。うわおっ!
それに対して、蜂野先生。おもむろに座っていたパイプ椅子を持ち上げて応戦!
おおうっ、これこそが「昭和のプロレス」で時折見られたという、悪役レスラーと酔客のマジモンの場外乱闘!
まさか、ナマで見られるとは、感激だー!
バッシャアアアア
そんな二人の頭上に頭から水がかけられた。
ふと見ると凄い顔して怒っている紗季未が蜂の針を振り下ろしている。
「二人ともいい加減にしてくださいっ! この存亡をかけた一戦の最中に何『プロレスごっこ』やってるんですかっ!」
「すっ、すいやせん。女王蜂様」
青菜に塩のサーベルタイガージェットシン社長。
「べーだ。北原さんの真面目ぶりっ子」
全然めげない蜂野先生。




