102 女王蜂様 ご先代様は酔っぱらい
紗季未、何か思いついたの?
「うん。どうも魔法がかったものが『オオスズメバチ』には有効そう。だから……」
「だから?」
「こうちゃんが『錬金術』で作った『爆薬』が使えるんじゃ?」
「どうだろう? でも、こんな状況じゃ試せるものなら試したいね」
それじゃあ、持ってこようと思ってたら……
「はい」
「爆薬」を笑顔で両手で抱える三俣。
「こんなこともあろうかと『爆薬』も持って来ておいたんだ」
気が回る! やはり、いざとなると女性陣の方がしっかりと……
「うい~っ、ひっく」
分かりましたから、蜂野先生。それ以上は何も言わなくていいです。
◇◇◇
「で、どうかなあ。その『爆薬』発射出来そうですか? 石積さん」
紗季未の問いに、M1エイブラムス車長の石積さんは緊張した面持ちで答える。
「もともとこの砲に合わせて作られてる訳じゃないから、無理はある。でもね……」
「でも?」
「やってみるよ。その価値はあると思うし」
「ごめんなさい。無理言って」
「そうじゃないよ。北原さん、いや、新しい女王蜂様」
石積さんは笑顔を見せる。
「私、ワクワクしてるんだ。『レディー&タンク』のキャラに変身できただけでも嬉しかったけど、大好きなM1戦車で強い敵と戦えるんだよ。これでワクワクしなくてどうするの。他の四人もそう思ってるよ」
紗季未も笑顔になる。
「うん。お願いするね」
石積さんは紗季未に向かって、一礼すると指令を下した。
「Fire!」と
撃ち出された爆薬は一直線に「オオスズメバチ」に向かい、轟音と共に直撃した。
舞う粉塵。
そして、それが晴れた時、「オオスズメバチ」のふらつきは更に大きくなっていた。
やった! 効いてるんだ!
◇◇◇
「石積さんっ、続けて撃てる?」
見ている者たちの大歓声の中、紗季未の声はよく通った。
「通常のものと違うから、次発装填にはちょっと時間がかかる。でも、頑張るよ」
石積さんは紗季未に向けて、サムズアップ。
「新川殿」
「新川殿」
「新川殿」
うわっ、びっくりした。気が付けば三人の大暴れ大将軍が僕の前に立っているし
「あの『オオスズメバチ』めには魔法がかかった武器なら効くのですな」
「あの『オオスズメバチ』めには魔法がかかった武器なら効くのですな」
「あの『オオスズメバチ』めには魔法がかかった武器なら効くのですな」
「どうやらそのようですね」
「すまぬが、わしのこの『矢』に魔法をかけることはできないだろうか?」
「すまぬが、わしのこの『矢』に魔法をかけることはできないだろうか?」
「すまぬが、わしのこの『矢』に魔法をかけることはできないだろうか?」
もともとある「矢」に魔法をかける? そんなことができるわけが……
あっ、僕の脳裏に電気が走った。
「魔法の矢」。普通の矢と違い、自力で標的に飛んでいく矢!
素材は? 怪しげなキノコの粉! 湧き出る清水の水! 樹液! そして、矢!
できるっ!
「できますっ!」
そう言って僕は顔を上げた。
「だけど、お一人につき一本。三本分しか素材がありませんが……」
「上等! 一本あれば十分!」
「上等! 一本あれば十分!」
「上等! 一本あれば十分!」
よっしゃあっ! 調合時間は? 三十分! それまで石積さんたちの戦車が時間を稼いでくれれば……
「私たちが手伝えば?」
僕の肩をたたく三俣。その脇に笑顔の飛得先輩。
ならばっ! 二十分っ!
「OK! やりましょう。石積先輩。時間稼ぎお願いしますっ!」
「ふん」
石積さんは鼻を鳴らした。
「呑気にやってると、先に私たちが『オオスズメバチ』倒しちゃうよ」
「そうなったら、そうなったで、OK!」
三俣もサムズアップ。
ようしやるぞ。最初の工程は怪しげなキノコを乳鉢で擦って粉にするんだ。
ゴリゴリゴリゴリ
「んっんっんっ ぷっはー」
ゴリゴリゴリゴリ
「んっんっんっ ぷっはー」
ゴリゴリゴリゴリ
「んっんっんっ ぷっはー」
後ろの蜂野先生が「焼酎」の四リットルのペットボトルをラッパ飲みする音はただのBGM。
気にしない。気にしない。無心無心。色即是空空即是色。
あーっ、もうっ、気になるッ!




