100 女王蜂様 ご先代様は小皿に集めたビールをすする
引き上げて来た猿渡君が地上に降りて来た。
「こうちゃん。真理ちゃん。『錬金術』と『『化学』で作った『傷薬』と『疲労回復薬』があるでしょう。それを猿渡君に使って」
紗季未の指示に、僕は腰を上げ、生物化学室に「傷薬」と「疲労回復薬」を取りに行こうとすると、三俣に制された。
「新川君は紗季未ちゃんのそばにいてあげて。気を張ってるみたいだけど、本当のところは、不安なんだよ」
え? そうなのと言う間もなく、
「『傷薬』と『疲労回復薬』は私と飛得が取ってきて、猿渡君の治療もするから、まかせてっ!」
三俣はそう言うと、右目をウィンク。はあ、いざとなると女性陣の方が度胸が据わって、しっかりしてくるのかなあ。
と思った僕の目に入って来たのは、瓶の底に残ったビールを小皿に集め、それをすする蜂野先生。
前言撤回。性別ではなく、その人によるのね。
◇◇◇
ひゅっ
ひゅっ
ひゅっ
おおっ、そうこうしているうちに三人の大暴れ大将軍が矢を放った。
一直線に「オオスズメバチ」に向かっていく。さすがの腕前。見事命中するかっ?
カツーン
カツーン
カツーン
「装甲が固いみたいね」
猿渡君を手当しながら三俣が言う。
そう、命中はしたが、全部弾き返されてしまった。「オオスズメバチ」は微動だにしない。
「今度は胸部と胴体のつなぎ目を狙って見よう」
「今度は胸部と胴体のつなぎ目を狙って見よう」
「今度は胸部と胴体のつなぎ目を狙って見よう」
さすがは大暴れ大将軍たち。即座に次の手を打って来た。
♪ちゃらら~ ちゃらら らっちゃら
うわ、またBGMが流れた。そして、矢が放たれる。
矢は「オオスズメバチ」の胸部と胴体のつなぎ目を狙って一直線。しかし……
カツーン
カツーン
カツーン
軽くその身を動かした「オオスズメバチ」の胴体に当たり、はじき返された。うーむ。
◇◇◇
「敵の装甲が固いとなれば、こちらの出番ですねー」
これはM1エイブラムス車長展望塔にいる車長の石積さん。
そうだよねー。こっちには世界最強とも言われる戦車まであったんだわ。
「44口径120mm滑腔砲でAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)撃ちますっ!」
「お願いします」
えーと。紗季未は何の躊躇もなく許可したけど、それって50cmから1mの厚さの鋼鉄の装甲ぶち抜くやつだよ。逆の意味で大丈夫なのかー?
♪ちゃっちゃっちゃっ ちゃちゃちゃー ちゃちゃちゃ ちゃーちゃちゃ ちゃっちゃちゃちゃ
すかさず「レディース&タンク」のBGMを流す。蜂野先生。
登場キャラごとにBGM流すって、「◯ーパー〇ボット大戦」ですかっ?
「Fire!」
石積さんの指令一下、砲弾発射っ!
僕は両腕で頭を覆った。バラバラになった「オオスズメバチ」が頭上から降って来ると思ったんだ。