10 女王蜂様 ラブコメの始まりを目撃する
「で、男性アイドル部門のマネージメント担当もいるわよね~。斬汰側さん❤」
「はいっ!」
三年の斬汰側先輩いい返事。
「あ、ちょ、ちょいのちょいっと」
蜂野先生、蜂の針を一振り。
白い光に包まれて……、現れて出でたるは……
「せっ、先生。『キャリー斬汰側』。大感激であります。キャリーズのタレントのマネージメントがでっできるなんて……」
斬汰側先輩大号泣。
それを見て、「うんうん」と頷く蜂野先生。
「良かった。本当に良かった。キャリオタやめなくて……
「うんうん」
「小五の弟に『姉ちゃん。いい加減にしろよ。俺、学校で『やーい、おめえの姉ちゃん、キャリオタ』って言われて、馬鹿にされてんだぞ』と言われても、やめなくて良かった」
「うんうん」
「小三の妹に『お姉ちゃん。あたしもキャリーズのアイドルはかっこいいと思うよ。でもね、物事には限度というものがあると思うんだ』と言われても、やめなくて良かった」
「うんうん」
「よがったー。本当にキャリオタで、ほんどーに良かったー」
「うんうん」
良かったのか? 本当に良かったのか? いや、良かったんだよね。きっと。
◇◇◇
変わって、こっちサイドはやはり三年の湯千葉先輩と洋津辺先輩。
元(なのかな? 何しろ、変身させられちゃったから)映像部で、蜂野先生の特命を受け、動画部門を担当。
どこから取り出したのか、本格的そうな映像機材を持って、何やら相談。
その後ろでは、蜂野先生がにこにこしながら、見守っている。金儲けの気配がするのかな?
そこへやってきたのは、一年生の中でも、背が低く(多分、150cmないんじゃないかな?)、可愛らしいと評判の片貝ツインズ。
ついた二つ名は「子リスツインズ」。
「子リスツインズ」はおずおずと湯千葉・洋津辺両先輩に近づくと、決意を秘めたように、口を開いた。
「あの、湯千葉先輩。洋津辺先輩。わたしたちに映像の撮り方、教えてもらえませんか?」
「えっ? えっ? えっ?」
驚き、のけ反る両先輩。
うん。僕も驚いた。
「あの、前から……、映像撮影やってみたいと思ってたんです。でも、なんか、やったことないので怖くて……」
「そっ、そうだね。やっ、やったことない人には、こっ、怖いかもね」
やっと、言葉を絞り出す湯千葉先輩。
人のことは全く言えない僕だけど、先輩も女の子慣れしてませんね。
「でも、湯千葉先輩と洋津辺先輩、見てると、本当、楽しそうで、なんか輝いているというか……」
「!」