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吸血鬼さんのおもてなし ~ 旅と歴史とダンジョンと  作者: ミュスター観光騎士団
国際金融都市トゥーリ
76/103

76. 世界樹の丘

 現在、私たちの一挙手一投足は世界に配信されている。

 やりづらいこと、この上ない。


 エメットが検索したところ、Uzは日本のプロゲーミングチーム"DiToMeter"に所属するストリーマーらしい。

 YouTuneのチャンネル登録者数20万以上の大人気ストリーマーだという。


 Towitterでの彼女のツイートはほとんどが配信の告知で、時折、こんちゃんが撮影したランチの写真がアップされている。

 きっとランチは洒落たカフェご飯なのかと思ったら、スナック菓子の"じゃがりご"や"ボッキー"といったおよそランチとは言えないものがテーブルの上に並んでいた。


 何故、彼女が人気なのかは分かったような気がする。

 彼女はある種の敗北者、引きこもりゲーマーの代表選手なのだ。


「"今日の配信予定は?" 特に決めてません。観光ガイドさんに任せます」


 Uzがそう言うと、こんちゃんが私たちにカメラを向ける。

 任せてほしくない。


 こんちゃんがカメラに映らない位置で、尻尾を使ってスケッチブックに何か書いている。

 "観光名所に連れて行ってほしいのじゃ。"


 カメラにマイクにカンペと忙しいが、こんちゃんは笑みを崩していない。

 一方で映されている側のUzは猫らしく、かなり眠そうだった。


「それでは、まずはここからすぐ北にあるウェルテバウムの丘に行きましょう」


 鞄から取り出したミュスター観光騎士団の小旗を掲げて、私はUzとこんちゃんを先導した。


 表通りに戻って北にある坂道を登っていく。

 細い坂道でも人通りは多い。


 ウェルテバウムは世界樹のことで、つまり世界樹の丘だ。

 トゥーリ市民の憩いの場であり、そして観光スポットでもある。


 石壁の間にある階段を登ると、広々とした丘の上の至るところで世界樹が茂っている。

 少し東に歩いた場所には泉があり、昔、魔王と戦ったという聖女のブロンズ像が泉を見下ろしていた。


 人間の聖女は、はためく戦旗を掲げている。

 彼女の勇姿を背に、観光客たちは写真を撮っていく。


「"聖女って何したの?" 知りません。ちょっと聞いてみます。すいません、聖女って何したんですか?」


「魔王と戦ったんです。800年前ですかね。勇者が出てくる600年くらい前に魔王と戦い、そして敗れたそうです。その勇姿を称えて、この丘に像を建てたんです」


「へー。そんな昔なんですね。"負けた聖女とか間違いなく〇〇だろ。" とりあえず10分間ブロック。失せろ」


 Uzは適当に相槌を打って流していく。

 観光スポットにも暴言にも全く興味が無さそうだった。


 丘からは市内が一望できる。

 南にあるトゥーリ湖とそこに流れ込むリャマ河からの高さは30mほどで、7階建て相当の高さだ。


 リャマ河を挟んで南東にはグロース大聖堂。

 正面(ファサード)には特徴的な2本の尖塔が建ち並ぶ。


 ここは1000年近く前から建造され始め、100年近くかけて完成した。

 魔王カレル大帝を称えて、彼の石像が地下に収められている。


「丘の西には、2.5m四方の石のチェス盤が置いてあるんですよ」


「それって遊べるんですか?」


「チェストの中に駒もありますから。遊んでみますか?」


 ゲーマーらしく、こういう時だけ食いつきはいい。


「容姿端麗、頭脳明晰、オートチェスキングの実力、見せちゃおっかなー」


 Uzの自信満々の発言に、コメントの流れが加速する。

 オートチェスキングが如何ほどかは知らないが、1人チェスで鍛えた私の腕を見せる時が来たようだ。

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