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吸血鬼さんのおもてなし ~ 旅と歴史とダンジョンと  作者: ミュスター観光騎士団
ミュスターの旧領主館 高島邸
48/103

48. 彼氏?

 芳しい高山植物の香りとともに観光案内所に入ってきたのは、エルフの青年だった。

 穏やかで凛々しい顔立ちに、砂色の髪の毛、特徴的な稲穂耳、ベージュのトレンチコート。


「ここがミュスター観光……騎士団で、あってるよね」


「はい、そうです。ようこそ、ミュスターへ」


 私は少し緊張しながらもエルフの青年に応対した。

 リーズ様もエメットもいない以上、私が彼を案内しなければならない。


「リーズが言ってた吸血鬼って、君のこと?」


「え?」


「吸血鬼だよね」


「え、あ、はい」


 リーズ様のことを知っている。

 しかも、リーズ様から私のことを聞いている。


「最近、リーズにちょっかいを出してる奴がいるって聞いて、心配になってきたんだけどね」


 まさか。

 こいつは。


 リーズ様の彼氏?

 リーズ様はそんなこと今まで一度も言ってなかったのに。


 ここで消しておくべきか。

 いや、早まるな、私。


「リーズは留守か……。僕はアルヴィ。君は?」


「ルビーです」


「綺麗な名前だね。君の瞳と同じで」


 優男は私に顔を近づけて言った。

 仄かなシトラスの香り。恐らく高級ブランドの香水。


「ミュスターは久しぶりだけど、いつ来てもいい街だね。君もそう思わない?」


「え? えぇ。空気も綺麗ですし、静かでいい街です」


「だよね。リーズが気に入るのも分かるなぁ」


 私はアルヴィと名乗るエルフのペースに飲まれていた。

 リーズ様への馴れ馴れしい態度から察するに、かなり親しいか、一方的に恋心を抱いているか、どちらかに思える。


「最近、閉鎖されてた領主館が改装されたって聞いたんだけど、案内してくれる? 少し時間も潰したいし」


 他に観光客が来るような予定もない。

 ここは希望に応えるほうが良いだろう。


「分かりました。エメットさん! ちょっと外を回ってきますから、留守番していてください!」


「……はぁーい」


 バックヤードから間の抜けた声が返ってくる。

 本当に大丈夫なのか不安になったが、仕方ない。


 私はエメットを残して、アルヴィを私の館へ案内することにした。

 外に停めてあったアルヴィの車に乗り込み、館への道を指示する。


 鮮やかな紅葉を横目に、車は山道を上っていく。


「リーズは元気?」


 ヘアピンカーブを器用に曲がりがら、アルヴィが問う。


「あの……アルヴィさんはリーズ様とどのようなご関係で……?」


 私は現在の最大の疑問を口にした。


「"様"って、君のほうこそ気になるよ。どういう関係なのか詳しく教えてもらいたいね」


 奇妙な腹の探り合い。


「わ、私は、その……リーズ様とは……えっと……」


「着いたよ。お嬢様?」


 素早く車から降りると、アルヴィは助手席の扉を開いた。

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